アメリカのワインといえば、ナパやソノマに代表されるようなワイン産地がひしめくカリフォルニアワインが有名です。あの誰もが一度は聞いたことがある「オーパス・ワン」はナパ・ヴァレーで造られており、カリフォルニアワインの中でも特別な存在のワインとして、とても人気があります。
カリフォルニアワインと言ったら、そんな高級ワインのイメージが強いかもしれませんが、実際には数多くのワイン産地があり、たくさんのブドウ品種が栽培され、そのスタイルも幅広く多種多様なワインが生産されているという事実を知らない方もきっと多いはず。今回はそんなカリフォルニアワインの基本知識とともにおすすめのワインを紹介させていただきます。
目次
カリフォルニアワインの基礎知識を解説
前述したようにアメリカのワインといえば、カリフォルニアワインの印象が強いかと思いますが、それもそのはずです。
というのも、実際にカリフォルニア州は約5,900ものブドウ栽培農家がおり、アメリカ全体におけるワイン生産量の約80%を占めています。また輸出に限って言うとアメリカの全ワイン輸出量の内、約90%以上を占めています。
世界中でカリフォルニアワインが楽しまれており、新世界(ニューワールド)の代表格と言える産地として君臨しています。
カリフォルニアワインの品種や味わい
カリフォルニアの赤ワインの一般的なスタイル・特徴としては豊かな果実味が挙げられます。
栽培されている主なブドウ品種は以下の4種類です。
・メルロー:柔和なボディと滑らかな食感、コクのある味わいが特徴のフランス・ボルドー原産のブドウ品種です。
・カベルネ・ソーヴィニヨン:カリフォルニア州で最も栽培されている品種であり、最高級のワインもこの品種から造られる、カリフォルニアを代表する品種。凝縮した果実味、高い酸度、そして噛みごたえのあるタンニンが特徴的です。
・ピノ・ノワール:近年冷涼なエリアで栽培が増え続けているブドウ品種。最も優美でエレガントなスタイルの赤ワイン、またはスパークリングワインがこの品種から造られます。
・ジンファンデル:ピノ・ノワールに次ぎ、カリフォルニアで3番目に多く植えられているブドウ品種。色味が濃く、果皮が薄いのが特徴で、出来上がるワインからは濃厚な果実味が感じられる力強い味わいを持ちます。イタリアでは「プリミティーヴォ」とも呼ばれ、主にカリフォルニア州とイタリアのプーリア州で栽培されています。
冷涼な地域で育てるとラズベリーやアメリカンチェリーのような果実味とジューシーな酸が特徴となり、温暖な産地で育てた場合はより黒いフルーツのアロマが強くなりブラックベリーのようなフルーツにコショウなどのスパイスが効いた味わいになります。
カリフォルニアの白ワインのスタイルも凝縮した果実のピュアな味わいと樽の風味が溶け込んでいる滑らかなスタイルが挙げられます。
主な白ワイン用のブドウ品種としては2種類。
・シャルドネ:カリフォルニア州の白ブドウで最も栽培されている品種で、特に樽との相性もよく、味わい深いワインが多く造られています。
・ソーヴィニヨン・ブラン:ナパでは「フュメ・ブラン」とも呼ばれ、樽を用いて醸造されるだけでなく、ステンレスタンクでピュアなフルーツやハーブの香りに包まれるワインが造られます。
カリフォルニアワインを生み出す自然環境
・カリフォルニア州はアメリカ西海岸に位置し、夏場には雨が降らない乾燥した地中海性気候が特徴です。降水量が非常に少ないことから、安定した日照時間が確保できるため、ブドウは完熟しやすく、さらにカビなどの病害の心配もないので、品質が高い健全なブドウからワインが生産されます。
・ブドウ本来の自然な味わいが楽しめるワインが生まれます。
・地中海性気候というと、暖かいイメージがありますが、実際にはカリフォルニアの一部のエリアは寒流の影響や、風、そして霧の影響などもあり、冷涼な気候を持つ産地も存在します。
・そして土壌も多様で、火山性土壌から、粘土、ローム、石灰質、そして砂礫の土壌と、他の産地では見ることができないような多種多様な土壌構成を持っているのも大きな特徴となります。
カリフォルニアワインの主な産地は5つ!特にナパ・ヴァレーが有名
カリフォルニアワインの主な産地は以下の5つが挙げられます。
└北部のノースコースト
└その南のセントラル・コースト
└その東のセントラル・ヴァレー
└東のシエラ・フットヒルズ
└南部のサウスコースト
上記の中でもカリフォルニアの有名なワイン産地として知られているナパやソノマはノースコーストに位置しており、最も著名なワインが生産されるエリアの1つです。
またナパ・ヴァレーでは先ほど挙げたオーパス・ワンやドミナスと言った高級ワインが数多く作られている有名なワイン生産地です。凝縮感と共に緻密さが上品に溶け込むような味わいのワインが多く造られております。
カリフォルニアワインの歴史!パリスの審判でナパのワインが優勝
カリフォルニアワインの歴史は比較的浅く、18世紀にスペインの宣教師がミサ(キリスト教の儀式)用のワインを造り始めたことがきっかけとなっています。
そして1849年のゴールドラッシュを境にヨーロッパからの移民が数多く増え、カリフォルニアの人口が増加し、ブドウの栽培、そしてワインの生産が増えていき、品質の高いワインが造られるようになっていきました。
順調に産地として発展をし続けてきたカリフォルニアにも不遇な時代がありました。それが1922~1933年に施行された禁酒法です。この時代にワインの製造や販売、そして飲酒も取り締まられることとなり、たくさんの畑やワイナリー、そして技術が失われていきました。
禁酒法時代後、徐々に回復の兆しを見せ、現代のカリフォルニアワインのステータスの基盤となったと言っても過言ではない、1976年の「パリスの審判」と呼ばれる出来事がありました。
「パリスの審判」とは1976年にパリで行われたワイン品評会であり、フランスワインとカリフォルニアワインを用意し、審査員がそれぞれをブラインドテイスティングし、順位を決めるというイベントで、その結果、カリフォルニアワインが白ワイン・赤ワイン両部門において第1位に選ばれたのです。
赤ワインの1位がスタッグス・リープ・ワインセラーズ、そして白ワインの1位がシャトー・モンテレーナとなり、どちらもナパ・ヴァレーのワインが栄誉に輝きました。この結果は世界中に衝撃を与え、それ以降1978年にはワイン法が制定され、カリフォルニアワインが本格的に造られる運びとなりました。
カリフォルニアワインの価格帯
高級ワインのイメージが強いカリフォルニアワインですが、実はそのようなワインは一部だけでお手頃な価格のワインが多いのも特徴の1つです。ご自宅で家庭料理と合わせながら楽しんでいただけるようなカジュアルな1,000~2,000円台のワインも数多くあります。
一方で数十万円クラスのカルトワイン(高価で高品質なワインの総称)もナパ・ヴァレーを中心に造られており、価格帯に関しても多種多様なワインが幅広く揃っているのが、カリフォルニアワインの魅力の1つです。
1983年にカリフォルニアワイン法改定に伴うAVA(フランスのA.O.C.のような原産地呼称制度。ただし、品種や栽培、醸造における縛りはない)の制定により、カリフォルニアワインはタイプとして以下の3種類に区分された。
①ジェネリックワイン:複数の品種や産地のものをブレンドして作られる比較的リーズナブルな価格帯のワイン。
②プロプライアタリーワイン:ラベルにワイナリーのに名前やProprietary Blendと記載されている、よりワイナリーや作り手の特徴が味わいに反映されているワイン。リーズナブルなものから中価格帯に属するワインはこのカテゴリーに含まれているものが多い。
③ヴァラエタルワイン:ラベルに記されている単一品種を75%以上使用しているワイン。ナパ・ヴァレーの高価格帯のカベルネ・ソーヴィニヨンなど多くはこのカテゴリーに属している。高価格帯が比較的メインとなる。
カリフォルニアワインとフランスワインの違い
それでは一般的なカリフォルニアワインと日本でも人気なフランスワインを比べてみるとどのような特徴があるのか、少し掘り下げていきます。カリフォルニアワインはその温暖な地中海性気候の影響によってブドウが熟しやすく、より凝縮感に富むような味わい深いフルーツのフレーバーが主体となるようなワインが多いです。
そのため、スタイル的にはフランスワインに比べて(もちろんフランスワインでも例外はあります)、コクがあり、アルコール度数も高めなワインが多くなり、酸味自体も穏やかなものが多く、まろやかな食感を持つようなスタイルが多く見られます。
カリフォルニアワインが人気な理由
そんなカリフォルニアワインがこれほどまでの人気を世界的に誇るのにもいくつかの理由が挙げられます。
└ニューワールドらしい歴史や伝統に縛られず、自由にワインを造ることができる背景があるため、多様なスタイルのワインが存在するから
└降水量が少ないことから、害虫やカビによる被害を受けにくく、ブドウにとって理想的な環境で毎年安定した品質のワインを造ることができるから
└パリスの審判での圧勝で、カリフォルニアワインの美味しさが世界に広まったから
└ここ近年はより産地の個性が見えるテロワール重視のエレガントなワインが増えているから
カリフォルニアワインの当たり年(ヴィンテージ)は?
ワインが生産される年を総じてヴィンテージとも呼びます。ワインはブドウを原料として作られるので、収穫年の天候などの自然環境によってその仕上がりが異なってきます。その中でも、評論家などはブドウにとって天候などに恵まれた年を「当たり年」と呼んだりもします。
評論家の中でも最も有名なロバート・パーカーのヴィンテージ・ガイドによるカリフォルニアワインの当たり年は以下のようになります。これは100点満点の採点方法をとっており、そのうち95点以上(突出して優秀)の評価を受けたヴィンテージとなります。
└カベルネ・ソーヴィニヨン:2001年、2007年、2012年、2013年、2015年、2016年、2018年
└シャルドネ:2015年
当たり年以外のワインは良くないの?そんな風に思うかもしれませんが、そんなことは一切ありません。素晴らしい生産者はブドウにとって難しかった年であっても丁寧に栽培、そして心のこもった醸造を行うことで、ヴィンテージのキャラクターも反映された唯一無二のワインが生まれるのです。
カリフォルニアワインに合う料理は?
カリフォルニアワインはもちろん数多くの料理と合わせて楽しむことができます。
例えばジンファンデルは果実味がとても豊かな赤ワインなので、焼き肉やお好み焼きといった甘いソースとの相性がとても良いです。またスィートスパイスの香りなども強いので、仔羊を使用した料理とも合わせてお楽しみいただけます。
カリフォルニアワインに合う料理をそれぞれの品種ごとにいくつか紹介いたします。
カリフォルニアワインに合う料理
カベルネ・ソーヴィニヨン | 和牛のグリル、熟成チーズ |
ピノ・ノワール | 鴨のロースト、牛肉の赤ワイン煮込み |
ジンファンデル | 焼き肉、お好み焼き |
メルロー | パスタボロネーゼ、仔羊のロースト |
シャルドネ | オマール海老のラビオリ、クラムチャウダー |
ソーヴィニヨン・ブラン | サーモンのセヴィーチェ、ローストチキン |
おすすめのカリフォルニアワイン3選を紹介?
それでは皆様にぜひ楽しんでいただきたいおすすめの銘柄を3本紹介させていただきます
ボンテッラ メルロー 2020
メルローらしい品種特徴とカリフォルニアらしい凝縮感が詰まった赤ワイン。
マイルドなタンニンと赤系フルーツやブルーベリーのフレーバー、そして上品な甘いオークの香りが溶け込み、ベルベッドのような食感がとても心地よい味わいを演出します。
ボンテッラはフランス語で「良き土、良き大地」を意味し、カリフォルニアの土地、テロワールをしっかりと感じるようなワインです。
有機ワインの先駆者による、自然な果実味あふれる充実感ある1本です。
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オーガニックワイン、赤ワイン
ボンテッラ メルロ 2021 *
オーガニックワイン、赤ワインアメリカ/カリフォルニア州通常価格3,718 円 (税込)通常価格単価 あたり残り36個
750ml、メルロ他、ミディアム 750ml、メルロ他、ミディアム
チェリーやベリー系のフレーバーと滑らかなタンニンが甘いオーク香によって引き立ち、ベルベットのようなフィニッシュが心地よい
スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ アルテミス カベルネ・ソーヴィニヨン 2020
1976年のパリスの審判の赤ワイン部門にて1位を獲得したことで一躍有名になったワイナリーの複雑味あふれるカベルネ・ソーヴィニヨンです。
黒系フルーツの熟した甘美な味わいに、バニラやシナモン、ほんのりと甘いハーブの香りも溶け込み、多層的な香りの層が深みを与えます。世界的にも評価が非常に高く、まさにカリフォルニアを代表する偉大な造り手が手掛ける、高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンです。
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赤ワイン
スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ アルテミス カベルネ・ソーヴィニヨン 2020 *
赤ワインアメリカ/カリフォルニア州通常価格13,200 円 (税込)通常価格単価 あたり残り6個
750ml、カベルネ・ソーヴィニヨン他、フルボディ 750ml、カベルネ・ソーヴィニヨン他、フルボディ
ナパ・ヴァレー各地の良質なブドウを使用
シャトー・モンテレーナ ナパ・ヴァレー シャルドネ 2020
こちらのワイナリーも1976年のパリスの審判にて白ワイン部門にて堂々の1位に輝いたワイナリーです。
ナパ・ヴァレーでも涼しいエリアのシャルドネを使用することでそのフレッシュな酸味を味わうことができる一本です。樽の香りも強すぎず、ブドウ本来のピュアな果実味が出るようなワイン作りを伝統的に行っている生産者です。
まとめ
このようにカリフォルニアでは幅広いエリアにて様々なブドウ品種が栽培されており、カジュアルで気軽な味わいのワインから高級ワインまで幅広いレンジのワインが造られています。
そんな奥深いカリフォルニアワインの世界を改めて楽しみたい方にはぜひTHE CELLAR online storeをご覧ください!
この記事を書いた人
岩田渉
1989年愛知県生まれ。同志社大学に在学中、留学先のニュージーランドでワインに魅了され、4年間ワインの勉強に没頭する。
2019年に現職、THE THOUSAND KYOTOシェフ・ソムリエに就任。
◆主な受賞歴
2017年 「第8回全日本最優秀ソムリエコンクール」優勝。
2023年 「第17回A.S.I.世界最優秀ソムリエコンクール」へ日本代表として出場しセミファイナリストに選出(第5位)