2024.05.02

山梨県にあるワイナリーの特徴は?違いやおすすめ10選、ワインもあわせて紹介

 

山梨県は、奈良時代からブドウを栽培し、明治時代にワイン醸造を始めた日本ワイン発祥の地です。今では約100のワイナリーが集まり、日本ワイン生産量の1/4強を占めるなど、ワイナリー数、生産量ともに日本一のワイン名産地です。また、近年では、山梨のワインが世界的なコンクールで受賞するなど、海外でも高く評価されています。
ワイナリーの数が多いからこそ、飲み比べが楽しい産地でもあります。本記事では、産地特性を解説すると共に、県内のおすすめワイナリーやワインも紹介します。それぞれの個性や特徴を紹介しますので、ぜひ、山梨ワインを楽しむ際にお役立て下さい!

山梨県のワインの歴史

日本におけるブドウ栽培の歴史は長く、奈良時代に山梨県勝沼で甲州ブドウの栽培が始まったのが起源と言われています。豊かな山々に囲まれた甲府盆地があり、昼夜の寒暖差が大きい、夏と冬の気温の差が大きい、日照量が多い、年間降雨量が少ないといった内陸性の気候が甲州の栽培に適していたと考えられます。
一方、ワインが造られたのは、明治時代になってから。1870年代に甲府でワイン造りが始まり、1877年には、日本初の民間ワイナリー「大日本山梨葡萄酒会社」から高野正誠と土屋龍憲がブドウ栽培とワイン醸造の勉強のためにフランスに派遣され、彼らの帰国後、山梨県でのワイン造りが本格化していったのです。
その歴史は脈々と受け継がれ、今では日本ワインの年間生産量の約26%を占める、最大規模の生産地を誇ります。

山梨県のワインの産地とその特徴

山梨県のワイン造りの大半は、甲府盆地周辺で行われており、大きく4つ地域に分けられます。

  • 甲府盆地東部:甲州市、山梨市、笛吹市を含むエリア。日本ワイン発祥の地で、山梨のワイナリーの大半が集中する、県を代表するワイン産地。傾斜地が多く、山から流れる複数の河川により形成された扇状地が入り組むことで、斜面の向きや土壌環境が様々存在するのが特徴。甲州ブドウの主要産地だが、ヨーロッパ系品種の栽培も進む。
  • 甲府盆地中央部:甲府市を含むエリア。ワイン産地の中では珍しい盆地の底部に位置する。土壌は水分の多く含まれる粘土質なので、ブドウ栽培は水はけのよい場所を選んで行われている。県内他地域に比べ、平均気温が高く、収穫時期が早め。
  • 甲府盆地北西部:北斗市、韮崎市、甲斐市を含むエリア。2000年頃から開拓が進み、新規ワイナリーが増えている注目が集まる場所。県内他地域よりも標高の高いエリアにも畑が広がっているのが特徴。標高が高いエリアほど、気温や降水量が低い一方、日照量に恵まれる傾向にあり、ヨーロッパ系品種のブドウが多く栽培され、評価も高い。
  • 甲府盆地西部:背後に南アルプスを背負う形の広大な扇状地で、甲州の栽培がメイン。

山梨県のおすすめワイナリー10選

ここからは、山梨県のおすすめワイナリーを地域毎に解説していきます。

甲府盆地東部にあるおすすめワイナリー

以下で詳細説明するワイナリー以外にも、98wines、本坊酒造 マルス山梨ワイナリー、サントネージュワインといった地域を代表するワイナリーが多数存在します。

中央葡萄酒

甲州市勝沼町にある、1923年創業の勝沼を代表するワイナリーの一つです。
世界に通用するワイン造りを目指し、日本固有のブドウ品種「甲州」を世界に認知させた立役者としても有名。世界最大級のワインコンクール「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード 2014」では、日本ワイン初のゴールドメタル及びリージョナルトロフィーを受賞し、以降6年に亘ってゴールドメダルを受賞する程の実力を持ちます。ワインは日本国内での消費に留まらず、多くの国に輸出されており、世界を舞台に活躍する注目のワイナリーです。

機山洋酒工業

甲州市塩山地区にある家族経営の小さなワイナリーです。自家農園のブドウも契約農家のブドウも原料は全て地元産で、地域に根差したワインを目指し、丁寧な造りを行っています。
多くのファンを擁する人気のワイナリーですが、生産量が少なく販売と同時にすぐに完売してしまうほど・・・ワイナリーの魅力、ワインの美味しさの秘訣については、ワインコラム(→こちら)をチェックして下さい!

ダイヤモンド酒造

甲州市勝沼町にある家族経営のワイナリーです。1939年に、近隣の農家が集まって自家消費用にワインを造りだしたのが始まりで、その後株式会社化し、現在に至ります。
現当主は3代目の雨宮氏。大学を卒業後フランスに渡り、ボルドー大学や、ブルゴーニュの造り手であるシモン・ビーズなどの著名生産者の元でワイン醸造を学んだ人物です。
勝沼や穂坂(甲州盆地北西部、韮崎市内)にある契約農家からの買いブドウのみを使ってワイン造りを行うスタイルで、日本でも指折りのマスカット・ベーリーAの赤ワインを送り出す、山梨県随一のワイナリーです。
雨宮氏のワイン造りに対する考え方については、ワインコラム(→こちら)にて詳細記載していますので、ご参照下さい!

くらむぼんワイン

甲州市勝沼町祝地区にある、1913年創業の老舗ワイナリーです。祝地区は甲州ブドウ発祥の地とも言われているだけあり、くらむぼんワインも甲州ブドウを使ったワインに注力しています。
尚、「くらむぼん」という名前は、宮沢賢治の童話『やまなし』で蟹が話す言葉に由来しており、人間と自然の共存、科学の限界、他人への思いやりを童話で伝えた宮沢賢治に共感し、名づけられたそう。自社農園では、2007年から基本的に無肥料、不耕起、不除草、化学農薬も殺虫剤も不使用の自然栽培を実施。また、醸造の過程でも、自然な造りを実践されています。
歴史を感じさせるワイナリーは訪問自由で、テイスティングルームやワインショップも併設。登録有形文化財にも指定されている築130年の伝統的な母屋にはお座敷があり、見学後休憩することも可能なので、建物そのものも味わいたいところです。
くらむぼんワインの野沢氏のインタビューコラム(→こちら)も必読です。

奥野田葡萄酒

甲州市塩山地区にあるワイナリー。東京農業大学で微生物学を学んだ後、中央葡萄酒に入社した中村氏が、26歳の若さで独立し、以降30年以上に亘ってブドウ栽培とワイン醸造を続けています。小さいワイナリーだからこそ、一つ一つの工程が丁寧。「ワイン造りは質の高いブドウから」という考えから、自然に負荷をかけずに高品質なブドウを栽培し、ミネラル感のあるワイン造りを実践されています。
2022年にリニューアルしたワイナリーではテイスティングも楽しめ、ブドウ畑を散策しながら栽培ロジックの説明を聞いたり、ワインセラーを見学しながら醸造のこだわり等について学んだりすることができます。ぜひ、ワインコラム(→こちら)読んで、ワイナリー見学を楽しんで下さい!

Kisvinワイナリー

甲州市塩山地区にあるワイナリー。ブドウ農家3代目の荻原氏が2001年より家業を継いでブドウ栽培を開始し、2005年にブドウ栽培の専門家集団Team Kisvinを立ち上げ、2013年に自社醸造所を建設し本格始動した新進気鋭のワイナリーです。
カリフォルニアやブルゴーニュで修行を積んだ斎藤女史を醸造責任者に迎え入れ、荻野氏とタッグを組んでワイン造りが行われています。造られるワインのクオリティが非常に高く、都内の星付きレストランやホテル、国際線ファーストクラスで採用されるなど実力は折り紙つき。また、世界最優秀ソムリエでマスター・オブ・ワインの故ジェラール・バッセ氏が2017年にワイナリーを訪れワインを試飲し、自身のSNSで絶賛したことで、世界中で大きな話題となりました。今、世界的にも注目の集まるワイナリーです。

シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー

甲州市勝沼にある、地域を代表するワイナリーです。1877年に現在のメルシャンの礎となる、日本初の民間ワイン醸造所「大日本山梨葡萄酒会社」が設立され、戦後1949年に「メルシャン」ブランドができました。世界に認められる日本のワイン造りを目指し、1966年には日本初となる国際ワインコンクールでの金賞を受賞、その後も数々の賞を獲得しています。
勝沼ワイナリーでは、ブドウ畑や地下セラーの見学ができるワイナリーツアーがあります。また、ワイナリー限定ワイン等のテイスティングやワイン資料館もあり、見応えのある展示が楽しめます。

甲府盆地中央部にあるおすすめワイナリー

以下紹介のワイナリー以外にも、サドヤなど、地域を代表するワイナリーが複数存在します。

シャトー酒折ワイナリー

甲府市にある、ワイン輸入会社が1991年に設立したワイナリーです。輸入業で培ったネットワークを活かし、最新のワイン製造技術を得ている他、各国から導入した設備を完備しています。ワインは日本固有品種の甲州やマスカット・ベーリーAを中心に製造され、世界に通じる日本のワイン造りを目指しています。
ワイナリーは甲府盆地を見渡す高台にあり、ワイナリーツアーの受け入れもあります。

甲府盆地北西部にあるおすすめワイナリー

以下で詳細説明するワイナリー以外にも、江井ヶ嶋酒造 山梨ワイナリーや能見園 河西ワイナリーなど、地域を代表するワイナリーが複数存在します。

サントリー 登美の丘ワイナリー

甲斐市にあるサントリーが運営するワイナリーで、約150haの広大な敷地に広がります。
1909年にブドウ栽培を始め、100年以上の歴史があります。登って美しい丘=「登美の丘」と呼ばれていたのが、ワイナリー名の由来だそうで、ワイナリーの丘からは富士山が見え、眼下には甲府盆地が広がる絶景が楽しめます。
ブドウ畑を散策しながらブドウ栽培について説明を聞いたり、熟成庫を見学しながらワイン醸造のこだわりについて学んだりできるツアーが人気です。また、絶景を眺めながら、テラス席でテイスティングすることも可能なので、知識を深めつつ、ゆったりと過ごすことができます。

ドメーヌ・デ・テンゲイジ

北斗市にあるワイナリーで、自家農園はワイナリー隣接地と車で15分ほど離れた韮崎市上山の2か所に跨ります。

「未来につなぐ、ほんまもんのワイン。」をいうヴィジョンを持ち、2016年創業、2017年にワイナリーをオープンした、新しい造り手です。自社農園では、全てヨーロッパ系品種を栽培しています。また、契約農家からの買いブドウは、農家毎に仕込み、「農家シリーズ」として販売されています。

ワイナリー開設までの道のり、ワイン造りに対する想いについては、ワインコラム(→こちら)を読んでみて下さい!

山梨ワイナリーのおすすめワイン3選

最後に、山梨ワイナリーのおすすめワイン3選を紹介します。

中央葡萄酒グレイス グリド甲州 2022

創業100年超の勝沼を代表するワイナリー、中央葡萄酒が造る甲州。グリ・ド(Gris de)とは、フランス語で灰色という意味で、灰色ブドウと呼ばれる甲州ブドウの果皮の特徴を表現したワインです。洋梨やオレンジ、和柑橘と言ったフレッシュでフルーティーな果実香に、お花やスパイスの香りも感じ取られます。まろやかな口当たりで爽やかな酸味と旨味が感じられる辛口ワインで、普段の和食を幅広く受け止める安定感のある味わいです。
2012ヴィンテージが英国デカンター誌主催の「アジア・ワインアワード」で、ゴールドメダルとリージョナルトロフィーを受賞したこともあり、海外の友人に日本のワインを紹介したい時にもおすすめです。

機山洋酒工業 キザン・スパークリング・トラディショナル・ブリュット 2021

機山洋酒工業が造る、甲州100%のスパークリング・ワインです。
多くのファンを擁する人気のワイナリーで、生産量が少なく、なかなか手に入れにくいワインが多いですが、その中では比較的安定して入荷しているのがこちらの泡。シャンパーニュと同じ製法の瓶内二次発酵で造られており、甲州の爽やかな果実の香りと瓶内二次発酵由来のトースト香が感じられ、芳醇でありながらクリアな透明感がある、絶妙なバランス感が楽しめる一本です。

サントリー登美の丘ワイナリー 登美 赤 2017

サントリー登美の丘ワイナリーのフラッグシップワインです。プティ・ヴェルド、メルロ、カベルネ・ソーヴィニョンのブレンドで、ブラックベリーなどの黒系果実の香りとスパイスや杉といった樽香のバランスがよく、重層的で複雑味のある風味を楽しめます。
気品を感じる逸品なので、お祝い事や重要なディナーの時に開けたい一本です。

まとめ

いかがでしたか?山梨県は日本で初めてワインが造られた土地で、日本固有品種を使用したワインも沢山作られている日本が誇るワイン産地です。
見学ツアーやワイナリーでのテイスティングを行っている生産者も多く、実際に山梨まで足を運んで、何軒かワイナリーを周って比較試飲しても楽しいと思います。ザ・セラーでは生産者にフォーカスを当てたコラムを掲載していますので、ぜひご参考になさってください。

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この記事を書いた人

山本 暖子

山本 暖子

WSET認定 Level4 Diploma
JSA認定 ワインエキスパート
学生時代の留学や総合商社勤務時の海外駐在などを通じ、世界各国のワインやその文化に魅了される。
現在は瀬戸内海に浮かぶ大三島で農的暮らしを営みながら、カーヴ・ド・リラックスのECサイト運営やコラム執筆など、ワインに関する情報発信に力を注いでいる。