熊本県北部、山鹿市菊鹿町に居を構える熊本ワインファームの菊鹿ワイナリー。大分県と福岡県の県境に近く、阿蘇山の西側に位置する。1999年に創業した熊本ワインファームが菊鹿にワイナリーをオープンしたのは2018年。緑に囲まれた広大な敷地には、ブドウ畑とワイン醸造所の他に、試飲カウンターがあるワインショップやカフェ、ピザやパスタなどのテイクアウトやイートインスペースまで完備されていて、ゆったりと自然と楽しみながら時間を過ごすことができる。
▲ 手前の赤い屋根にはテイクアウトやイートインスペースがあり、奥のシックな茶色とグレーの建物に醸造所とワインショップ、カフェがある。
熊本ワイナリーが出来て20年程経過した。ワイナリーが熊本市内にあることから、菊鹿で育ったブドウをワイナリーまで運ぶには車で1時間ほど要してしまう。やはり、より良いワインを造るために、栽培地に近い醸造所を。そういう思いから、2018年に2番目の醸造所となる菊鹿ワイナリーを設立することになった。また、20年間契約農家さんとがっちりブドウ栽培をやってきた経験もあったことから、このタイミングでワイナリーだけでなく、自社畑を併設することになったのだ。
▲ すらっとした長身にくしゃっとした笑顔とホンワカとした口調が魅力的な西村さん。
現在の自社畑の広さは1.5ha。今後3~5年かけて同じ菊鹿町内で畑を拡張していきたい考えだ。 これまで契約農家と共に培ってきたブドウ栽培のノウハウがあるからこそ、
「人にもブドウにも優しい、持続可能な環境を整えた。省力化しつつ収量が取れる体制にした。」
と西村さんは仰る。どういうことだろうか?
▲ 機械開閉式のレインカットを導入しているのは、日本全国菊鹿ワイナリーのみ!ここまで大きなレインカットを見たことがない。
ハウスの中でも20年間の栽培経験を経て得た知識を活かしたブドウ栽培を実践されている。ハウスの中に足を踏み入れると木と木の間隔が広いことに気が付く。3m程の幅があるそうだ。乗用タイプの草刈りを始めとする農機が入るので、農作業が楽になるのだ。
「減農薬栽培などで環境に配慮した活動も取り組みながら高品質なブドウ、ワイン造りをしていきたいと考えています。」
と仰った西村さん。自社畑で働くのは主に2人だけということで、如何に持続可能に作業を続けられるかを大事にされているそうだ。
▲ 木と木の間の幅が広いことがお分かりだろう。機械化しやすい設計になっている。また、根本を外したところに冠水設備も完備されている。
現在、植わっている品種は、白ブドウではシャルドネ、ゲヴェルツトラミネール、ヴィオニエ、黒ブドウはピノ・ノワール、ガメイ、メルロ、カベルネ・フラン。基本的に早生品種を選んでいる。ハウスで栽培していることもあり、温度が蓄積されやすく、ハウス内の夏場には50℃にも上るというのだから、驚きだ。温暖な熊本の中でもハウスのような環境で栽培しているので、収穫は非常に早く、7月下旬頃。台風までに収穫が終えられる。また、露地栽培を行っている契約農家の収穫は8月下旬頃となることから、繁忙期をずらすことができるというメリットもあるという。
▲ 課題にもしっかり向き合い手を尽くす。時間がかかる問題だが、きっと解はあるはず。
「地元が大好き」と言葉で発せられた訳ではないが、西村さんからは、滲み出てくる地元愛を感じる。 契約農家のところには足しげく通う。また、その関係を盛り上げるために、毎年、30ある契約農家から最も質の高いブドウが収穫された1軒からシングル・ヴィンヤードのワインをトップ・キュヴェとして販売する仕組みを作っている。「次こそ自分の畑が選ばれるように!」と農家間での張り合いが生まれているそうだ。
▲ 今はまだワイナリー内でのグラス販売のみの自社畑ブドウで造られたワイン。気になる方は、ワイナリーまでGO!