ウィリアム・フェーヴル
ドメーヌは1750年頃に設立され、1950年に現在の社名となっているウィリアム・フェーヴル氏が相続しました。氏は積極的に畑の購入を進めた結果、約47haまで畑を拡張しました。うちグランクリュが約15.2ha、プルミエクリュが約12haを占め、シャブリ最大のグランクリュ所有ドメーヌとなりました。
しかし、後継者に恵まれなかったフェーブル氏はドメーヌを売却することに。もちろん多くの買い手が殺到したことは言うまでもありません。その中で選ばれたのは、すでに同じブルゴーニュにあるブシャール社の改革を成功させていたシャンパーニュのメゾン、「アンリオ」のジョセフ・アンリオ氏でした。
ジョゼフ・アンリオ氏はウィリアム・フェーブルの類まれな畑の能力を最大限に生かすためブシャール社の若手醸造家ディディエ・セギエ氏を改革の実践者として抜擢しました。当時まだ31歳だったセギエ氏は就任当初からいくつもの改革を進めます。
セギエ氏は1998年、収穫のわずか1週間前に抜擢されたばかりでしたが、それまで機械で行われていた収穫を手摘みに急遽変更しました(シャブリでは手摘みは珍しく、今でも95%は機械)。また、シャブリならではのミネラルとフレッシュさを生かすために新樽の使用を削減。 「最もピュアで最もエレガントな白ワインを造る生産者の1つ」(『ル クラスマン』)と表現されるようになりました。
2006年から自然由来の製品の使用を開始し、2010年からは一部の畑でビオディナミ農法を開始しています。「良質なワインを造るためには美しいブドウが必要」と語るように、農法ありきではありません。そして、2014年12月からは農務省が推奨する農法である、「環境に高度に配慮した農法のレベル3」の認証を受けました。農法レベル3とは大きく3つのポイントがあります。
①生物の多様な環境を保護する、つまり他の植物や動物が生きられる環境を整えること
②農業で使用してよい薬剤の種類、量など厳しく定められている
③肥料をコントロール。天然由来の肥料のみ使用が許されているが、使える頻度や量が決められている
この認証を取得しているのはフランス国内でも約150軒ほどです(2015年時点)。
今後はグランクリュだけでなく、プルミエクリュも含めビオディナミに転換していく方針だそうです。
セギエ氏がドメーヌとともに歩んできた20年という年月を思い浮かべながらグラスを傾けるのはいかがでしょうか。