荻野夫妻は以前、東京のレストランで働く同僚だった。仕事柄、ワインの勉強としてボルドーの格付けシャトーを覚えたり、周りの大人達から薦められて、名の通ったワインを飲んだりもした。確かに、有名どころのワインは美味しいが、体で納得する味わいではなかった。ところがある日、ヴァン ナチュールを初めて飲んだ時に衝撃が走った。お出汁を飲んだみたいに体に沁み込む感じがして、「ワインって本当に美味しい!」と心底思ったのだ。

当時はまだ日本ワインブームの始まりと言われる時期で、日本でヴァン ナチュールを造っているところは少なかった。日本では無理だと言われていたのだ。そうだとしても、自分達も日本でやってみたい・・・最初にヴァン ナチュールを造りたいと言い出したのは貴博さん。朋子さんもすぐに賛同した。15年程前の話である。

その後、山梨の中央葡萄酒株式会社(グレイスワイン)で修行を重ね、フランスのボジョレーやアルザスのヴァン ナチュール生産者の元でも経験も積み、今の場所に居を構えることになる。その間、日本のヴァン ナチュール先駆者達も歩みを進めていた。ご夫妻は、金井醸造場のマスカット・ベイリーAを飲んだ時、日本にもこんな考えを持って美味しいワインを造り上げている人がいるなんて・・・!と衝撃を受けたそうだ。自分達もやらなきゃという思いを強くしたと語る。
畑には、7年目を迎えるピノ・ノワール、シャルドネ、リースリングと、その後に植えたシュナン・ブラン、ガメイが育っている。また、ワイン用ブドウのみならず、シードル用のリンゴも植わっている。環境に優しい栽培手法を徹底していることもあり、ブドウの木の成長はゆっくりだ。去年、漸く、収穫らしい収穫ができたと言う。今年も順調に育っているそうで、楽しみだ。

ご夫妻はブドウを余すことなく使ってワインにしたいと考え、茎も含む全房で仕込んでいる。農薬を使用したブドウの委託醸造も請け負っているそうだが、醸造を進める中で、自社の無農薬ブドウの方が農薬を使ったブドウよりも底力があると気付いた。その様子を目の当たりにして、自分達のやり方に納得したと言う。
丁寧に育てた果実に、追加で何かを加えるということはしない。収穫から瓶詰めまで亜硫酸を添加せず、野生酵母で醸造を行っている。シードルも野生酵母で醸して、メトード・アンセストラル製法(発酵の終盤で瓶詰めし、瓶内で発酵を完了させる)で製造しているそう。
生食用ブドウで造るワインはイマイチだという風潮もあるが、お2人は真っ向から反論する。シャルドネやピノ・ノワールだけがワインではない。デラウェアやマスカット・ベイリーAといった日本の生食用のブドウで造るワインはトップクラスに美味しいし、日本人に寄り添うデイリー・ワインとして最高だ。
じめっとむわっとする季節の到来ですね。この国に住んでいたら避けては通れない季節です。
折角日本にいるのだから、この季節をネガティヴに捉えるのではなく、楽しんでみたほうが、精神衛生上も良いですよね!
そしてこの気候だからこそ生まれてくるワインを、この気候の中で楽しむ。それこそがワインの楽しみ方の本質ではないでしょうか。
ということで、今回ご紹介するワインは5本すべて日本ワインです。
この季節に楽しむということを考えると、当然ですが濃くて渋くて凝縮感があって、というワインではないですよね。
すっきりしていて爽やかで、体に染み渡るような旨味も感じさせてくれる、THE日本ワインというものを飲みたいですよね。
白ワイン4種とロゼ1種です。
各ワインの説明↓
・レヴァンヴィヴァン イナズマ 2024
購入したりんごと洋なしを破砕し、化繊の袋に入れ空圧式のメンブレンプレス機で強い圧力で一気に搾汁。
品種構成はサンふじ 44%、シナノゴールド 30%、ラフランス 11%、紅玉 9%、秋映 6%今回初めて洋なしを使用。
洋なしをブレンドすることで例年リリースしている「みずいろ」よりも香りを感じ、ラフランス由来のとろけるような甘みも感じ、やわらかいガス圧が心地よいワインです。
・豊丘西尾ヴィンヤード ラ トラディション ロゼ 2023
色合いは昨年のロゼよりもさらに濃く、フルーツやスパイスの濃い香りと共に酸の伸びが続きます。タンニンよりも酸と旨味が前面に出ているワインになりました。
ピノ・ノワールが好きな方に飲んでいただきたいロゼワインです。
・ベルウッドヴィンヤード コレクションスペリオール 甲州 2024
Collection Superieure は、厳選したブドウで造るスペリオール(上級)シリーズです。
ブドウのポテンシャルを引き出す醸造を行ったのち、自然と澱が下がるのを待ち、上澄みを無濾過でビン詰めした辛口ワインです。
・熊本ワイン 菊鹿シャルドネ NV
ステンレスタンクのワインと樽熟成のワインをブレンドすることにより、やわらかさと深みを持たせました。凝縮感のある味わいをお楽しみいただけます。
・駒園ヴィンヤード クリュニシノ ソーヴィニヨンブラン 2023
品種特性の華やかな香りと果実味豊かな味わいをお楽しみ頂ける爽やかな飲み口の白ワインです。
このワイン達を飲んで、元気に夏を迎えましょう!
是非お見逃しなくご利用ください。