2024.03.04

自然派ワインの基礎知識を解説!おいしく飲むポイントやおすすめワイン3選も紹介

 

近年の健康ブームや環境への関心の高さも相まってか、自然派ワインについて見聞きすることが増えました。また、自然派ワインを提供するレストランやショップも増え、実際に試す機会も増えています。これまでのワインにはないキャッチ―なエチケットも多く、気になる存在。でも、どう選んでいいのか分からないと悩まれる方も多いかと思います。
本記事では、自然派ワインについての基礎知識をお伝えした上で、おすすめワインを3つ解説しますので、ぜひご参考になさって下さい。

自然派ワインの基礎知識

「自然派ワイン」は、フランス語では「Vin Nature(ヴァン・ナチュール)」、英語では「Natural Wine(ナチュラル・ワイン)」と言います。「ナチュール」と短く言うこともありますね。どれも同じものを指しますが、明確な定義は存在せず、色んなタイプの商品があります。ちょっとややこしいですよね…。

はっきりとした定義はないものの、目安となる考え方は存在します。もともと、人為的にコントロールすることで大量生産を可能にしてきた近代ワイン産業に対するアンチテーゼ的な存在として生まれたので、自然派ワインは、人的介入を極力避けるという考えが根っこにあります。つまり、可能な限り自然な農法でブドウを栽培し、醸造の過程においても「必要なもの」を加えたり、「不要なもの」を取り除いたりすることを極力行わず、自然の力を活かしてワインを造ることを目指しています。

規定化に向けた動きも見え始めています。2019年にフランスのINAO(国立原産地呼称委員会)が「Vin Méthode Nature(ヴァン・メトド・ナチュール)」という規定の運用を始めました。この認証を受けるためには、オーガニックかビオディナミの認証を受けたブドウを手摘み収穫し、天然酵母で発酵させ、無添加で仕上げること(亜硫酸は一定量添加可)が要件として挙げられています。今後、各国で規定化に向けた動きが加速する可能性もあるので、要チェックですね。

自然派ワインの製法

もう少し詳しく自然派ワインの製造方法について見ていきましょう。

まず、ブドウ栽培。具体的には、リュット・レゾネ(減農薬)、オーガニック(有機)、ビオディナミといった農法があります。いずれも自然に近い状態で栽培する農法ですが、リュット・レゾネ→オーガニック→ビオディナミと徐々に厳格になっていきます。認証の有無は問われません。認証取得には時間や金銭面でコストがかかりますので、敢えて取得しない生産者も多くいます。「認証がない≠自然農法ではない」ということは覚えておくといいと思います。
・ リュット・レゾネ:基本的には農薬や化学肥料などは使いませんが、必要に迫られた場合には極少量のみ使用します。ただし、認証機関がなく、農薬や化学肥料の使用量に関する明確な定義もないので、どこまで厳密に行うかは生産者次第という側面もあります。
・ オーガニック:硫黄や銅を原料にしたボルドー液の使用は認めらえていますが、農薬、化学肥料、除草剤の使用は一切認められていません。
・ ビオディナミ:ドイツの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した農法。オーガニック農法をベースにした上で、地球上の動植物は宇宙の天体の動きに影響を受けるという考え方に基づき、剪定や肥料散布、収穫などのタイミングを決めたり、特定の材料で調合される肥料を使用したりします。

こうして栽培されたブドウは手摘みで収穫され、醸造の工程に移ります。醸造の過程においても、人的介入や化学薬品は極力避けられます。例えば、
 人為的に造られた培養酵母ではなく、ブドウや畑、醸造所に生息する天然酵母を用いる。
 酸、糖分、タンニン、色素、水といった要素を(極力)添加しない。
 逆に、アルコール度数が高くなり過ぎたとしても、アルコール分を(極力)除去しない。
 澱やワインの濁りなどを取り除く清澄や濾過は、最小限度もしくは全く行わない。
 酸化防止や殺菌効果がある亜硫酸は、極少量もしくは添加しない。
といったことが挙げられます。

自然派ワインの特徴

自然派ワインは環境に負荷をかけず、人的介入を極力避けて造られることから、天候の影響を受けやすく、ヴィンテージ毎に品質の差が大きいのも事実ですが、その分、一般的なワインよりもテロワールが大きく反映されるともいえますし、ブドウ本来の味わいをダイレクトに味わえる商品でもあります。

見た目、香り、味わいにも特徴があります。濁った見た目のものが多く、一般的なワインに比べると果実香は控えめで酵母の香りが強く、香りの輪郭がソフトな印象です。味わいは、酸味が強めで、土や肉っぽさ、野性味や旨味を感じつつ、口当たりは優しいかと。ただし、これはあくまでも一般論。自然派ワインの中には、フルーティーでクリアなものもあり、スタイルの幅が広いです。ぜひ、色々と試してみましょう。

また、亜硫酸無添加(もしくは極少)なので頭痛を感じにくいとも言われていますが、化学的には検証されていません。頭痛は、ヒスタミンやチラミンといった生体アミンという物質が原因物質なのですが、培養酵母よりも天然酵母で発酵した方が生体アミンが生成されやすい傾向にあり、更に、適度に亜硫酸を添加した方がこれらの物質の生成が減り、頭痛の原因物質が少なくなると言われており、結論が出ていません。もちろん、亜硫酸アレルギーがある方は、頭痛や吐き気、呼吸困難といった症状が出るので、注意が必要な物質です。尚、アルコール発酵の過程で亜硫酸は自然発生するので、添加が0であっても、亜硫酸0のワインは存在しません。
添加物が少ないとはいえ、自然派ワインもアルコール飲料。適度な水分補給と飲み過ぎに注意して楽しむということが大事ですね。

オーガニック・ワイン(有機ワイン)とは? 自然派ワインとの違い

自然派ワインに似た「オーガニック・ワイン(有機ワイン)」と呼ばれるものがあります。自然派ワインとの違いはいくつかありますが、専門の認証機関によって認定されていることは大きな違いでしょう。

日本に於ける認証機関は有機JAS。世界に目を向けると、EUのEuro Leaf、フランスのEcocertやAB認証、ドイツのDemeter、アメリカのUSDA Organicなど様々な団体があります。因みに、「ビオ」という言葉は注意が必要です。ヨーロッパやアメリカなどでは「ビオ」も「オーガニック」同様に認定の対象なのですが、日本では「ビオ」という言葉は認証不要なので、解釈に幅があります。

オーガニック・ワインの製法

自然派ワインは、認証の有無に関わらず自然な農法を用いて栽培されたブドウを用いていますが、オーガニック・ワインの場合は、有機栽培の認証を受けたブドウを用いる必要があります。

醸造の過程においては、可能な限り化学的なアプローチを排除しますが、培養酵母の使用など、一般的なワイン造りで用いられる成分や手法が認められていることが多いです。また、国や認証機関によってルールが異なります。例えば亜硫酸の添加を例にすると、EUの場合は一定の添加が認められる一方、アメリカは全く認められていません。もし添加する場合は、有機ブドウを使ったと表明できますが、オーガニック・ワインとは名乗れないのです。

では、オーガニック・ワインの方が自然派ワインよりもより「自然」なのか?というと、答えはYes and Noです。確かにルールが明確なので、特にブドウ栽培の面においては一部の自然派ワインよりも厳格なケースが想定されますが、醸造の過程では、一般的なワイン造りで用いられている手法や成分の使用が認められていることも多く、一部の自然派ワインの方が厳格とも言えます。

自然派ワインをおいしく楽しむための3つのポイント

自然派ワインは、酸化防止や殺菌の役割を果たす亜硫酸の添加が限定的で、ワインが無濾過・無清澄で造られていることも多いため、一般的なワインよりも不安定な状態であることは間違いなく、適切な管理を行っていないと酸化や劣化が起こりやすい商品でもあります。
美味しく楽しむためにいくつかポイントを頭に入れておきましょう。

購入後、数日は休ませる

特に無濾過・無清澄の場合、澱などが残っています。体に害はないのですが、口当たりや味わいが良くないので、購入後はすぐ飲まず、瓶を立てて保存し、澱や不純物が瓶底に沈むのを待ちましょう。

温度管理に気を付ける

一般的なワイン同様、12-15℃程度の冷暗所で保管しましょう。ワインセラーがあればよいですが、なければ新聞紙等で瓶を包んで野菜室で保管するのもアリです。特に夏場は暑くなるので、ワインの管理には心を配りたいところです。温度が高い状態で保存されていると、酸化が進んだり、特に無濾過・無清澄の場合は微生物が活性化し、瓶内で再発酵したり劣化が進んだりする可能性もあります。
尚、長期保存が可能な自然派ワインもありますが、多くは早飲みタイプですので、購入後1年を目途に飲み切ってしまう方が美味しく楽しめるかと思います。長期保存したい場合は、熟成可能なワインかどうかをお店に確認するようにしましょう。

ゆっくり注ぐ

最初の注意点にも書きましたが、無濾過・無清澄の自然派ワインには澱が付き物ですので、グラスにワインを注ぐ際も注意が必要です。瓶底に溜まった澱が再浮上しないよう、ゆっくりと注ぎましょう。最後の一滴まで…と思う気持ちはよ~く分かりますが、そこはぐっと我慢して、底の方のワインはそのままにしておきましょう。

おすすめの自然派ワイン3選

では最後に、おすすめの自然派ワイン3つをご紹介します!

エステザルグ オーガニック コート・デュ・ローヌ・ブラン 2022

1本目は、南ローヌにあるエステザルグ協同組合が造る白ワイン。オーガニック認証を受けたブドウを用い、自然酵母で発酵、亜硫酸無添加、ノンフィルターで仕上げられました。グルナッシュ・ブラン、クレレット、ブールブラン、ヴィオニエがブレンドされ、芳醇でコクを感じる仕上がりです。ブドウ本来の純粋な果実味を楽しめる白ワインです。

エステザルグ オーガニック コート・デュ・ローヌ・ルージュ 2022

2本目は1本目と同じ生産者の赤ワイン。こちらもオーガニック認証を受けたブドウを用い、自然酵母で発酵、亜硫酸無添加、ノンフィルターで仕上がっています。グルナッシュ、シラー、サンソーのブレンドで造られた赤ワインで、甘く凝縮した豊かな果実の風味とまろやかなタンニン、そして程よい酸味がバランスし、とても綺麗な仕上がりです。

マス・デル・ペリエ カオール レ・ゼスキュール 2021

3本目はフランス、南西地方の赤ワインです。ビオディナミで栽培されたマルベックという黒ブドウを用いて造られています。ブドウは手摘みで収穫され、自然酵母でゆっくり抽出するため30日間という長めの発酵期間。亜硫酸の添加は極力抑えられています。チェリーやカシスなどのフレッシュな赤黒系果実とスパイスのニュアンスもあり、滑らかな酸とタンニンとのバランスも◎、優しい口当たりのワインです。

まとめ

人為的なコントロールを極力避けるという考えがある自然派ワイン。化学肥料や化学薬品をできるだけ使わずにブドウ栽培・ワイン醸造を行うので、環境や健康に関心のある人を中心に人気が高まっています。また、ただ環境優しい、健康にいいというだけではありません。ブドウ本来の味わいを感じつつ、複雑味や旨味がある味わいにも注目が集まっていて、これまで飲んだことがない方にもぜひ試して頂きたいジャンルの一つです。

ぜひ、気軽にザ・セラーのサイトにアクセス下さい。自然派ワインを多数揃えています。また、店舗にも自然派ワインを揃えていますので、スタッフと会話しながら、お望みの一本を選んでみて下さい!

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この記事を書いた人

山本 暖子

山本 暖子

WSET認定 Level4 Diploma
JSA認定 ワインエキスパート
学生時代の留学や総合商社勤務時の海外駐在などを通じ、世界各国のワインやその文化に魅了される。
現在は瀬戸内海に浮かぶ大三島で農的暮らしを営みながら、カーヴ・ド・リラックスのECサイト運営やコラム執筆など、ワインに関する情報発信に力を注いでいる。