2023.11.27

アルザスワインの特徴を紹介!製法からリースリング、ミュスカもあわせて解説

 

ライン川と挟んでドイツと国境を接する「アルザス」。生産されるワインの90%以上は白ワインです。品種や気候の多様性から、アルザスは「個性的」と表現されることが多く、それだけ魅力があり、世界中のワインラバーから好まれている場所でもあります。今回はアルザスワインの特徴や代表的なブドウ品種を解説し、おすすめのアルザスワインも3本に厳選して紹介していきます。

 

アルザスワインの基本

山や川に囲まれ、自然に恵まれたアルザスの領有権は、かつてフランスとドイツを行ったり来たりしていました。ここでは多様なテロワールがあり、ドイツの歴史的文化が根付いているアルザスの基本的知識について解説していきます。

アルザス地方とは

アルザス地方は、ドイツとフランスの国境に位置する地方で、山や川に囲まれた美しい景観を持ち、フランスで最も小さな地方として知られています。フランス最北に位置するため、全体的に冷涼な気候ですが、南北で170kmあるため、北と南で気候条件が変わるのも特徴です。南北に連なるヴォ―ジュ山脈が西からの風を遮断する影響で、アルザス地方はフランスのなかでも降雨量が少ないです。そのため、隣合う畑同士でも土壌が違うというケースが珍しくありません。土壌に関しては、「モザイク」と呼ばれるほど多様です。
アルザスの北部は冷涼かつ湿潤で、中部は全体的に重い土壌で構成されており、急斜面で南向きの畑が多いのが特徴です。南部の方はおだやかな丘陵が多く気温も比較的温暖です。

また、アルザスは乳酸醗酵させた塩漬けキャベツの「シュークルート」や、肉と野菜を白ワインで蒸し煮にした「ベックオフ」、薄焼きピザの「タルトフランベ」といった郷土料理が有名なことでも知られています。世界中で食べられているウォッシュチーズの「マンステール」もアルザス地方の名産チーズです。

アルザスワインの特徴

アルザスといえば辛口の白ワインのイメージが強いですが、地域によっては甘口の白ワインやデザートワインなども造られています。場所によって土壌に含まれる成分が全く異なるため、個性的なワイン造りが盛んです。また、アルザスワインは細身の形状をしたボトルが多いことも特徴で、フルート型(またはアルザスが型)と呼ばれており、ドイツ産のワインにも採用されています。フランスワインでありながら、隣国であるドイツの文化も感じられるワインです。細長い形状なのは、冷水を張ったバケツにたくさん入るから、またはすぐ冷やすことができるからなど諸説あります。

アルザスワインの製法

アルザスワインはAOC(Appellationd’OrigineContrôlée=原産地統制呼称制度)によって使用できるブドウ品種と醸造方法の規定があります。
例えば、アルザス・グランクリュはアルザスワインの生産量としては全体の4%ですが、非常に高品質なワインが造られることで世界中から支持を受けています。
現在51の区画名(リュー・ディ)があり、原則として指定された4つの品種(ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、リースリング、ミュスカ)を単一で使用するかブレンドすることが認められています(※例外もあり)。ただし、収穫はすべて手摘みが義務付けられており、アルコール度数なども厳しく決まっています。
そのほか、フランス国内で最も消費されるクレマン(瓶内二次発酵のスパークリングワイン)の「クレマン・ダルザス」も有名です。

アルザスワインの代表的な品種

アルザスワインは全体の90%以上が白ワインです。単一品種で造られることが多いため、今回はアルザスの代表的な品種として、リースリング、ミュスカ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリの4品種を紹介していきます。

リースリング

リースリングはアルザスで最も多く栽培されている品種で、世界最高のリースリング産地とも言われています。高級白ワインを生み出す品種で、アルザスでは19世紀後半ごろから栽培が始まりました。辛口から甘口までさまざまなバリエーションがあり。辛口の場合は白い花や洋ナシ、トロピカルフルーツなどの華やかな香り、品のある酸味、鉱物のようなミネラルを強く感じることができます。甘口は爽やかでフルーティな甘みのあるものから、ハチミツのような濃密でとろけるような甘みのものまでさまざまです。

ミュスカ

アルザスでミュスカ(Muscat)というと、ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン、ミュスカ・ローズ・ア・プティ・グラン、ミュスカ・オットネルの3品種が使用できます。
心地よい辛口にも、みずみずしさを感じられる上品な甘口にもなる品種です。そのほか、モスカート・ダスティ、モスカテル、マスカット・オブ・アレキサンドリアなど、「マスカット・ブラン」として似た品種が多くあるのも特徴です。

ゲヴュルツトラミネール

「ゲヴュルツ」とはドイツ語で「スパイス」という意味をもち、気品あふれるライチのような香りが特徴で、力強いアロマを楽しめる白ワインのアロマティック代表格の品種です。
花のような甘いアロマがありつつもドライな辛口で、後味に微かに塩味を感じることができます。そのため、アルザスのゲヴュルツトラミネールはアジアン料理やエスニック料理などとの相性がとても良いと言われています。

ピノ・グリ

赤ワイン用の黒ブドウ品種が突然変異した白ブドウ品種がピノ・グリです。果皮は灰色がかった紫色をしています。グレープフルーツやトロピカルフルーツのような香りに、おだやかな酸味、コクのあるオイリーな口当たりを楽しめるのが特徴で、甘口ワインやスパークリングワインも造られます。親しみやすい飲み口のワインが多く、白身魚や貝、カニといった魚介類を使った魚料理との相性は抜群です。

おすすめのアルザスワイン3選

ここではおすすめのアルザスワイン3本を紹介します。アルザスの代表的な品種リースリングと近年注目されているピノ・ノワールからセレクトしました。ぜひご参考にしてください。

トゥルクハイム リースリング 2021

昔から上質なアルザスワインの産地として知られている「トゥルクハイム」で造られているリースリング。柔らかく伸びのある綺麗な酸味が魅力で、リースリングのおいしさを教えてくれる上品な味わいです。価格帯も2000円代とリーズナブルなので、まずはこの1本からはじめてみるのもおすすめです。


ジュリアン・クライン ハーネンベルグ ピノ・ノワール 2020

自然派のマエストロがこだわりぬいた製法で造るビオロジック&ミニマムな醸造で仕上げられた上質なピノ・ノワール。除梗(じょこう)も、酵母添加も、添加物も、清澄もなにもないオーガニックワインです。熟した果実の味わいとタンニンの渋みのバランスがよく、余韻も長く続きます。近年アルザスのピノ・ノワールは注目を浴びているので、ぜひ試してみてください。

ヴァインバック リースリング キュヴェ・コレット 2020

生体力学農法とも言われるビオディナミを導入しているヴァインバック。リースリング特有のフレッシュな酸味と自然な上品さを保ちつつ、リッチで重厚感のあるアルザスワインです。ブイヤベースの魚料理や、軽いソースで仕上げた鶏肉料理などとの相性が素晴らしく良いです。


 

まとめ

アルザスは過去ドイツ領だった場所なので、ドイツの文化がワインにも残っています。雨が少ないためワイン造りに適していますが、隣同士の畑でも土壌が全く違うというケースも珍しくありません。生産者ごとに個性が出ているので、さまざまな味わいのワインが楽しめるのがアルザスの魅力。カーヴ・ド・リラックスではアルザスワインのラインナップが豊富にありますので、飲み比べてみたい方はぜひオンラインサイトをご覧ください。

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この記事を書いた人

吉川 大智

吉川 大智

JSA認定 ソムリエ

バーテンダー、ワインバーのマネージャーを経てワインのPRライターに。過去には40カ国200都市の酒場とワイナリーを訪問した経験あり。