2024.01.11

【現地取材】バスク地方とは?おすすめの現地料理やワイン、観光スポットを紹介

 

美食の町バスクをご存じですか?美しい街並みに、雄大な自然、美食とワイン、バル巡り…。
バスクは観光を楽しみたい方にとってもおすすめの地域です。しかし、見どころが多すぎるのも困りもの。本記事では現地取材をもとにバスク地方のワインや料理、おすすめの観光スポットを紹介いたします。
バスクに行く予定がある方もない方も、ぜひ、バスク旅行気分で眺めてみてください♪

バスク地方の基本情報

 

バスク地方はスペイン北西部からフランス南西部にまたがる地域で、スペイン・バスクは"Pais vasco(パイス・バスコ)"、フランス・バスクは"Pays basque(ペイ・バスク)"と呼ばれています。ヨーロッパで最も古い言語と言われるバスク語が現在も使われ、独自の文化と伝統が今も守られています。
バスク語で「こんにちは」は『Kaixo(カイショー)』、「ありがとう」は『Eskerrik asko(エスケリカスコ)』。この二つを覚えておくとバスク旅行がちょっと楽しくなるかもしれませんよ。
地理的には、カンタブリア海とピレネー山脈に挟まれ、美しい海岸線と山々に囲まれています。バスク地方は豊かな自然環境と美食で知られており、ピンチョス(小皿料理)を代表としたバスク料理は世界的にも有名です。伝統的な農業や漁業も盛んで、バスクの海の幸を活かした料理が愛されています。
また、バスク地方には美術館や歴史的な建造物も点在し、古くからの伝統と現代的なアートが融合しています。主要都市のビルバオやサン・セバスティアンは、文化やアートの中心地として知られています。
緑豊かな自然、独自の文化、美味しい食事、そして温かい地元の人々とのふれあいが、バスク地方の魅力です。

バスク地方の観光スポット

バスク地方には魅力的な観光スポットが数多くあります。
現地取材をもとに、各スポットの見どころをご紹介します。
◇サン・セバスティアン
◇ビルバオ・グッゲンハイム美術館
◇ビスカヤ橋
◇旧市街(カスコ・ビエホ)

サン・セバスティアン

スペインのバスク地方に位置する美しい海岸の都市、サン・セバスティアン。海と山に囲まれた美しい街並みは「ビスケー湾の真珠」とも呼ばれ、ラ・コンチャと呼ばれる弧を描いた海岸線と併せてその景観の美しさが多くの人々を魅了します。
また、サン・セバスティアンは世界的に有名なグルメの都市。人口1人あたりのミシュランの星の数が世界で一番多い街として知られています。また、ピンチョスも有名で、街のバルでは地元の美味しい料理を楽しむことができます。
バル巡りをするなら旧市街がおすすめ。旧市街にある路地にはバルが100軒以上も軒を連ねています。サン・セバスティアンでバルを楽しむ秘訣は、こうしたお店をはしごすること。1軒に何時間も滞在するというより、短時間でお目当ての店を巡り、いろいろなバルのピンチョスを味わうのがおすすめです。
どのお店も店内は小さめでたくさんの人がひしめき合っていることが多いですが、そんな雰囲気も楽しいのがバル巡り。
現地の人の様子をちらっと伺ってみるとみんな楽しそうに話して笑って、思い思いにお料理とお酒を楽しんでいます。
油断は禁物ですが比較的治安も良いので、夜でもバル巡りを楽しめますよ。

ビルバオ・グッゲンハイム美術館

ビルバオ・グッゲンハイム美術館(Guggenheim Museum Bilbao)は、スペイン・ビルバオに位置する世界的に有名な現代美術館で、1997年に開館しました。フランク・ゲーリー(Frank Gehry)による建築デザインが特徴的で、美術館自体がアート作品のような美しさで注目を集めています。美術館内では現代美術の優れた作品が常設展示および特別展示として展示されており、絵画、彫刻、写真など、インスタレーションなど、多種多様な作品が集まります。また、美術館周辺には屋外にも作品が配置されているので、散策しながらアートを楽しむことができます。

正面入口には「Pappy」と呼ばれる犬の形をしたオブジェがあるのですが、「Pappy」らしからぬその大きさに驚きました。季節ごとにPappyの体を包む草花が植え替えられ、違った姿を見せてくれるそうです。中にはレストランもあり、アートとともに美味しいお料理とワインを楽しむこともできます。

ビスカヤ橋

ビスカヤ橋は、ビルバオの西方にあるネルビオン川の河口にかかる世界最古の運搬橋。建築家アルベルト・パラシオによって設計されました。この橋を作る技術はバスク地方の製鉄技術やフランスの建築技術を統合したもの。吊り下げられたゴンドラで人や車を運搬するという造りは、その後、ヨーロッパやアメリカ、アフリカなどの運搬橋のモデルとなりました。
この運搬橋はもちろん現在も稼働しており、ゴンドラに乗って向こう岸へとわたることもできますが、おすすめなのは橋上部にある歩行者ゾーン。50mの高さから港や湾を眺めつつ歩いて渡ることができます。上からの景色は圧巻ですが、高いところが苦手な方にはおすすめできません…笑
ビスカヤ橋はビルバオのランドマークとして、観光客にとっても魅力的なスポットとなっています。
特に夜になるとライトアップされ、美しい夜景を楽しむことができます。

旧市街(カスコ・ビエホ)

旧市街(カスコ・ビエホ(Casco Viej))はスペインのビルバオにある歴史的な地区。その魅力的な雰囲気と古い建造物が、訪れる人々を魅了しています。カスコ・ビエホは中世からの歴史を持ち、ビルバオの原点とも言えるエリアです。石畳の細い路地を進むとゴシック様式やバロック様式の教会や建築物が点在し、中世の趣を感じることができます。かつての城壁にかぶせるように建てられた建造物もあります。この地区はビルバオの発展とともに、歴史的建造物を維持しながら形成されてきました。
また、このエリアには伝統的な店舗や地元の工芸品店もあります。狭い石畳の道を歩き、中世の雰囲気を楽しみながらショッピング。美味しいバスク料理が楽しめるレストランやバルも点在しているので、散策に疲れたら地元の料理やワインを楽しみつつ一休み…というのも素敵ですね。

バスク地方の料理

バスク地方の料理は地元の食材を大切にし、シンプルながらも奥深い味わいが特徴です。
食通やグルメ愛好者にとって、バスクの食文化は必見です。

ピンチョス

ピンチョスは、スライスしたバゲットの上に具をのせ、楊枝(ピンチョ)で刺してとめたおつまみのことです。近年では楊枝で刺していない小皿系の創作料理もまとめてピンチョスと呼ばれています。ピンチョスの特徴は、バラエティ豊かな食材とその斬新な組み合わせです。新鮮で質の良い食材が用いられ、見た目も美しく、一串ごとに異なる味わいが楽しめます。バスク地方だけでなく、スペイン全体や世界中で愛され、代表的なスペイン料理のひとつとして広く知られています。
皆さんは『ヒルダ』というピンチョスをご存じですか?『ヒルダ』は1940年代~50年代、バスク地方で一番最初に生まれたピンチョスと言われています。オリーブとアンチョア(アンチョビ)、酢漬けのギンディ?ジャ(青唐辛子)を楊枝に刺したもので、この3つを一口で食べるのがポイントなのだそう。私は今回初めてこのピンチョスを知ったのですが、バルで見かけるたび頼んでしまうほど大好きに。アンチョアの塩味とギンディージャの酸味が癖になり、バスクのワイン『チャコリ』にもよく合います。バスクを訪れた際にはぜひ食べていただきたい一品です。

バカラオ・アル・ピルピル

「バカラオ・アル・ピルピル」は、主にバスク地方で愛されているスペインの伝統的料理です。海が近いスペインでは鱈(バカラオ)がよく料理に使用されます。「バカラオ・アル・ピルピル」とは、簡単に言うと『鱈のオイル煮込み』のこと。にんにくと鷹の爪、オリーブオイルで鱈にゆっくり熱を加えて、鱈のゼラチン質と旨味を抽出します。このゼラチンをオリーブオイルと混ぜ、乳化させたものが『ピルピル』と呼ばれるソースです。
じっくりと低温で火を通した鱈の身はとても柔らかく、ぷりぷりとした食感がたまりません。とろりとした濃厚なピルピルソースにはタラの旨味とニンニクの香り。これがまた、淡泊なタラととてもよく合うのです…。残ったソースもバゲットにつけて、残さずいただきたくなる美味しさです。

バスク風オムレツ

バスク風オムレツ(Tortilla a la Vasca)は、スペインのバスク地方の伝統的な料理の一つで、他のスペイン風オムレツとは異なる独自のスタイルを持っています。バスク風オムレツには、特有のソースである「ピモント」が添えられます。唐辛子やトマト、にんにくなどを使用したソースで、オムレツに独自の風味を与えます。また、ジャガイモが入っているのが一般的です。
バスク風オムレツはシンプルでありながらも風味豊かな料理で、地元の食材や伝統を反映しています。

バスクチーズケーキ

外側は焦げ目がつくまでしっかりと焼かれ、さっくりとした食感にカラメルの香り。中身はとろとろのクリームに濃厚なチーズと卵の味わい。皆様ご存じ、バスクチーズケーキです。日本でも有名なバスクチーズケーキですが、実はバスクでは『バスクチーズケーキ』という名前では流通していません。
バスクチーズケーキはバスク発祥のケーキではありますが、実際にはバスクの伝統料理ではなく、サンセバスティアンのバル『ラ・ヴィーニャ(La Vina)』の名物チーズケーキをもとにつくられたもの。バスクのバルに行けばどこでも食べられるケーキ、というものではないのです…。レストランでは『ベイクドチーズケーキ』として提供されていることもありますよ。
バスクチーズケーキの基本的な材料はクリームチーズと卵、砂糖、薄力粉、生クリーム。一般的なベイクドチーズケーキとほとんど同じ材料ですが、バスクチーズケーキの方がクリームチーズの割合が多く、濃厚なチーズの風味とずっしりとした食感に仕上がります。冷やさず温かいまま出てくるのもポイント。もちろんワインとの相性は抜群です。

バスク地方のワインの特徴

バスク地方の代表的なワインの一つが「チャコリ(Txakoli)」です。少なくとも800年前からバスク地方の農村で親しまれてきた飲み物とも言われており、バスク人にとってはなじみの深いワインです。
チャコリと言えば「フレッシュな味わいを楽しむ、爽やかな微発砲ワイン」というイメージが一般的ですが、実は非発泡ワイン(スティルワイン)も存在します。また、生産量は少ないですが赤チャコリなんてものもあるんです。ご存じでしたでしょうか。一口に『チャコリ』と言っても生産地によって味わいは幅広く、様々なお料理にあわせて選ぶのも楽しみのひとつ。
伝統的なスタイルのチャコリは、酸が強く微発泡。フレッシュな味わいが特徴で、熟成させず早いうちに飲まれます。一方、革新的スタイルのチャコリはガスを含まず、しっかりとした果実味と厚みのある味わいが特徴。こちらは熟成させることを前提として作られており、樽熟成のチャコリも登場しています。
古くからバスク人に愛されてきたチャコリですが、産業の発展による農村地帯の衰退や葡萄の疫病により葡萄の生産量が激減し、衰退した時期もありました。しかし、多くのワイン生産者や行政機関が手を組んで、畑を増やし、生産量を増やし、復活を遂げたのです。生産者たちは今日も「伝統を守りながら、より良いものを」という強い思いをもってチャコリを生産しています。
チャコリと聞くと『エスカンシア』をイメージされる方も多いのではないでしょうか。ワインを高い位置からグラスに注ぐエスカンシアは、もともと酸味の強いチャコリを泡立ててまろやかに、飲みやすくするために行われたもの。栽培方法や醸造技術が進歩して、美味しいチャコリをつくれるようになった今では不要な場合もあります。高品質なチャコリはグラスにやさしく注いで楽しんでくださいね。

バスク地方のワイン産地

チャコリの生産地には「D.O.ゲタリア」「D.O.ビスカイア」「D.O.アラバ」の3つのD.O(原産地呼称)があります。
①D.O.ゲタリア (バスク名:ゲタリアコ・チャコリーナ)
 3つのD.O.の中で最も古い産地。サン・セバスティアンの近くに位置しています。
 葡萄畑の80%が海に面しており、その多くが斜面にあります。
 スッキリとした酸味と青りんごのような爽やかな果実味を持つ微発砲のワインが作られます。
②D.O.ビスカイア (バスク名:ビスカイコ・チャコリーナ)
 バスク最大の都市であるビルバオの近くにある位置しています。
 ゲタリア(スッキリ爽やか)とアラバ(コクのあるタイプ)の中間タイプのワインが作られます。
③D.O.アラバ (バスク名:アラバコ・チャコリーナ)
 スペインの中で1番小さなD.O.。山間部に位置し、3つのD.O.の中で唯一海に面していません。
 山間部は沿岸部に比べて降雨量が少なくなるため、アルコール度数が少し高めのコクのあるタイプに仕上がります。
どの産地のチャコリも、チャコリとしての一般的な特徴は共通していますが、D.O.ごとに独自のルールとこだわりを持って生産されています。産地ごとに飲み比べてみるもの楽しいですね。

チャコリのブドウ品種

チャコリはバスク地方の固有品種の葡萄でつくられています。
オンダラビ・スリ(もしくはオンダラビ・スリ・セラティア)、オンダラビ・ベルツァを最低80%以上使用していなければ
『チャコリ』と名乗ることはできません。

□オンダラビ・スリ
 ”スリ"とはバスク語で「白」の意味。
 金色の小さな粒で、淡い黄色のワインに仕上がります。
 柑橘系の熟した果実やハーブ、花の香りを持ち、爽やかな酸と軽やかな味わいが特徴です。

□オンダラビ・ベルツァ
 "ベルツァ"はバスク語で「黒」の意味。
 カベルネ・フランがルーツで、ピーマンやごぼう、胡椒のニュアンスを持っています。

チャコリはその生産量のほとんどが白ワインです。そのため、つくられる葡萄も90%以上が白ブドウ。
赤ワインやロゼワインも作られていますが非常に少量です。

バスク地方のワインと伝統料理のマリアージュ

複雑なアロマと爽やかな酸味を持つチャコリ。バスク地方では魚料理や魚介類の料理と合わせるのが伝統的ですが、魚介にとどまらずどんな料理にも合わせやすい柔軟性とポテンシャルを持ったワインです。
『ピンチョス』×『フレッシュな微発泡チャコリ』
『ピルピル』×『中熟成のスティルチャコリ』
『スペインの生ハム』×『長期熟成タイプのチャコリ』…などなど、お料理にあわせて熟成タイプを変えてみると、マリアージュの可能性は無限大です。
バスク地方の料理は新鮮な魚介類、地元の野菜、豊富な畑の産物を活かした独自のスタイルを持っています。自分の好みに合わせて新しい組み合わせを見つけてみるのも楽しいですよ。

おすすめのバスクワイン

アストビサ アラバコ・チャコリーナ ピルピル 2022

天然微発泡を楽しめるチャコリ。明るく透明感のある色調。
梨やりんご、グレープフルーツなどさまざまな完熟したフルーツの香りやフェンネルのようなハーブの香り。酸は、いきいきとフレッシュでバランスよく、口に含むとクリスピーな泡が食欲を刺激するワインです。炭火焼の魚介類等との相性もよく、エダムやゴーダなどのチーズともおいしく召し上がっていただけます。
【D.Oアラバ】のチャコリは、基本的にスティルタイプが多いのですが、輸入元のいろはわいんからのリクエストで新しく天然微発泡を楽しめるチャコリをつくってもらったそうです。

ゴルカ・イサギレ チャコリ・ブランコ 2022

こちらは革新的タイプのチャコリ。熟成させることを前提に作られています。
バスクで長く親しまれてきたのはフレッシュに楽しむ微発泡タイプでした。熟成向きのチャコリはなかなかバスク人からの理解を得られませんでしたが、ゴルカ・イサギレではチャレンジとして熟成できる長熟チャコリを目指しました。熟成タイプのチャコリには、オンダラビ・スリ・セラティアという葡萄が適しているのだそうです。
こちらのワインにはオンダラビ・スリとオンダラビ・スリ・セラティアが50%ずつ使われています。フレッシュながら厚みがある味わいで、しっかりとしたボディが特徴。シーフードよりもお肉に併せていただきたいワインです。生ハムやドライフルーツにもよく合いますよ。

イルスタ ゲタリアコ・チャコリーナ ティント イルスタ 2020

フランスとの国境沿いの町、ギプスコア県オンダリビア唯一のワイナリーであるイルスタ。2007年にブドウの栽培を始め、2012年からチャコリのリリースをスタートしました。今では多くのミシュラン星付きレストランで楽しまれています。
こちらはチャコリでは珍しい赤ワイン。透明感と艶のあるルビーレッドの色合いで香りは赤系の小さな果実や青草、ハーブといった清涼感をもっています。フレッシュで果実味と酸のバランスがよく、長い余韻が楽しめます。
飲まれる際は少し低めの12℃~14℃くらいがおすすめです。

美食の街バスクで愛される地ワイン『チャコリ』 飲み比べ5本セット vol.2

今回はロゼにオレンジにスパークリング…、変わり種のチャコリを集めました。
白・赤・ロゼ・オレンジ・スパークリング、さまざまなスタイルでチャコリに使われる固有品種の味わいをお楽しみいただけるセットです。
基本のチャコリとして【ゴルカ・イサギレ チャコリ・ブランコ 】を入れました。
この1本を軸に、味わいの違いをお楽しみください♪

まとめ

いかがでしたでしょうか。
スペイン・バスク地方は『観光』、『食』、『ワイン』、『自然』どれをとっても最高の場所。
一度訪れたら、その魅力に魅了され、恋に落ちてしまうこと間違いなしですよ。

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この記事を書いた人

市川 瑠衣

市川 瑠衣

Cave de Relax 管理部所属