2024.03.04

パリスの審判とは?ワイン業界に激震が走った背景や、審査員から選ばれた逸品を紹介

 

ワイン業界における「パリスの審判」は、「フランスといえばワイン、ワインといえばフランス」というかつての概念を大きく変えた事件の一つです。本記事では、「パリスの審判」の意味や驚くべき結果、無名のカリフォルニアワインがフランスの歴史あるワインを抑えて1位に選ばれた理由についても解説していきます。また、「パリスの審判」で使われた通販で買えるワインも紹介していきます。

パリスの審判の元々の意味は「ギリシャ神話」

「パリスの審判」とは、もともとはトロイア戦争の発端とされるギリシャ神話の一挿話です。神話の内容はいわゆる「美人コンテスト」のようなもので、ギリシャ神話の都市「トロイ」の王子パリスが3人の女神の中から、最も美しい女性としてアプロディーテを選び、アプロディーテは選んでくれた見返りとして、パリスに「世界一の美女」ヘレナ王妃の愛を与えました。パリスがヘレナを連れ帰ったことで、ヘレナの夫でスパルタ(都市)の王であるメネラオスが激怒したため、トロイア戦争へと発展したと言われています。

ワイン業界における「パリスの審判」とは、1976年にフランスで行われたワイン品評会のことを指します。それまで無名だったカリフォルニアワインが、名だたるフランスワインを抑えて白ワイン・赤ワインの両部門で1位を獲得した大事件です。かつてのワインの歴史を大きく変えた事件と言われています。
参考:https://www.dragee.co.jp/winepark/paristasting/

「パリスの審判」と呼ばれるようになった理由

この事件がパリスの審判と呼ばれるようになったのには以下のような説があります。
・ギリシャ神話の登場人物パリスと、フランス・パリの発音が同じことが由来
・品評会を取材した記者が、記事のタイトルを「パリスの審判」にした
・「パリス王子の選択」と「フランス・パリでの選択」をかけたダジャレである
上記の説の中だと、米国『タイム』誌のジョージ・テイバーが『パリスの審判 Judgment of Paris』という記事をすぐさま発表したことに由来する説が有力なようです。

「パリスの審判」が行われた経緯

当時、ワインの品評会はアメリカ建国200周年の記念イベントとして行われました。提案したのは、パリでワインスクールを創設(後のアカデミー・デュ・ヴァン)したスティーブン・スパリュア氏です。目的は、自身のワイン学校の宣伝と、フランス人にカリフォルニアワインの魅力を知ってもらうためでした。当時は、「フランスといえばワイン、ワインといえばフランス」と言われるほど、フランスが絶対的なワイン大国の地位を築いていました。
品評会を提案したスパリュア氏はフランスが勝つのが当たり前だと思っており、まさかカリフォルニアが勝つとは思ってもいませんでした。

「パリスの審判」カリフォルニアワインVSフランスワイン

テイスティングは目隠しをして、ワインの情報がわからないようにしました。赤ワインはヴィンテージが若いこともあり、事前にデキャンタージュされています。
当初はカリフォルニアワインの試飲会という名目になっていましたが、アメリカ建国200周年の記念と、建国時のフランスの大きな功績を讃え、1976年5月24日、パリのインターコンチネンタルホテルで品評会が行われました。試飲会に使うワインリストの中に、フランスワインも混ぜてあることを告知しました。
当時は誰も異議を唱えませんでしたが、後日になって「フランスワインもリストに入っていると事前にいうべきではなかったのか」と不満を訴える審査員もいました。

審査員は全員フランス人

パリスの審判の審査員は全員フランス人で、シェフやソムリエなどワインに深い見識を持つワイン界を代表する9人です。

●オベール・ド・ヴィレーヌ
DRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)の共同経営者
●ピエール・タリ
ボルドーの2級格付けシャトー「ジスクール」オーナー。格付け委員会の会長
●クリスチャン・ヴァネケ
三ツ星レストラン「トゥール・ダルジャン」のシェフ・ソムリエ
●ジャン・クロード・ヴリナ
三ツ星レストラン「タイユヴァン」のオーナー
●オデット・カーン
ワイン専門誌『ラ・ルヴュー・ドゥ・ヴァン・ド・フランス』の編集者
●ピエール・ブレジュー
AOC委員会の首席審査官
●ミシェル・ドヴァーツ
アカデミー・デュ・ヴァン 講師
●クロード・デュボワ・ミヨ
グルメ誌『ゴー・ミヨ』の販売部長
●レイモン・オリヴィエ
三ツ星レストラン「グラン・ヴェフール」のオーナー・シェフ

ワイン一覧

品評会に出されたワインは、カリフォルニアワインとフランスワインを合わせて白ワイン10本、赤ワイン10本が選定されました。品評会自体はカリフォルニアワインの知名度アップが目的のため、カリフォルニアワインが多めに選ばれていました。当時選ばれていたワインは以下の通りです。

白ワイン(シャルドネ10本)
-フランス(4本)
●ムルソー・シャルム / ルーロ 1973年
●ボーヌ・クロ・デ・ムーシュ / ジョセフ・ドルーアン 1973年
●バタール・モンラッシェ / ラモネ・プルドン 1973年
●ピュリニー・モンラッシ / ドメーヌ・ルフレーヴ 1972年
-カリフォルニア(6本)
●シャトー・モンテレーナ 1973年
●シャローン・ヴィンヤード 1974年
●スプリング・マウンテン 1973年
●フリーマーク・アベイ 1972年
●ヴィーダー・クレスト 1972年
●デイヴィッド・ブルース 1973年

赤ワイン(カベルネ・ソーヴィニヨン系が10本)
-フランス(4本)
●シャトームートン・ロートシルト 1970年 (1級)
●シャトーオー・ブリオン 1970年 (1級)
●シャトーモンローズ 1970年 (2級)
●シャトーレオヴィル・ラス・カーズ 1971年 (2級)
-カリフォルニア勢(6本)
●スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ 1973年
●リッジ・モンテ・ベロ 1971年
●マヤカマス 1971年
●クロ・デュ・ヴァル 1972年
●ハイツ・マーサズ・ヴィンヤード 1970年
●フリーマーク・アビー 1969年

審査結果① 白ワインの部

審査は白ワインからスタートし、2種類ずつ5回に分けて試飲しました。採点は1人20点で、色、香り、味、バランスの各5点の合計となります。
1位はカリフォルニアの「シャトー・モンテレーナ」1973年でした。2位以下は下記の通りです。

白ワイン部門

得点

1位 シャトー・モンテレーナ 1973

132点

アメリカ

2位 ムルソー・シャルム 1973

126.5点

フランス

3位 シャローン・ヴィンヤード 1974

121点

アメリカ

4位 スプリング・マウンテン 1973

104点

アメリカ

5位 ボーヌ・クロ・デ・ムーシュ 1973

101点

フランス

6位 フリーマーク・アビー 1972

100点

アメリカ

7位 バタール・モンラッシェ 1973

94点

フランス

8位 ピュリニー・モンラッシェ 1972

89点

フランス

9位 ヴィーダー・クレスト 1972

88点

アメリカ

10位 デイヴィッド・ブルース 1973

42点

アメリカ

審査結果② 赤ワインの部

そして赤ワインの部でも、1位はカリフォルニアワインの「スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ」 1973年でした。2位以下は下記の通りです。

赤ワイン部門

得点

1位 スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ 1973

127.5点

アメリカ

2位 ムートン・ロートシルト 1970

126点

フランス

3位 オー・ブリオン 1970

125.5点

フランス

4位 モンローズ 1970

122点

フランス

5位 リッジ・モンテ・ベロ 1971

103.5点

アメリカ

6位 レオヴィル・ラス・カーズ 1971

97点

フランス

7位 マヤカマス 1971

89.5点

アメリカ

8位 クロ・デュ・ヴァル 1972

87.5点

アメリカ

9位 ハイツ・マーサズ・ヴィンヤード 1970

84.5点

アメリカ

10位 フリーマーク・アビー 1969

78点

アメリカ

「無名のカリフォルニアワイン」が「フランスの一流ワイン」に勝利

なんと、白ワイン、赤ワインの両部門でカリフォルニアワインが勝利しました。無名のカリフォルニアワインが歴史あるフランスワインを抑えて1位になったのは誰もが想像していなかったことで、「ニューヨーク・タイムズ紙」をはじめとしてさまざまな米国メディアがこの結果を報じ、世界中に広まりました。

購入できる「パリスの審判」のワインを紹介

カーヴ・ド・リラックスで購入できる「パリスの審判」で出てきたワインを紹介します。
どれも高品質で素晴らしいワインばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。
※ヴィンテージは「パリスの審判」のワインと異なるのでご注意ください)

スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ SLV エステート カベルネ・ソーヴィニヨン 2011

「パリスの審判」赤ワイン部門1位になったスタッグス・リープ・ワイン・セラーズのカベルネ・ソーヴィニヨン。ココアやブラックベリー、鉱物のニュアンスとスパイスのアロマが特徴的で、シルキーで丸みのあるタンニンとミネラル感が味わえるワインです。

フリーマーク・アビー ナパ・ヴァレー シャルドネ 2021

「パリスの審判」白ワイン部門6位になったフリーマーク・アビーのシャルドネ。92%をフレンチオーク樽(そのうち新樽が47%)で、8%をステンレスタンクで発酵しています。緑がかった明るい小麦色で、青リンゴや梨、熟したバナナ、パイナップルのアロマに、樽由来のスパイスやバニラがアクセントになっています。

シャトー・モンローズ 2008

「パリスの審判」赤ワイン部門4位になったシャトーモンローズ。メドック格付け2級で「サンテステフのラトゥール」の異名を持つ重厚なワインです。 カベルネ・ソーヴィニヨン65%、メルロ30%、カベルネ・フラン4%、プティ・ヴェルド1%のブレンドで、黒系果実を中心に、チョコレートやスパイスなどの香りが楽しめます。プルーンやタバコ、ココア、リコリスなど複雑な味わいが感じられます。

まとめ

1976年にフランスのパリで行われたアメリカ対フランスのワイン品評会「パリスの審判」について解説していきました。「パリスの審判」をきっかけにカリフォルニアワインが世界中に知れ渡りました。「パリスの審判」に出たワインを飲んでみたい方は、カーヴ・ド・リラックスのオンラインサイトで探してみてください。

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この記事を書いた人

吉川 大智

吉川 大智

JSA認定 ソムリエ

バーテンダー、ワインバーのマネージャーを経てワインのPRライターに。過去には40カ国200都市の酒場とワイナリーを訪問した経験あり。

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