1. エシェゾーの基礎知識

まずは『エシェゾー』について解説していきます。

エシェゾーの特徴

エシェゾーで使われるブドウ品種は、ピノ・ノワールのみです。深いルビー色のワインで、スパイス香やプルーンなどの果実味が特徴とされています。最初の口あたりは生き生きとしたアタックで、ソフトなタンニンが感じられます。
若いうちは、バラやスミレ、チェリーの香りがしますが、熟成すると、なめし皮や毛皮、茸の香りに変化していきます。
ヴィンテージによっても異なりますが、4～5年以上熟成させた方が楽しめるワインです。
長い余韻と複雑な味わいを持ち、長期熟成に耐えられるのがエシェゾーのワインの特徴です。

エシェゾーの産地

ワイン名でも使われるエシェゾーは、フランス・ブルゴーニュ地方のコート・ド・ニュイにあるフラジェ・エシェゾー村にある畑の名前でもあります。

フラジェ・エシェゾー村は、北にシャンボール・ミュジニー村、南にヴォーヌ・ロマネ村、東にヴージョ村に接する恵まれた立地です。ただ、フラジェ・エシェゾー村はAOCの規定で『村名ワイン』や『プルミエ・クリュ』が名乗れないために隣の『ヴォーヌ・ロマネ村』としてラベルに表記されています。よってフラジェ・エシェゾー村は『エシェゾー』と『グラン・エシェゾー』の二つのグラン・クリュしか名乗れない特別な村です。

マニアックな話にはなりますが、
『Les Beaux Monts』、『Les Rouges du Dessus』、『En Orveaux』はヴォーヌ・ロマネの有名なプルミエ・クリュですが、
実はフラジェ・エシェゾー村のプルミエ・クリュです。

2つのグラン・クリュ(特級畑)

フラジェ・エシェゾー村には、『エシェゾー』、『グラン・エシェゾー』の2つのグラン・クリュ(特級畑)があります。
グラン・エシェゾーの栽培面積は8.84ha、エシェゾーの栽培面積はグラン・エシェゾーの約4倍の35.77haです。

『エシェゾー』
土壌の特徴：粘土石灰質の表土に、小石や泥、黄色の泥灰土が複雑なモザイク模様のように広がっている。
エシェゾーの区画のほとんどはコンブ・ドルヴォーの麓に位置しています。コンブとは昔は川が流れていたとされるが、干上がってしまった谷のことです。
エシェゾーはコンブ（谷）の為、石灰岩と泥灰岩の混合物が集まって非常に複雑な土壌構成となっています。

『グラン・エシェゾー』
土壌の特徴：粘土質を含む石灰岩が均一に広がる、標高約250mの日光がよくあたる東向きの斜面。
エシェゾーの区画と比べて斜面下部にあり、粘土が多い分力強くリッチに仕上がります。
エシェゾーは斜度が3度の斜面にあり、ヴォーヌ・ロマネ村のリシュブールやロマネ・コンティの15度以上の斜度と比べると緩やかです。

エシェゾー、グラン・エシェゾーは、1937年7月31日にA.O.C.グラン・クリュに認定されました。
グラン・エシェゾーのGrands＝『偉大』という意味ではなく、は元々のエシェゾー（Echezeaux du Dessus）という区画よりLes Grands Echezeauxが面積的に大きかったためこの名が付いたと言われています。
エシェゾーは1855年当時の面積はわずか3ヘクタールでしたが、周りの区画を吸収して拡張されてきました。
グラン・エシェゾーの区画は何世紀にも渡り拡張していません。

11のリューディー(小区画)

エシェゾーは、さらに11のリューディー(小区画)に分けられます。

１. レ・ボーモン・バ(Les Beaux Monts Bas)
２. レ・シャン・トラヴェルサン(Les Champs Traversins)
３. クロ・サン・ドニ(Clos St Denis)
４. レ・クリュオ/ヴィーニュ・ブランシュ(Les Cruots ou Vignes Blanches)
５. エシェゾー・デュ・ドシュ(Echezeaux du Dessus)
６. レ・ロアショス(Les Loachausses)
７. アン・オルヴォー(En Orveaux)
８. レ・プレレール(Les Poulailleres)
９. レ・カルティエ・ド・ニュイ(Les Quartiers de Nuits)
１０. レ・ルージュ・デュ・バ(Les Rouges du Bas)
１１. レ・トゥルー(Les Treux)

中でも以下の3区画は、日当たり・水はけなど良質なブドウを育てる条件に優れています。
■エシェゾー・デュ・ドシュ
■アン・オルヴォー
■レ・プレレール

エシェゾー最高の生産者の一人、DRC（ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ）はレ・プレレールというグラン・エシェゾーの真上の区画とクロ・サン・ドニに畑を持っています。

エシェゾーの歴史

フラジェ・エシェゾー村は、元々はフラジェ村という名前でその由来はこの村の土地の所有者だった「フラヴィウス(Flavius)」にあるとされています。
12世紀にシトー派修道院が畑を開拓し、1886年3月3日にグラン・クリュのエシェゾーの名前と統合され、フラジェ・エシェゾー村が誕生しました。

2. エシェゾーの代表的な生産者

エシェゾーはドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティが最大面積である約5haの畑を所有しています。
その他の代表的な生産者は以下の通りです。

■モンジャール・ミュニュレ
■エマニュエル・ルジェ
■ジャン・グリヴォ
■アンヌ・グロ
■ビゾ
■ジョルジュ・ミュニュレ・ジブール
■セシル・トランブレイ
■メオ・カミュゼ

3. エシェゾーに合う料理

力強い味わいのグラン・エシェゾーには、子羊や和牛など脂質が豊かな料理がよく合います。
（・・・子羊の煮込み、ブッフ・ブルギニヨン、孔牛のクリーム煮など。）
繊細なエシェゾーには引き締まった赤身肉やさっぱりとした料理を合わせるのが良いでしょう。
（・・・鴨のオレンジソースや馬刺し、北京ダックなど。）

4. おすすめのエシェゾー３選

ニュダン エシェゾー 2021

ニュダンは2005年からエシェゾーを耕作、醸造しています。樹齢50年を越える古樹から造られるワインで、ラズベリー、ダークチェリーの果実味、スパイシーなニュアンス、長い余韻が感じられます。

ルネ・ブーヴィエ エシェゾー 2021

以前「5人の有望な若手生産者」にも選ばれたことある実力派ドメーヌ。畑ではビオロジック栽培を実施し、酸化防止剤の使用も必要最小限に抑えブドウのピュアな味わいを表現しています。
こちらはエシェゾー村でも北にある「アン・オルヴォー」という区画の樹齢60年以上の古木を使用しています。エシェゾーらしい力強さと複雑味を兼備した熟成が楽しみな1本です。

ドメーヌ・ブシャール・ペール・エ・フィス エシェゾー アン・オルヴォ 2020

ブルゴーニュ地方で最大規模を誇るドメーヌであるブシャール・ペール・エ・フィス。最新の醸造設備の投入や環境に配慮した農法の認証取得などを積極的に行っています。
こちらも「アン・オルヴォー」の区画から採れるブドウを使用。赤い果実とスモーキーなアロマのニュアンス。濃密で繊細な味、ビロードのような気品のある口あたりが特徴です。

5. まとめ

『エシェゾー』は、グランクリュならではの多層的なアロマと繊細な味わいを併せ持つ高級赤ワインです。
『グラン・エシェゾー』は、力強く、味わいの構成がしっかりしていて、深みと複雑さを持っています。
両方とも若いうちはバラやスミレ、チェリーの香りを持ち、
熟成するにつれてなめし皮や毛皮、茸の香りがお楽しみいただけます。

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