2024.03.01

バローロとは?ワインの特徴や産地から歴史、人気の理由までをわかりやすく解説

 

イタリアを代表する赤ワインの一つ「バローロ」。この伝統ある産地で造られる優美で品格を感じる味わいは、世界中のワインファンに大きな悦びを届け続けてきました。1980年代には、当時の若手生産者たちによる試みが伝統的な味わいに新境地をもたらし、産地として更に知名度を高めていきます。
しかしながら、人気であるがゆえに様々な種類や生産者が存在し、選ぶ前に少しだけ知識があったほうが好みの味わいに近づきやすいワインでもあります。
本記事では、バローロの基本知識やおすすめのワインを紹介していきます。

イタリアワイン「バローロ」の基礎知識

バローロは、イタリア北西部のピエモンテ(山の麓の意)州で造られる赤ワインで、すぐ近くには白トリュフで名高いアルバの街があり、その他キノコやジビエ、チーズなどの食材も豊富で秋から冬にかけて美味しい季節が続きます。
イタリアワインの格付けでは最高位のD.O.C.Gに1981年から認定されている赤ワインで、長期熟成に向くとされ、ご当地イタリアではその風格溢れる味わいも重なって「王のワインにして、ワインの王」とも呼ばれています。※ちなみに同じ州のバルバレスコ(Barbaresco)が、よりしなやかで繊細な味わいから「ワインの女王」と呼ばれています。

生産区域はランゲ丘陵(Langhe)にある11の村に広がっており、生産される場所によって個性が明確に違うことも特徴です。

中でも5大産地と呼ばれる「ラモッラ」「バローロ」「モンフォルテ・ダルバ」「セッラルンガ・ダルバ」「カスティリオーネ・ファレット」は上質なワインを多く生産しています。

「バローロ」という名前の由来はイタリア語ではなく、周りに比べて標高が低いことから、「bas reul」(低い場所)という昔のケルト語が由来とされています。
ブドウ品種はネッビオーロ100%使用、最低でも38か月熟成(リゼルヴァは62か月)、アルコール度数13%以上など厳しい基準で品質が保たれています。

バローロの品種と味わいの特徴

バローロは、ネッビオーロ(Nebbiolo)と呼ばれるブドウ品種を100%使用しています。大変晩熟なブドウであり、収穫期の10月にはこの地は晩秋の霧で包まれることから、名前の由来は現地で「霧」を意味する「Nebbia : ネッビア」からきているとされています。
世界屈指の長命ワインを造るブドウとして知られており、育った環境にとても敏感な品種でもあります。
色合いは比較的明るめなのですが、酸味、渋みともに力強く、まだワインが若いうちは固い印象を受けることも。よって、時間をかけてワインと向き合うことで、(香りがより引き出され、味わいも調和してくるので)真価を感じやすいワインとも言えます。
長く瓶熟をすることで様々な要素が溶け合い、乾燥した花やドライフルーツ、スパイスや木質のニュアンスが重なり、またタンニン(渋味)と酸味も柔らかになって味わいにも深みと奥行きを感じるようになります。育った場所で個性は異なりますが、バローロは一般に熟成によって力強さと繊細さが調和した深みのある味わいを特徴としています。

バローロを生み出す生産地

バローロはランゲ丘陵にある11の村で生産されており、村によって個性が異なるため多種多様な味わいが楽しめることも大きな魅力の一つです。
11の村の中には5大産地とされる「ラ・モッラ」「バローロ」「モンフォルテ・ダルバ」「セッラルンガ・ダルバ」「カスティリオーネ・ファレット」が存在します。今回はその中でも象徴的な3つの産地について特徴を見ていきます。

産地名 特徴
ラ・モッラ 5大産地の中で最も繊細で瑞々しく、エレガントな味わいが期待できる。豊かな果実味も特徴で、比較的若いうちから楽しめて大変親しみやすい この地区の入門ワイン。
バローロ 全体のバランスに優れたものが多く、その名の通りこの地の基準になる味わいを見せる。熟成によりさらに陰影のある、華やかで複雑な奥行ある味わいに発展する。
セッラルンガ・ダルバ 土壌に含まれる鉄分はブドウの光合成を促進し、ワインは時間をかけてそのポテンシャルを発揮する。骨格があり力強く、長期熟成向きの偉大なワインを多く産出する。

バローロの歴史と魅力

今でこそバローロは世界でも屈指の赤ワイン産地として名を馳せていますが、驚くべきことに、バローロは19世紀半ばまで甘~中甘口のワインとして造られていました。現在のランブルスコのように微発泡したものも存在したようです。
これは、ネッビオーロ種は果実として成熟するのに時間がかかり、アルコール醗酵を行う11月は気温が下がるため、醗酵が途中で止まってしまう(酵母が活動できない)ことが原因だったようです。
その後、1861年にイタリアが統一され、イタリア国初代首相となるカミッロ・カヴール伯爵がフランスの醸造家ルイ・ウダール氏を招聘。彼のアドバイスによる醸造技術の変化によって、ワインは中辛口ワインから長期熟成向き辛口赤ワインへと生まれ変わることになります。

こうしたいくつかの転機を迎えながら、長期のマセレーション(ブドウの浸漬。30~60日)と大樽での熟成(4~8年)によって現在飲まれているような辛口ワインの原型が生まれます。いわゆる伝統派と呼ばれる造りはこの流れを汲んでいます。
そして1980年代に入って、レナート・ラッティやアルド・コンテルノがフランスのブルゴーニュ地方を視察した際に持ち帰った技術により、短いマセレーション期間(数日~2週間)や小樽(フレンチオーク)の採用、樽熟成期間を短く(1.5~2年)する工夫が行われることで、それまでの伝統派と、当時の若手生産者を中心としたモダン派、それぞれの折衷派、と この地の醸造にバリエーションが拡がります。

この頃、モダン派の中核を担った生産者は「バローロボーイズ」と呼ばれ、「伝統派との対立構造」「伝統派vsモダン派」などとしてジャーナリズムに取り上げられることでバローロの知名度はさらに高まることになります。
また、1960年代以降は自分でワインを造るブドウ栽培農家によって生産者元詰めワインが増加。小さな畑を持っている生産者が増えることでクリュの概念(区画ごとの個性を重んじる)が時間をかけて定着していきます。
最近では、両者の手法をミックスした折衷派の生産者が増えており、その思想や哲学によって「伝統寄りの折衷派」「モダン寄りの折衷派」など多種多様なワインを楽しめるようになっています。

バローロの醸造法

ではこれまでに紹介した「伝統派」「モダン派」のワイン造りの違いを簡単に見ていきましょう。

・伝統派
 収穫後の寒さの中でもブドウの成分をしっかりと引き出すためにマセレーション期間を30~60日間と長期に行う。
 ネッビオーロ種の持つ豊かな渋みを和らげるために、大樽で4~8年間の熟成。
 それに加えてワインと酸素が触れることで促進される熟成の効果を高めるために、酸素透過率が高いとされるクロアチア東部産のスラヴォニアン・オークも重要な樽材のひとつだった。

・モダン派
 フランスから取り入れた技術などで醸造時の安定感が向上し、マセレーション期間は数日~2週間程度と短縮。それにより過剰なタンニン(渋味)の抽出を緩和し、より果実味に富んだ口当たりの良い味わいを目指した。
 熟成に用いる樽はフレンチオークの小樽で期間は1.5年~2年。

現在は伝統派、モダン派それぞれの生産者も世代が変わることで対立の図式は軟化。お互いの良い部分を取り入れた折衷派が主流を占めています。

バローロには肉料理がおすすめ

バローロは、生産者ごとの個性もさることながら、繊細でバランスが良く、熟成による深く重厚な味わいが特徴的です。そのため、味わいに力強さを感じる肉料理、いくつもの香りを持つ複雑な料理などと相性の良さを感じることが多いです。
特に現地で食べられている煮込み料理「牛肉のブラザート」はバローロを語る際には外せない組み合わせです。
面白い組み合わせとしては、馬刺しや牛肉のカルパッチョ、ユッケなど生肉を使った料理。馬刺しは素材の風味と鉄分を感じる香りがワインとの共通点としてうまくお互いの味わいをつないでくれるので機会があれば是非。

バローロには酸味の美しさ、絹糸を重ねたような繊細でしなやかな酒質がありますので、噛み応えのあるもの、というよりは食感が優しく繊細なもののほうがより合わせやすいです。豊富な酸や渋味に由来する仄かな鉄分のニュアンス、鞣革の香りはジビエ料理との距離も近くしてくれます。
また、クリームなどの油脂とバローロの酸味が重なって感じられる旨味には、他に代え難い美味しさを覚えます。

そしてこの地は、バーニャカウダ、フリット・ミスト、チーズ(ゴルゴンゾーラやムラッツアーノ、テストゥン・アル・バローロなど)、ヴィテッロ・トンナート、チーズ・フォンデュ、ポルチーニ茸、白トリュフ、マロン・グラッセやチョコレートなど美味しい食材や料理が溢れています。

ブルゴーニュワインとの違い

バローロはイタリアにおける「ワインの王様」と呼ばれますが、フランスにおけるワインの王様「ブルゴーニュ」のピノ・ノワール(Pinot Noir)と比較されることも多くあります。ボージョレ(Beaujolais)を除くブルゴーニュの赤ワインの殆どはピノ・ノワールというブドウ品種100%で造られるワインです。

ピノ・ノワール、ネッビオーロともに生育は気難しく、環境にも敏感なところがあります。このことから両者はテロワールを反映しやすいワイン、といわれることもあります。
また、バローロとブルゴーニュは小規模な生産者が中心のため、銘柄ごとの生産量が少ないといった共通点もあります。
双方、豊富な酸味がワイン中のほかの要素と合わさって余韻を長く豊かに伸ばしている部分があり、良質なものは熟成を経ることにより、より奥行きと深みを増して威厳のようなものを感じることができます。

おすすめのバローロ3選

それでは今まで解説してきた魅力あふれるバローロのおすすめ3選をご紹介します。

カシーナ・グラモレーレ バローロ 2018

3,000Lの大樽を用いて伝統的な醸造法によって造られたバローロです。
使用しているブドウの樹齢が高く(50~60年)果実のポテンシャルを感じます。カシスやドライプラム、木の実系のスパイスなどの豊かな香りが楽しめ、バランスも良く価格も手ごろなので伝統的なバローロを初めて試してみたい方におすすめです。

レナート・コリーノ バローロ・デル ・コムーデ・ディ・ラ・モッラ 2018

ラ・モッラとセッラルンガ・ダルバのネッビオーロを使って造られるモダンなバローロ。違う個性が調和した味わいも魅力的です。
イチゴやチェリーといった明るいフルーツの香りに、シナモン、若干のスモーキーさが感じられます。
赤系果実主体の風味と若々しく爽やかなタンニンを味わうことができ、酸味が引き締まってフレッシュな赤ワインが好みの方におすすめです。

チェレット バローロ ブルナーテ 2017

バローロ村とラ・モッラ村のネッビオーロを使用したバローロで、納得のいくブドウが収穫できた年だけ造る特別なものです。
若いうちはバラやスミレの香りが楽しめ、赤黒系果実の高い凝縮感と豊かな香りの拡がりを持つワインです。
バローロにおける最高峰の造り手のひとりであるチェレットが提供するワインで、お祝いのシーンや大切な方への贈り物としても喜ばれる、香りや味のふくらみと品格がある佇まいを感じる世界基準のワインです。

まとめ

バローロはイタリアにおけるワインの王様と称されています。力強さと繊細さが調和した味わいが特徴で、特に味のしっかりとした肉料理と合わせることができる赤ワインです。
バローロと言ってもテロワールによって風味が異なるため、香りや味わいも多種多様。様々なバローロを飲み比べしたい方はぜひTHE CELLAR online storeをご覧になってください。きっとお気に入りの1本が見つけられるはずです。

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この記事を書いた人

角 敏行

角 敏行 / つの としゆき / Toshiyuki TSUNO

福岡県出身。
都内のフランス料理店、恵比寿「タイユバン・ロブション」、南青山「ピエール・ガニェール・ア・東京」、銀座「ベージュ・アラン・デュカス東京」でソムリエとして研鑽を積み、六本木「リューズ」、駒形「ナベノ-イズム」では支配人兼シェフ・ソムリエとして従事。
現在は自身の会社を持ち、後進の育成、レストランサービスのアドバイザー、また「Champagne Laurent Perrier」、日本酒「F1625」のブランド・アンバサダーとして活動している。