エルミタージュ (Hermitage) は、フランスのワイン産地であるコート・デュ・ローヌ (Cotes du Rhone) を代表する銘醸アペラシオン(原産地の呼称)の一つです。畑が急斜面で機械化ができないため、手作業がメインで行われているエルミタージュは、ローヌ北部を代表するワイン産地として知られています。エルミタージュは140haにも満たないほど非常に面積が小さいですが、エリアのほとんどが南向きのため日照量が多く、冷たい北風からブドウを守るような地形になっており、ブドウを完熟させるのに適した環境を備えています。
石灰質や粘土質、石ころなど多様な土壌があり、シラーは85%以上、ルーサンヌ、マルサンヌは15%以下のブレンドが認められています。エルミタージュで造られるシラーは長期熟成に耐えうるポテンシャルがあり、10年〜20年とゆっくりと寝かせるとさらに複雑味が増すと言われています。
テロワールを忠実に反映させるクラシックなスタイルが主流で、若いうちはパワフルな味わいが感じられ、長期で熟成させることで次第に丸みのとれたなめらかでスムースな舌触りと奥行きのある味わいが感じられます。エレガントで奥行きのあるエルミタージュは世界各国にファンがいますが、輸出向けのワインが少なく、地元で流通する傾向があるため、日本国内で常に容易に手に入るわけではありません。
エルミタージュワインの特徴
エルミタージュで有名なワインは、ローヌ地方の黒ブドウ品種「シラー」をメインに使用した赤ワインです。シラーは強い個性を持ちながらも各産地の特徴を反映した味わいになるため、世界中で栽培されています。色調は濃く、熟した果実やスパイスなど、豊かで複雑なアロマが特徴で、口に含むと繊細さと力強さ、しっかりとしたタンニンが感じられます。飲みごたえのあるフルボディに仕上がるので、ジビエや牛肉を使ったグリルや煮込み料理といった脂分の多いボリューミーな肉料理との相性がとても良いです。
また、エルミタージュはシラーだけでなく、ルーサンヌ、マルサンヌを使った白ワインも少量ですが造られています。白ワインはパッションフルーツを思わせる黄金色で、アプリコットやパイナップル、キンモクセイなどの甘い香りが感じられ、豊かな果実味と適度な酸味のバランスの良さが魅力です。これもエルミタージュならではの日照量の多さ故に生まれる特徴の一つといえます。
エルミタージュワインに合う料理
エルミタージュの赤ワインは鴨やうさぎといったジビエ料理をはじめとして、牛肉、肉の煮込みなど肉料理全般に合わせやすいです。ラム肉のローストやナツメグを効かせた煮込みハンバーグなどがおすすめです。シラーを使った赤ワインはスパイシーなニュアンスが感じられるので、お肉もスパイスやハーブでしっかりと香りづけするとより相乗効果が生まれます。また、白ワインは凝縮感のあるフルーティーな果実味と穏やかな酸味が特徴なので、クリーム系のソースやバターを使った魚介料理と合わせてみてください。