シラーは、フランス・コート・デュ・ローヌ地方を原産とする赤ワイン用の黒ブドウ品種です。乾燥して温暖な気候を好み、育てやすい特性から、現在ではオーストラリアやスペイン、アルゼンチンなど世界各国で広く栽培され、人気を集めています。
フランス国内では、シラーはメルロー、グルナッシュに次ぐ第3位の栽培面積を誇るブドウ品種で、世界全体でもカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、テンプラニーリョに続き、黒ブドウ品種の栽培面積は4位です。オーストラリアでは「シラーズ」と呼ばれ、国内最大の栽培面積を誇る代表的な品種です。
歴史
シラーの発祥は、フランスの北ローヌ地方です。18世紀頃にはすでに熟成可能な高品質ワインを生み出す品種として知られており、かつては「セリーヌ」や「プティット・シラー」と呼ばれることもありました。シラーは、サヴォワ地方のモンドゥース・ブランシュとローヌ地方のデュレザという2種類のブドウが自然交配して生まれた品種です。名称の由来は、インドヨーロッパ語の"ser"(長時間)や、ラテン語の"serus"(晩熟)に由来するとされています。一方、オーストラリアで広まった「シラーズ(Shiraz)」という呼称の由来は明らかになっていませんが、オーストラリアの土地に根ざし、独自の進化を遂げています。
産地
シラーの主要な産地は、以下の4つです。
- フランス / 北ローヌ
シラーの原産地であり、エルミタージュやコート・ロティなどの銘醸地を擁します。北ローヌでは、急斜面の畑でシラーが栽培され、強いアロマとエレガントな味わいを持つワインが生まれます。基本的にはシラー100%で造られますが、一部では白ブドウのヴィオニエを少量ブレンドすることもあります。
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フランス / 南ローヌ
北ローヌとともにローヌ地方を形成する南ローヌでは、主にグルナッシュやムールヴェードルとブレンドされるスタイルが主流です。丸石の土壌を持つ地区では、夜間も温かさが保たれ、豊潤な果実味を持つワインが生まれます。
- オーストラリア / バロッサ・ヴァレー
オーストラリア国内で最もシラーズが多く栽培されている地域です。標高250〜350m程度の内陸地に位置し、温暖で乾燥した気候により凝縮感があり、濃厚でスパイシーなワインが造られます。樹齢100年以上の古木から生まれるワインもあり、世界的にも高い評価を得ています。
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チリ / コルチャグア・ヴァレー
チリでも近年シラーの栽培が盛んになってきています。温暖なコルチャグア・ヴァレーでは力強いスタイル、冷涼なエルキ・ヴァレーでは引き締まったエレガントなスタイルのシラーが生み出されています。チリ国内のさまざまな地域で栽培されており、コルチャグア・ヴァレーの他、エルキ・ヴァレーが有名です。涼しい北部エリアのエルキ・ヴァレーに対し、コルチャグア・ヴァレーは温暖な気候のため、コルチャグア・ヴァレーは力強く、エルキ・ヴァレーは引き締まった味わいに仕上がります。
ワインの特徴
シラーは小粒で果皮が厚く、深い紫色をしたブドウです。ワインにするとプルーン、ダークチェリー、ブラックベリー、黒コショウなどの香りが豊かに広がります。味わいはフルーティーでありながらスパイシーさを備え、しっかりとした骨格と豊富なタンニンによる力強い飲み心地が特徴です。
温暖な産地では、プルーンやチョコレートのような濃密な甘さを持つワインに仕上がり、アルコール度数も高くなります。一方、冷涼な産地では、鉄分や動物的なニュアンスを含む複雑な香りとエレガントな味わいが特徴となります。
ワインに合う料理
シラーは力強い味わいとスパイシーな風味が特徴なので、肉料理と好相性です。黒コショウを使ったスパイシーな料理とは抜群に相性が良いので、フランス料理のコースでもメインの肉料理にシラーが合わせられることが多くあります。
具体的には、牛肉の煮込み、牛ステーキ、ラム肉のグリル、鶏のロースト料理、ジビエ料理などが挙げられます。また、鉄分を多く含むマグロの刺身にも意外に合い、ワインと醤油の発酵食品同士の相性も相まって、驚くほどのマリアージュが楽しめます。そのほか、鰻のきも焼きやすき焼きなど、和食と合わせるのもおすすめです。
ワインと料理を自宅で楽しむ場合
自宅でシラーの魅力を手軽に楽しみたい場合は、ローストビーフや焼き鳥(とくにレバーのタレ焼き)、スパイスを効かせた麻婆茄子、ブラックペッパーを効かせたカマンベールチーズなどがおすすめです。これらの料理なら手軽に準備できるうえ、シラーとの相性も抜群です。スパイシーな麻婆茄子のなめらかな舌触りと、シラーの力強い果実味がよく調和しますし、ブラックペッパーをふったカマンベールチーズも、シンプルながらワインを引き立てる素晴らしいおつまみになります。ぜひ試してみてください。