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【セミナーレポート】中央葡萄酒 甲州比較試飲セミナーTHE CELLAR Roppongiの実店舗では当店スタッフはもとより、インポーターさんからお招きした講師陣や、ときには国内外の造り手さんから直接リアルなお話を聴ける多彩なセミナーを開催しております。 今回は、7/13(土)に開催いたしました、中央葡萄酒 甲州比較試飲セミナーをレポートいたします。 言わずと知れた、ヌマの番長、中央葡萄酒。 言わずと知れているために、意外と知らない中央葡萄酒。確かな知識を持たずとも、知っている気がしてしまうことこそ、まさにグレイスな威光の賜物なのかもしれませんが、レポートと名のつくものを認める以上、現状の破滅的な知識の上に胡坐をかくわけには参りますまい。襟を正して復習を。 「時は、大正12年」という枕詞をして、「関東が激震に見舞われた。」と続けたくなりますが、実は、中央葡萄酒創業の年でもあります。不屈の出鼻とでもいいましょうか、なんとも気迫にあふれています。三代目にあたる三澤一雄氏の代より、『Grace』ブランドが誕生。勝沼の原産地呼称ワインを始めてリリースしました。現在は四代目の三澤茂計氏の下、自社畑の開園、甲州葡萄の垣根栽培など、欧州の技術を取り入れ、技術的にも大きく発展を続けているワイナリーです。近年、国際評価も非常に高いようですが、受賞遍歴は眩しくて正視に堪えないので割愛。2007年からは、海外での経験が豊富な五代目 三澤彩奈女史もドメーヌに参画。いやはや、磐石の一言に尽きます。それ以上、何も言うまい。 さて、今回試飲いたしました5種類の甲州、ボトムレンジからフラッグシップまで、非常に明快なブランディングがなされています。静かな面持ちで口火を切った金子さんが、第一に強調されたのがこのポートフォリオでした。
山梨県の方々(甲州市、笛吹市、南アルプス市、韮崎市、山梨市等)から集めたブドウをブレンドしたワイン。グリド甲州がこれにあたります。全体の生産量の半分以上を占める、 巨大ボトムレンジです。
勝沼が由来のグレイス甲州、そこより北西、茅ヶ岳山麓に生まれるグレイス茅ヶ岳の2種類です。海外での評価も高く、日本を代表する甲州ワインになりつつあるスタンダードラインです。
古くから甲州の銘壌地として知られる、菱山地区、鳥居平地区から、畑を選別。標高の高い冷涼な地区で、厳選された葡萄から造られるワインは、それぞれの土地の味わいを持つ、表現豊かな2種。
自社畑「三澤農場」からの原料のみを用いて造られる、堂々たるフラッグシップ。ボトルの色、ラベル上の毛筆のタッチも他とはことなり、打栓されるコルクは、ひとつ1ユーロ。中央葡萄酒の寵愛を縦にする「自慢の我が子」のようです。詳細は後述。 いよいよ試飲のスタート。三角山を登るように、試飲が進みます。 グレイス グリド甲州 2016 山梨県産甲州 Alc.12%vol ボトムレンジは、薄紫の果皮に由来する味わいが、ふくよかさ、ゆったりとした口当たりを生んでいます。かすかに漂う甘さをしっかりとした酸味が引き締めて、非常に親しみやすい印象。合わせたのは野沢菜です。後味に浮かんでくるほろ苦さや塩味と、うまく調和して、これは新鮮なマリアージュ。懐の深さを改めて感じました。 グレイス 甲州 2016 山梨県勝沼町産甲州 Alc.11.7%vol バランス感覚に優れた一本。グリド甲州と比べると、洗練されたシャープな輪郭を感じるワインです。 グレイス 甲州 菱山畑 2016 山梨県勝沼町菱山地区産甲州 Alc.11.6%vol 650Mにも達する高標高で、急勾配。礫混じりの粘土質土壌に、畳ほどの背丈のある岩石が「でん」と胡坐をかく畑から作られるワイン。 明治の大洪水の折、巨大な岩石が、扇状地の上方にまで流されてきたのだそうです。 グレイス 甲州 菱山畑 2015 山梨県勝沼町菱山地区産甲州 Alc.11.6% The Cellar Roppongi が、うっかり所有していたバックヴィンテージ。 グレイス 甲州 鳥居平畑 2016 山梨県勝沼町鳥居平地区産甲州 Alc.11.4% 菱山から、3km程の距離、南西向きの斜面が鳥居平地区。土壌については、菱山に同じく、礫の混ざった粘土というテクスチャー構成ということですが、その礫が、なんと黒いスレート。曰く、吸熱、保熱に優れていて、鳥居平の畑の地表は暖かさを感じるのだとか。透き通るような酸味の存在感はありますが、フルーツの風味の中に、より温暖な地域のワインにあるような要素と、ふくらみを感じます。 スレートがもたらすものかどうかは存じませんが、菱山の葡萄に比べ、糖度が高いのだそうです。「香りの中にも、ポンカンやオレンジのようなニュアンスが現れます」と、金子さんは鋭いご指摘。ワタシも横で偉そうに、うんうんと点頭。ガリと合わせるというアクロバットも、ワインの魅力を引き立てます。隣接する二つの地区とはいっても、生育環境に由来する味わいの違いを明確に意識して造られているのでしょう。とっても興味深い飲み比べでした。 キュベ三澤 明野甲州 2016 山梨県明野町”三澤農場”産甲州 Alc.11.2% 中央葡萄酒が甲州ワインの頂点に掲げる、自社畑産の原料のみを用いたこだわりのワインです。 今回のテーマは甲州でしたが、自社農場のこととなると、脱線を惜しまない金子さん。「三澤農場」では、カベルネ・フランや、カベルネ・ソーヴィニオンといった、成熟の遅い葡萄が高いクオリティの収穫をもたらしている、とのこと。11月まで降雪などはなく、気候が穏やかな状態にとどまるため、葡萄がしっかりと成熟を迎えるまで、収穫を待つことができるのだそうです。 すっかりほろ酔いの我々にも、金子さんは手加減がありません。日本ワインは、国内のワイン消費量の4%にも満たない、という残酷な数字を突きつけます。日本人が消費するワインは、年平均約4本。精度が著しく低いワタシの手計算によると、その4本の中に日本ワインが1本でも入る確率は15%。85%の方は、日本ワインを1本も手に取らないことになります。なんだか身につまされる話です。 甲州の供給についても、前途洋洋とはいかないとのこと。醸造用途の葡萄の割合は、増加傾向にあるようですが、それは従来生食用として消費されていたものが、ワインの原料にシフトチェンジしただけ。甲州を離れる農家も多く、全体の生産量は右肩下がり。将来的には、醸造用葡萄の満足な供給にも暗雲が立ち込めます。固有品種での日本ワイン造りも、一筋縄ではいかないのですね。 そういった現況を含め、金子さんが血道をあげて取り組まれているマーケティングの重要性を、ひしひしと実感しました。 殊更に強調されていた、ロンドン市場での実績や、すでに輝かしいとも言える国内での評価など、着実にアピールをしていくことが、甲州ワインの存続に大きなウェイトを占めているのですね。いち販売員に過ぎぬワタシも、背筋が伸びる思いがします。 ワタシの矮小な海馬では為す術がなし、といった具合に、盛りだくさんだった本セミナー。お伝えできていないことも多く、不完全なレポートではありますが、甲州のことをつらつらと書いておりましたら、口がワインを飲ませろと駄々をこね始めたので、ここで筆をグラスに…。ご一読くださいました親切な方へ、感謝申し上げます。 酷暑の中、ご来店くださいました参加者の皆様、ご多忙の中、貴重なお時間を割いてくださいました金子さん、ありがとうございました。 今後もセミナー・イベント多数企画中です!
20種類以上の試飲アイテムをご用意しております。癒し系などと名付けてはいますが、よくよくラインナップを見てみると、なかなかシリアスな生産者が、まさに群雄割拠。ブルゴーニュワインの勉強にもなりそうです。当日、涙を呑んで、大崎店へ向かうワタシの代わりに、いかがでしょう?
晩夏の夜に、眉間にしわ寄せエルミタージュを啜るという、クールな催し。シャーヴの覇道を前に、最後までグラスを持ち続ける自信をお持ちの方、是非。人気のセミナーですので、お早めにどうぞ! 以降のイベントに関しましても、順次告知をしてまいりますので、お見逃しなく! |