2024.03.04

シャンベルタンとは?ブルゴーニュワインの王と呼ばれる理由やおすすめの料理も紹介

 

シャンベルタンとは、フランスのブルゴーニュ地方にある村の畑を指し、ブルゴーニュワインの王と称えられるほどの人気と歴史があります。 かのナポレオン・ボナパルトも愛したほど、偉大なワインとされていますが、何故そこまで特別視されるのでしょうか。 本記事ではシャンベルタンの基本知識やおすすめのワインなどを紹介させていただきます。

シャンベルタンとは?

シャンベルタンは、フランスのブルゴーニュ地方にあるコート・ド・ニュイ地区最大の面積を持つジュヴレ・シャンベルタン村の9つのある特級畑の代表格として知られています。
とりわけシャンベルタンで造られたワインは18世紀の英雄ナポレオンが愛しており、ロシア遠征にまで運ばせたという逸話も。ナポレオンの有名な言葉で「シャンベルタンを飲むこと以上に将来がバラ色に輝いて見えることはない」(Nothing makes the future looks so rosy as to contemplate it through a glass of Chambertin)というほど、シャンベルタンを飲めることが幸せだと物語っています。

シャンベルタンの生産環境

シャンベルタンはブルゴーニュのコート・ド・ニュイ地区北部ジュヴレ・シャンベルタン村にあるグラン・クリュ(特級畑)の1つです。その面積は約13.62ha、標高約275〜300mの日当たりの良い東向きの斜面に位置します。
土壌は粘土石灰質土壌で、グラン・クリュは茶色い土壌で表土は薄く、泥土や砂利質の堆積物となっていて水捌けが良いのが特徴です。

ジュヴレ・シャンベルタン村にはシャンベルタン以外にもグラン・クリュがあり、その数は全部で9つ!
◇シャンベルタン
◇シャベルタン・クロ・ド・ベーズ
◇リュショット・シャンベルタン
◇マジ・シャンベルタン
◇シャペル・シャンベルタン
◇シャルム・シャンベルタン
◇ラトリシエール・シャンベルタン
◇グリオット・シャンベルタン
◇マゾワイエール・シャンベルタン

同じグラン・クリュの中でも格の違いがあり、揺るがないトップに座しているのがシャンベルタンとクロ・ド・ベーズです。
シャンベルタンとクロ・ド・ベーズはグランクリュに囲まれるように守られており、最も年間の積算気温が高く、凝縮したブドウができるということがトップたる所以でしょうか。
また、軽やかなリュショット、力強いマジ、優しさのシャルム等々、各グラン・クリュのキャラクターには位置するテロワールに背景があることもブルゴーニュワインらしいと言えます。

シャンベルタンの味わい

気になるシャンベルタンワインの味わいですが、一般的には芳醇なワインで、力強さと品格を備えた複雑な要素を備えていると表現されます。村にあるほかのグラン・クリュ(特級畑)の持つ特性を複数併せ持つとも言われるのは別格の凄みを感じます。

畑の斜面上部の西側は森が広がっており、北にクロ・ド・ベーズ、南にラトリエールと囲まれているため、ジュヴレ村の北のラヴォー渓谷と隣村のモレ・サン・ドニの間にある渓谷からの冷たい風から守られた暖かいテロワールとなっています。
果実の凝縮感以外に酸化鉄やマンガンなどの鉱物を連想させる複雑な風味を持つため『ブラッディ』=血っぽいと表現されたりするのもシャンベルタンの特徴の一つです。シャンベルタン好きのナポレオンもシャンベルタンを口にして『血の味がする』と言った逸話があります。

造り手の個性が表れるシャンベルタンの醸造法

シャンベルタンは1つの畑ですが、その中を約20名が分割所有しており、シャンベルタンで造られるワインの醸造方法も造り手によって異なります。ちなみに最大の所有者はアルマン・ルソーで1/5を所有しています。

日本人醸造家の仲田晃司氏が仕込む「メゾン ルー・デュモン ジュヴレ・シャンベルタン」を例に醸造法を見ていきましょう。
・醗酵は天然酵母のみ
・新樽を40%、同1、2回使用の樽を60%で18ヵ月間熟成
・無清澄、ノンフィルターで瓶詰め

シャンベルタンという力強い味わいのイメージのために果実を潰した後に果皮との浸漬を長くし、抽出を強めにする生産者や反対に最高のテロワールだからこそしっかり抽出しなくても風味豊かなシャンベルタンを造りあげる生産者がいたりと実にスタイルがさまざま。近年はエレガント思考が強くなってきたということもあり、樽甘い風味がつく新樽の比率が少なくなったり、醸し時間も短くなっています。

シャンベルタンの歴史と名前の由来

シャンベルタンは元々ジュヴレ村と呼ばれており、13世紀にベルタンという農夫がブドウ樹を植えたことで、「ベルタンの畑」という意味のフランス語「シャン・ド・ベルタン」が訛ってシャンベルタンと呼ばれるようになりました。 その後、ナポレオンが愛したワインという逸話から名声は不動のものとなり、1848年にジュヴレ村の村長が村のワインの評判を高めるために村名にシャンベルタンの名前を付けたそうです。村に9つあるグラン・クリュにもシャンベルタンの名前を付けたのもそのタイミングでしたが、結果的に「〜シャンベルタン」というワインが沢山生まれてしまい、消費者の混乱を招きました。 しかしながら何もつかないシャンベルタンはその始祖のような存在であり、造り手からも他の畑に比べ、特別扱いをされるほど偉大なワインを造るポテンシャルを秘めています。 ブルゴーニュの初めての格付けは1855年にJules Lavalle博士が行い、Tete de Cuvée(最高峰)にはジュヴレ村からはシャンベルタンとクロ・ド・ベーズのみが選ばれました。

シャンベルタンが人気な理由

それでは何故シャンベルタンがここまで人気なのでしょうか。シャンベルタンがナポレオンに愛され、ブルゴーニュワインの王とも呼ばれるのはひとえにブドウの品質が優れているからです。
シャンベルタンの畑の特徴として、
・斜面にあり、石灰質土壌による水はけの良さで小粒で凝縮してブドウがなる
・日照条件が非常に良好で、長い時間を日光浴びることができるため、ポリフェノールの成熟が他より早く進み、香り高いワインができる
・力強い味わいのワインとして人気を集めているが、ただ強いだけではない『深み』がある

イギリスの高級ワイン取引プラットフォーム「Liv-ex」と同じくイギリスの飲料業界誌である「ドリンクス・ビジネス」が提携して、高級ワイン市場で最もパワフルだったブランドを選ぶ「2019 Power 100」において、シャンベルタンの代表格アルマン・ルソーがロマネ・コンティを持つDRCを抜き、初めてトップにたちました。このことからもシャンベルタンがいかに人気で、ワイン愛好家に愛されているかがわかるかと思います。

シャンベルタンに合う料理

シャンベルタンではピノ・ノワールを使用した赤ワインが造られています。ピノ・ノワールは酸味が高く、滑らかなタンニンを持つため、通常は酸味のある料理や軽めの料理などが好相性です。
例えば、
・生ハム
・ローストビーフ
・ジビエ
・マグロやカツオのカルパッチョ
などがおすすめです。

シャンベルタンに合わせたいフレンチの王道料理は二本足のジビエ、べキャス(ヤマシギ)や雷鳥など、野生のため赤身が強く、鉄分が豊富で力強い味わいのものが良いでしょう。
軽くて繊細な料理は本物のシャンベルタンがオーバーパワーしてしまう可能性があるが、その際はジュヴレ・シャンベルタンなど村名の軽やかなものを選択肢に入れるのも一つの手です。

和牛の上質で溶けるような脂身とシャンベルタンの力強くも繊細な味わいというのも試していただきたいペアリングです。柔らかい肉質はもちろん、寒鰤や本鮪の脂の乗った魚料理とも合わせられます。
ブリの藁焼き、大トロの炙り焼き、鰻の蒲焼、など意外にも幅広く合わせられると感じていただけたのではないでしょうか。

ジュヴレ・シャンベルタンとの違い

シャンベルタンや他のグラン・クリュは場所が決まった単一畑で造られたワインを示しています。
それに対して、ジュヴレ・シャンベルタンはジュヴレ・シャンベルタン村の畑をミックスして造られることが多いワインです。

格付けについて大まかに説明すると。ブドウにとって優れたテロワール(土地)を持つ畑はプルミエないしグラン・クリュになります。ジュヴレ・シャンベルタン(村名)とプルミエやグラン・クリュの大きな違いは傾斜地にあるか平地にあるかという点です。
日照条件や水捌けは傾斜地の方が良いためにブドウの出来に影響するため傾斜地に畑があるというのは重要な要素の一つなのです。
ただし、素晴らしい生産者のジュヴレ・シャンベルタン(村名)は時に並の生産者のプルミエ・クリュを凌駕することもあり、一概に畑の格付けがすべてではありません。

THE CELLARのおすすめのシャンベルタンワイン3選

ジュヴレ・シャンベルタン(村名)、グラン・クリュいくつかおすすめをご紹介します。

ブシャール・ペール・エ・フィス ジュヴレ・シャンベルタン 2019(ハーフ)

ブシャールはブルゴーニュ地方の大規模生産者の1人。多くのブドウを購入することでどの年でも安定した美味しさが楽しめるというメリットがあります。
ブラックチェリーを思わせる果実味と美しい酸味を生かした、豊かで複雑味のある味わいかつ、湿った土や鉄分などジュヴレ・シャンベルタン村の特徴が表現されています。
ハーフボトルのため手ごろな価格となっており、シャンベルタンのワインを試してみたい方におすすめです。

クロード・デュガ ジュヴレ・シャンベルタン 2021

クロード・デュガの造るワインは非常に凝縮感があり、香り高いワインであることが特徴です。所有する畑も3haと小さく、言わば”少量逸品主義”的な生産者とも言えます。
凝縮された果実味と綺麗な酸がバランス良く混ざり合い、まろやかな口当たりと味わいが楽しめます。
村名クラスではありますが、プルミエに匹敵するほどの完成度で、本格的な赤ワインやシャンベルタンのワインを楽しみたい時におすすめです。

ジェラール・ペラゾー シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ 2019

ジェラール・ペラゾーはクロ・ド・ベーズを0.19ha所有。樹齢80年越えという超高樹齢のブドウ樹が植わっています。
さすがグラン・クリュと言うべきか、全てのポテンシャルが高く、力強さと優雅さを兼ね備えています。ここぞと言うときのお祝いごとやイベントなど、特別な時に取っておきたい1本です。もちろん長期熟成に耐えうるポテンシャルもあります。

まとめ

シャンベルタンはブルゴーニュのジュヴレ・シャンベルタン村にあるグラン・クリュ(特級畑)の1つでブルゴーニュワインの王様と呼ばれており、力強く、深みのある味わいが特徴です。
そのジュヴレ・シャンベルタン村には9つのグラン・クリュがあり、どれも個性がはっきりとした素晴らしいワインを造っています。様々なシャンベルタンワインぜひTHE CELLAR online storeで探されてみてください。

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この記事を書いた人

井黒 卓

井黒 卓

・2020年 第9回全日本最優秀ソムリエコンクール優勝
・ロオジエ ビバレッジ・ディレクター兼シェフソムリエ
・一般社団法人 日本ソムリエ協会 理事
・総合ワインコンサル TACTICAL WINE CONSULTANT代表