日本ワインの生産量で山梨、北海道と並ぶ主要産地の一つです。2023年は北海道に抜かれて3位でしたが、それまでは常に山梨に次ぐ日本2位の生産量を誇って来ました。ワイナリーの数も75軒と2位で、かつ2014年の25軒から10年で3倍に増加しています。さらにワイナリー設立を目指して既にぶどう園を開設している生産者も多く、まだまだワイナリーが増えていく見込みです。あと数年でワイナリー数は100軒を超す見込みで、山梨県を抜いてワイナリー数で日本一になる事も現実味を帯びて来ました。
長野ワインの概要
周囲を3,000m級の山々に囲まれ、全体的に標高が高く、内陸性の気候を持つのが長野県です。この気候は雨が少なく冷涼で乾燥したヨーロッパのワイン銘醸地に近く、大きな気温の寒暖差も持つため、特にメルロやシャルドネなどのワイン用ぶどうの産地として高いポテンシャルを持っています。
長野県は元々は赤玉スイートワインなどの甘味果実酒の原料ぶどうの産地として発展したため、現在でも生産量が多いのはコンコードやナイアガラなどのアメリカ系ぶどうですが、近年はワイン専用種であるヴィニフェラ系ぶどうの栽培面積が急激に増加しています。特に他の主要産地と比較するとメルロやカベルネ・フラン、シラーなどの赤ワインの評価が高いのが特徴です。また、山岳県らしく、同じワイン産地の中に500mを超えるような大きな標高差がある事も稀ではなく、幅広い気候帯を持つ事から、多彩なぶどう品種で成功が可能な事も長野県の魅力の一つです。
長野県は2013年に「信州ワインバレー構想」を発表し、県としてワイン産地の形成を支援する事を宣言しました。この構想では県内を4つのワインエリアに分類し、産地化を目指しています。4つのバレーは北から「千曲川」「日本アルプス」「桔梗ケ原」「天竜川」ですが、特に千曲川ワインバレーのワイナリーの増加が顕著で、歴史的な産地である桔梗ケ原ワインバレーと並んで、2大産地を形成しつつあります。特に小諸から東御を経て上田・坂城に至る上流部の斜面エリアと、須坂市と高山村周辺の下流部にぶどう畑が集約され、新しい生産者が次々と登場しています。ワインバレー構想10周年の2023年には「信州ワインバレー構想2.0」が発表され、5つ目のワインバレーである「八ヶ岳西麓ワインバレー」が追加されました。このエリアは標高1000m近い冷涼な産地で、近年の気候変動の中で新たなワイン産地として浮上してきました。同じく標高1000mの軽井沢でもワイン生産がスタートしています。
大消費地である東京との物理的・心理的な距離も近さもアドバンテージであり、ますますの発展が予測されています。
代表する産地
桔梗ヶ原ワインバレー
長野県のほぼ中央に位置し、奈良井川とその支流に挟まれた地域です。長野県でのワイン造り発祥の地である塩尻市が含まれます。老舗ワイナリーが多い場所ですが、近年は小規模ワイナリーも増えつつあります。ナイアガラやコンコードなどのアメリカ系品種の栽培が多いですが、メルロを長野県に根付かせた場所として有名。近年はメルロ以外にも、シャルドネを始めとする欧州系品種の栽培も盛んです。
千曲川ワインバレー
長野県の北東部に位置し、長さ約100kmに及ぶ千曲川の上流から下流に広がります。上流にある上田平と佐久盆地の周辺には東御市や小諸市、上田市など、下流の長野盆地周辺には長野市や須坂市、高山村など、多くの市町村が含まれるエリアです。欧州系品種の栽培が盛んで、気候や標高に合わせて様々な品種が栽培されています。最近は個人のワイナリーが増えていて、ワイナリーの個性を楽しみたい方におすすすめの場所です。
日本アルプスワインバレー
松本市から安曇野市に広がるエリアで、北アルプスが望める風光明媚な場所です。長野県のブドウ栽培の発祥の地とも言われるほど果樹栽培の歴史が長く、日照時間が長く水はけがいいといった環境を活かしてワイン用ブドウの畑も点在しています。ナイアガラ、コンコード、デラウェア、巨峰など、生食用ブドウを用いたワイン醸造が多いですが、最近は欧州系品種の栽培も進んでいます。
天竜川ワインバレー
長野県南部に位置し、東は南アルプス、西は中央アルプスに挟まれた盆地の中央を流れる天竜川の流域にあります。水はけのよい土地を利用し、古くから果樹栽培が盛ん。他の地域に比べてワイナリーの数は少ないですが、ワイン用ブドウの栽培が進んでいます。欧州系ブドウの栽培も進んでいますが、山ブドウやヤマ・ソービニオンといったヤマブドウ系の日本固有品種のブドウを使ったワインが造られていて、個性が光るエリアです。
八ヶ岳西麓ワインバレー
県内でも最も標高の高いワイン用ブドウ栽培場所として、最近産地形成されたエリアです。八ヶ岳と南アルプスに挟まれた標高800?1000 m 超の、八ヶ岳から伸びる扇状地を中心にワイン用ブドウが栽培されています。 標高が高く非常に冷涼な場所ですが、昨今の温暖化の影響もあり、ピノ・ノワールやピノ・グリといった冷涼な気候に合ったヨ欧州系品種を中心に栽培するワイナリーが増えてきており、注目を集めつつあります。
代表する品種
カベルネ・ソーヴィニヨン
世界的にも有名な、赤ワインの代表的な品種。色調は濃く、濃厚な果実味を感じると共に、渋味や酸味も豊かです。また、栽培される産地によって香りに大きな幅が出るのも特徴。日本での総栽培面積は少ないですが、長野県内は増えつつあります。
メルロ
フランスのボルドー地方が原産の赤ワイン用品種で、世界でも広く栽培されています。果実味たっぷりで舌触りが滑らかなのが特徴。近年では日本でも広く栽培されていていますが、長野県の桔梗ヶ原バレーにある塩尻は、メルロを長野県に根付かせた場所として有名で、国際的にも評価が高い名産地です。
コンコード
長野県で最も多く栽培されている赤ワイン用品種で、白ブドウ品種のナイアガラに次ぐ栽培量を誇ります。アメリカ系品種で、 軽やかで渋みの穏やかなフルーティーな味わいが特徴です。国内では、ほぼ長野県の桔梗ヶ原ワインバレーで栽培されています。
マスカット・ベーリーA
日本のワインの父と呼ばれる川上善兵衛によって開発された赤ワイン用品種。アメリカ系品種と欧州系品種の交配品種で、ワインの色調は濃く、キャンディのような甘い香りと穏やかな渋みが特徴的です。 生食用にも使用されるので、日本人にとってはなじみ深い品種と言えるでしょう。
シャルドネ
世界的にも特に知名度が高い、白ワインの代表的品種。栽培される場所や醸造手法がワインの味わいに反映されやすいので、土地や作り手毎に異なる味わいが楽しめます。 日本各地で栽培されていますが、特に長野県の千曲川ワインバレーがシャルドネの産地として注目を集めています。
ソーヴィニヨン・ブラン
世界中で栽培される白ワイン品種で、ハーブや青草のような青っぽさが特徴的。爽やかでフルーティー、すっきりした飲み口のワインです。日本での栽培面積は比較的少ないですが、増加傾向にあります。日本では冷涼な環境で育てられることが多く、長野県で多く栽培されています。
ナイアガラ
アメリカ系の白ワイン品種で、長野県で最も多く栽培されています。生食用でもあり、独特の甘い華やかな香りがあります。甘さを残したスタイルや、スパークリングワイン、ヌーヴォーといった様々なスタイルで提供されています。
竜眼・善光寺ブドウ
元々欧州系品種だったブドウが中国を渡って、「竜眼」という名前で日本に入ってきたと言われている白ワイン用品種。古くから長野県善光寺周辺で栽培されていたため、「善光寺ブドウ」とも呼ばれています。甲州種と良く似た爽やかな酸味と穏やかな飲み口が特徴で、和食との相性が良いです。