カルヴァドスとは?
カルヴァドスとは?

ブランデーやシードルとの違い、産地や相性の良い料理などを解説

ブランデーやシードルとの違い、産地や相性の良い料理などを解説

THE CELLAR JOURNAL --- writer : DAICHI YOSHIKAWA

お酒は蒸留酒、醸造酒、混成酒とわかれ、使用している原材料や製法によってさらに多くの種類にわかれます。さらに特定の地域で造られている酒については固有名詞が付くことが多く、カルヴァドスもその1つです。カルヴァドスやシードルを味わうなら、歴史や産地などを知っておくとより楽しめます。本記事ではカルヴァドスやシードルについて詳しく解説していきます。
お酒は蒸留酒、醸造酒、混成酒とわかれ、使用している原材料や製法によってさらに多くの種類にわかれます。さらに特定の地域で造られている酒については固有名詞が付くことが多く、カルヴァドスもその1つです。カルヴァドスやシードルを味わうなら、歴史や産地などを知っておくとより楽しめます。本記事ではカルヴァドスやシードルについて詳しく解説していきます。

カルヴァドスとは?ブランデーやシードルとの違い、産地や相性の良い料理などを解説

ブランデーやシードルとの違い、産地や相性の良い料理などを解説
2024.07.11

1. カルヴァドスとは

カルヴァドスとは、フランス・ノルマンディー地方のカルヴァドス県や近隣の県で造られるアップルブランデーのことを指します。アップルブランデーとは、リンゴを発酵して造るアップルワイン(シードル)をさらに蒸留して造られるものです。おもにフランス北部やイギリス、アメリカで造られており、フランスでは「オー・ド・ヴィー・ド・シードル」と呼ばれています。

ブランデーとの違い

ブランデーは、一般的にはブドウを発酵させて蒸溜したものを指しますが、広義では果実を原料とした蒸溜酒全般をブランデーといいます。コニャック、アルマニャック、カルヴァドスで世界三大ブランデーと言われますが、コニャックとアルマニャックはブドウを主原料とし、カルヴァドスはリンゴを主原料としています。つまり、カルヴァドスはブランデーの中の一種と言えます。

シードルとの違い

シードルは、リンゴから造ったワインを指し、「果実を醗酵させてできた酒」を意味するラテン語「シセラ(Cicera)」が由来と言われています。国によって名称は異なりますが、リンゴを原材料としたワインです。カルヴァドスはリンゴを原材料としたブランデーで、発酵段階までは同じですが、カルヴァドスは樽熟成の前に蒸留をしているのがポイントです。

2. カルヴァドスの産地

カルヴァドスの産地

フランスには原産地呼称規制法(A.O.C.法)があり、カルヴァドスの主な産地は次の3つと定められています。

カルヴァドス・ペイ・ドージュ

ノルマンディー地方の中央から北東にある地区、高級品として位置付けられている

カルヴァドス・ドンフロンテ

ノルマンディー地方の中央南側にある小さな地区、生産量が少なく、カルヴァドスの全体の1%ほど、洋梨の割合が多いため独特な味わいが楽しめる

カルヴァドス ノルマンディー地方

上記以外のノルマンディー地方全域、厳しい規定がなく、価格も手ごろなものが多い

3. カルヴァドスの製法

カルヴァドスはアップルワイン(シードル)を蒸溜することで造られます。カルヴァドスは原産地呼称規制法(A.O.C.)により、原料に使用できるリンゴや洋梨が限られていて、アルコール度数は最低40度、熟成期間は最低2年以上という規定があります。また、カルヴァドスは熟成年数が幅広く、熟成年数が短いものから以下のように順にランク分けがされています。

  • フィーヌ(最低2年)
  • ヴィユー・レゼルヴ(最低3年)
  • ヴィエイユ・レゼルヴ(最低4年)
  • VSOP(最低4年)
  • オル・タージュ(最低6年)
  • ナポレオン(最低6年)

比較的熟成期間が短いカルヴァドスは、カクテルや料理の香り付け、お菓子作りに多く利用されています。6年以上熟成されたオル・タージュやナポレオンは、口当たりがまろやかで奥行きのある味わいが楽しめます。

また、カルヴァドスは1割~3割程度洋梨をブレンドすることが可能ですが、原産地呼称規制法(A.O.C.)により、以下の表のように産地ごとに造り方のルールが異なります。造り方によって味わいに違いがあるため、飲み比べてみるのもおすすめです。

カルヴァドス・ペイ・ドージュ

洋梨をブレンドするときの割合は30%以下、オーク樽による熟成期間は2年以上、単式蒸留器で2回蒸留する

カルヴァドス・ドンフロンテ

洋梨をブレンドするときの割合は30%以上、オーク樽による熟成は3年以上

カルヴァドス ノルマンディー地方

最低アルコール度数は40度以上、オーク樽による熟成期間は2年以上

4. カルヴァドスの歴史

カルヴァドスはフランス北部ノルマンディー地方のカルヴァドス県周辺で造られるアップルブランデーです。フランスはワイン造りに適した土地が多いですが、ノルマンディー地方は風が強く、ブドウよりもリンゴ造りに適していたため古くから栽培されていました。13世紀ごろにはシードルの大量生産が可能になったことで、ノルマンディー地方ではエールやワインに代わってシードルが一般化されるようになりました。カルヴァドスがいつ登場したのか正確なことは不明ですが、1553年にアップルブランデーが誕生したとする文献があります。ノルマンディー地方ではアップルブランデーが一般的な飲み物として普及していき、フランス革命後の新政権によってカルヴァドス県が誕生すると、ノルマンディー地方から運ばれるアップルブランデーをカルヴァドスと呼ぶようになりました。

5. カルヴァドスで使用する品種

カルヴァドスで使用する品種

カルヴァドスに使用されるリンゴはデュレ、サンマルタン、サントーバンなど48種類あり、 ブレンドすることが認められている洋梨はポワール、グリーズなど数種類あります。リンゴはドゥス(甘味)、ドゥス アメール(甘味・苦味)、アメール(苦味)、アシデュール(酸味)の4つのグループにわかれ、リンゴの使用比率によって造られるカルヴァドスの味わいが異なります。

6. カルヴァドスのおすすめする飲み方

カルヴァドスのおすすめの飲み方はストレートです。リンゴ由来の甘酸っぱさがあるため、ほかのブランデーに比べても飲みやすいと言われています。ただワインと比べるとアルコール度数は高いため、ロックにしたり、炭酸と割ったりして楽しむのもおすすめです。

7. カルヴァドスと相性の良い料理

カルヴァドスと相性の良い料理

カルヴァドスはアルコール度数40度を超えるブランデーで、りんごの甘酸っぱい香りと口当たりのよさが特徴です。一般的には食後酒として楽しむのがおすすめで、ドライフルーツやナッツ、ビターチョコレートなどと合わせてみてください。
また、ノルマンディー地方はカマンベール・ド・ノルマンディーが有名なので、同じ地方の特産品同士を試してみるのも面白いでしょう。カマンベールチーズとりんごをオーブンで焼いて、カルヴァドスのソーダ割と合わせるのがおすすめです。

8. おすすめのシードル3選

カルヴァドスはリンゴを原材料としたブランデーですが、リンゴを原材料としたワインのシードルのおすすめを3選に絞って紹介します。

ドメーヌ長谷 ヒカル・ファーム 和シードル・リザーヴ 2021

ドメーヌ長谷 ヒカル・ファーム 和シードル・リザーヴ 2021

紅玉、サンふじとシナノゴールドなどの日本で造られたリンゴや梨をブレンドしたシードルで、やさしい泡立ちとリンゴ本来の味わいを楽しめる果実味や酸味が特徴です。フルーティな辛口で、さまざまな食事と合わせられる一本です。

リュードヴァン シードル エピス ルビー

リュードヴァン シードル エピス ルビー

ホップやフルーツなどで香りを付けたスパイシーなシードルで、爽やかさと飽きの来ない味わいに仕上がりました。ビールの苦みがちょっと苦手という方にも試して頂きたいシードルです。おしゃれな見た目と鮮やかな色合いから、ちょっとしたプレゼントとしてもおすすめです。

9. まとめ

カルヴァドスはノルマンディー地方のカルヴァドス県や周辺の県で造られるアップルブランデーで、ワインに比べてアルコール度数は高いが、リンゴの甘酸っぱさや口当たりの良さからストレートでも飲みやすいです。度数が気になる方は、カルヴァドスと同様リンゴを使ったワイン「シードル」の方が親しみやすいかもしれません。シードルについても飲み比べてみたいと思った方は THE CELLAR online storeをぜひ参考にしてみてください。

※当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。また、まとめサイト等への引用を厳禁いたします。
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吉川 大智

JSA認定 ソムリエ

バーテンダー、ワインバーのマネージャーを経てワインのPRライターに。過去には40カ国200都市の酒場とワイナリーを訪問した経験あり。