2023.07.26

カオール - マス デル ペリエ

 

カオールという産地をご存じだろうか。名前が日本人にとって発音しやすいため、あるいは覚えやすいため、 場所やワインはあまり知らないけど聞いたことはあるという人は多いのではないかと思う。
ここはマルベックで有名な産地であるが、そもそもマルベックが一般的ではないかもしれない。 現地ではコットやオーセロワなどと呼ばれている。

Mas del Perie / Cahors
マス デル ペリエ

またカオールは、有名シャトーがひしめくボルドー地方の南東にある地域で、フォラグラやトリュフと行った高級食材の名産地としても知られている。 そして、カオールのワインは「ブラックワイン」とも言われるように黒くて、濃い、強いワインというのがイメージとして強い。
しかし、今回ご紹介する「マス・デル・ペリエ」はそんなイメージを一新するワインを造り上げる。

キャップシールにも刻印があるように、当主ファビアン・ジューヴ氏はビオディナミ農法による、いわゆるナチュラルワインを造り出す。
数多のナチュラルワインが蔓延る現代だが、彼の造るワインはそうやって一括りにしていいものではなく、テロワールを再現するうえで、この方法が最適解だからこうしているという意思をはっきりと感じる。

色調が薄く、緩く旨味が強いという訳でもなく、果実味の押し寄せるような濃さと丸い味わいという訳でもない。

Mas del Perie |ファビアンのこだわりとは

この産地、そしてファビアンからしか生み出せない、独特の塩味やメントールのような清涼感、そしてしなやかで芯の通ったテクスチャはこの価格で本当にいいのか疑ってしまうクオリティだ。
そんなファビアンがこだわるテロワールで重要なポイントがキンメリジャン土壌。約一億五千年前の海底だった頃の小さな牡蠣の化石由来のミネラルが溌溂とした土壌だ。それを聞いて、パッっと思い浮かぶのはシャブリではないだろうか。

その土壌を生かしたクリュシリーズと呼ばれるゼスキュール、ラ・ロック、ザカシアは、大地のエネルギーを感じるような、力強い果実。 そして、奥底に眠る溌溂としたミネラル。
それを理解しながら飲むのと理解しないで飲むのでは、このワインに対する印象が変わるはずだ。

上記クリュシリーズは、開けたてだととてつもなくパワフルで力がみなぎっているので、ぜひ数日に分けて飲んでいただきたい。「カオール ラ・ロック 2019」は、4日後に最高にフレンドリーになってくれた。

もう一方で、背筋の伸びるような緊張感と複雑味のあるワインだけではなく、ポップなラベルが特徴的な「テュ・ヴァン・プリュ」のようなユーモラスで、肩肘張らずに飲めるワインも造り出すのが更にすごいところ。
マルベック、メルロ、ガメイという変わったブレンドだが、見事に親しみやすいワインに仕上がっており、彼の"真面目だけど、どこかお調子者"という人柄がワインにも落とし込まれている。

インタビューにもある通り、彼はワイン造りだけでなく野菜やラベンダーの栽培、ハチミツ造り、家畜の飼育などを始めている他、植樹もしている。 レストランやB&Bも始める予定ということで、このワインを飲んだが最後。

カオールへ訪れたいと願う日もそう遠くはないはずだ。


造り手のホンネに迫る?
質問状

Interview : Fabien Jouves

私の両親がワイン造りに携わっていたので、生まれたときからワインは身近な存在でした。ワインにまつわる最も古い記憶は、6-7歳の頃、マルベックのボトルを飲んだことですね。中身はもちろん水ですが。

サッカー選手です。

テレビで有名な選手、例えばイングランド代表だったクリス ワドルの活躍を観て憧れていました。

常に自分に出来るベストを尽くすこと。毎日、毎時間、畑にいるとき、セラーにいるとき、どんな時でも最良のワインを造るための行動をし続けることです。そして、ブドウ樹や毎年のヴィンテージなど、ワインに関わるものに敬意を払うこと。

ワイン造りを始めたばかりの頃は、それは簡単なことではありませんでした。けれど10年以上ワインを造り続け、そうやって真摯に向き合うことがワインだけでなく自分自身にもポジティブな影響を与えていることを感じています。音楽を流しながら醸造を行ったり、樽に話しかけてみたり、そういったことからエネルギーをもらっています。

家族の伝統への尊敬からです。私には兄弟がおらず、私が家業を継がなければ家族が続けてきた伝統が消えてしまう。なので私にとっては父の後を継いでワイン造りを行うのは自然なことでした。

ヴァン ド フランス:シャルキュトリーやパテ、サラミ。

クリュワインは鴨の胸肉や子羊、ジャガイモと合わせるのも好きです。
後はジロール茸やセップ茸などのキノコとよく合います。

※輸入元ファインズより:ヴァン ド フランスはテュヴァン プリュ オー ソワレ、 クリュ ワイン:ゼスキュール、ラ ロック、ザカシアのことを指します。

二回訪れたことがあります。

二回目は家族と訪れ、東京の中でいくつかの場所に行きました。高層ビル群が立ち並び、驚くほど多くの人が行き交うにぎやかな場所がある一方でそのすぐそばに神社やお寺、庭園があり新しいものと古いものが混在しているところが興味深いです。

基本的には脂がのったもの、特に肉がすきです。子羊や牛ホホ肉、あとは鴨の脂で焼いたキノコなど美味しくて大好きです。

日本の食べ物も好きで、新鮮な魚や寿司はカオールでは食べられないので日本に行った際、家族と一緒に豊洲市場に行きました。

ジュラのピエール オヴェルノワです。

実際に会ったことがありますが、彼はナチュラルワインの神様のような人。 彼のような存在になりたいと思っています。

二つのワインが浮かびます。まずはゼスキュール。このワインの特徴は塩味とフレッシュさだと思っており、塩味はもしかしたら苦手な人もいるかもしれない特徴的な味わいですが、そこが個性があるけれどどんな人とでも話せて心はいつまでも若い、そんな自分と重なる部分があると思います。同時に熟成していくワインでもあるので、自分もゼスキュールのように年齢と共に深みを重ねていけるかなと。

もう一つはテュ ヴァン プリュ。人生を楽しみ、時には酔っ払い。自分らしいワインだと思います。

なかなか難しい質問で、そのワインを飲みたいと思ったときが飲み頃だと思っています。

私自身若いワインが好きです。まるで人間の子供のようにエネルギーに満ちていてアロマやフレーバー、タンニンがあふれています。マルベックは熟成する力をそなえていますが、個人的にはマルベックのいきいきとした味わいが好きなので、飲む10分前にボトルを開ければ後は気のおけない友人や家族など、ワインを一緒に楽しむ仲間がいれば十分かと。

実際、セラーで十分に熟成させてから出荷しているので、みなさんのお手元に届くときにはすでに楽しめるようになっているかと思います。

土壌です。ブドウは土壌から必要なものを吸収するので。特にキンメリジャン土壌は、私たちのワインにとって大きな意味を持っています。

土壌と、そこにビオディナミ農法を行うことで「ミネラル感」と呼ばれるような鉱物的なニュアンスや塩味、フレッシュさがもたらされるのが特色です。

6月の開花の時期です。ブドウ樹も周囲の影響を受けやすい時期で、雨が続き病気が拡がれば一気にその年の収穫を失う可能性がある非常に気を遣う季節です。

将来についてですが、やはり温暖化の影響は考える必要があります。ブドウの房を太陽から守ったり、仕立てを変えるなどブドウの栽培の在り方を変える必要も出てくるかもしれません。

またマルベック以外の品種も試しており、ジュランソン ノワール、ジベール、ヴァルディギエ、ジベール、ノアルという4つの品種を使ったキュヴェを造り始めています。マルベックに比べて非常に収量が多く、アルコール度数が上がらないのですがしっかりとした味わいがあります。面白い可能性のあるキュヴェだと思っています。

マルベックは繊細で、丁寧に扱い余計な抽出を行わないようにしなければなりません。さもなければ苦みやえぐみが出てしまいます。2019年にセラーを一新し、醸造工程を全てグラヴィティフローで行えるようになったことは非常に大きいです。

またワインが酸化しないようにするため窒素を造るための専用の機械を導入し、発酵の後は窒素をタンクの中に入れワインを覆っています。小さなことにこだわることが、自分の造りたいワインを造るために大切なことだと思っています。

余計なことをしないことです。ブドウが土壌から必要なものをきちんと吸収し、熟していれば、それは自然にワインに現れてきます。無理に抽出する必要はありません。

特にはありません。ワインが汚染されないように注意し、揮発酸が出ていないことを確認するだけです。

マス デル ペリエではワイン造りだけでなく野菜やラベンダーの栽培、ハチミツ造り、家畜の飼育などを始めている他、植樹もしています。ブドウ畑を造るために森を切り開いた、その分を樹を植えること、またさまざまな動植物を育て、多様性をはぐくむことで少しずつ返していきたい。

レストランやB&Bも始める予定です。ぜひワイナリーに来るときにはワインだけでなく、私たちの取組全体を楽しんでいただきたいです。