アフリカ大陸の最南端に位置する南アフリカ。ワイン産地は西ケープ州を中心に、南西の沿岸地域に広がります。緯度が低く海から近いので、日照時間が長い温暖な地中海性気候ですが、南極から北上する冷たい海流や南東の偏西風などの影響で、緯度の割に冷涼な環境にあります。また、地球上で最も古い土壌の一つと言われる程太古の土壌が存在する場所でもあります。長い年月をかけて隆起や浸食、地殻変動が起こったことで、様々な山脈が形成されており、標高の違いや畑の向きに違いが生まれる他、土壌環境も複雑で場所によって様々です。
海からの距離、標高の高さや畑の向き、土壌の違いなど、異なる栽培環境を活かして様々なブドウ品種が栽培されています。単一品種のワインだけではなく、ボルドー品種やローヌ品種などのブレンド、また、「キャップ・クラシック」と呼ばれるシャンパーニュと同様の製法(瓶内二次発酵)で造られるスパークリングワインの人気も高いです。また、近年ではカルト的な人気を誇るワイナリーも登場し、新世界を代表する産地の一つとなっています。
主要なワイン生産地
南アフリカのワインの9割を占める西ケープ州には、5つの地方( コースタル・リージョン、 ケープ・サウス・コースト、 ブレード・リヴァー・ヴァレー、 クレイン・カルー、 オリファンツ・リヴァー )があります。
コースタル・リージョン
西ケープ州の大西洋側に位置し、他地域に比べて生産者の数が多く、有名銘柄も多い南アフリカにおけるワインの中心産地です。南アフリカ随一のブドウ栽培面積を誇り、産学のハブ拠点であるステレンボッシュや、州都周辺の産地で、至極の甘口ワイン(ヴァン・ド・コンスタンス)の発祥の地を含むケープ・タウン、カルト的な人気を誇るワイナリーが誕生したスワートランドなどを含みます。
ケープ・サウス・コースト
南アフリカ最南端の地域で、大西洋とインド洋を流れる2つの海流の影響を色濃く受ける冷涼な産地で、ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネ、ピノ・ノワールなどが有名です。また、山脈や急峻な丘陵地帯があり、標高が上がるにつれ、昼夜の寒暖差の大きい場所でもあります。比較的新しい産地で、総面積も大きくありませんが、ワインの質の高さに注目が集まっています。
ブリード・リヴァー・ヴァレー
温暖な地域で灌漑設備も完備されていることから収量が多く、南アフリカで最もワインの生産量の多い地域であると共にブランデー用ブドウ産地としても有名です。石灰質土壌が広がる区域があるロバートソンには、この土壌環境を活かしシャルドネやピノ・ノワールを栽培する、南アフリカを代表するキャップ・クラシックの生産者がいます。
クライン・カル―
東西に長い地域で、降水量は場所によって差はあるものの乾燥地帯です。ポートワインの銘醸地である他、甘口ワインや高品質なブランデーの産地としても知られていましたが、近年は標高の高い山間部で栽培されているブドウに注目が集まっています。
オリファンツ・リヴァー
西ケープ州の中で一番北に位置し、温暖で降水量の少ない乾燥地帯です。古くは大量生産のワインの産地として知られていましたが、最近は古樹や標高の高い場所で栽培されているブドウの品質の高さに注目が集まっています。
主要なブドウ品種
1990年時点では白ブドウが8割を超えていましたが、黒ブドウの栽培が増え、現在は白55%・黒45%と大差がなくなっています。白ブドウでは、シュナン・ブラン、ソーヴィニヨン・ブラン、コロンバール、シャルドネの順に栽培面積が大きく、黒ブドウは、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ、ピノタージュ、メルロと続きます。
主なワイン認証制度
原産地呼称制度
1973年に「Wine of Origin(WO)」という、原産地呼称制度が制定されました。産地のブドウを100%使用すること、また品種を表記する場合は、その品種を85%以上使用することなどが義務付けられています。WOは4つの階層構造となっていて、 「Geographical Unit(州域)」 、「Region(地方)」、「District(地域)」、「Ward(地区)」に分かれていきます。
古樹認証制度
「オールド・ヴァイン・プロジェクト」は、南アフリカで誕生した世界初の古樹認証制度です。樹齢35年以上の畑をヘリテージ・ヴィンヤードとして認定しており、2025年9月末現在、メンバー数は138生産者、認証を受けた畑の広さは5,159haまで広がっています。産地ではステレンボッシュが最大で全体の2割強を占め、品種ではシュナン・ブランが半分近くを占めています。審査を通ったワインには、植樹年が記載されたシールがボトルに貼られています。
サステナビリティ
南アフリカでは、1998年から「IPW(Integrated Production of Wine)」という、持続可能な農業のためのガイドラインが設定されており、95%以上のブドウ栽培農家やワイン生産者がガイドラインに即した活動を行っています。2010年以降、IPWガイドラインの審査を通ったワインは、ボトルのネック部分にサステナビリティシールが貼られるようになりました。更に、2012年には、自然環境保護に加え、労働環境の改善も加えた認証シールも作られています。