2024.05.09

デザートワインとは?6つの種類や楽しむためのポイント、おすすめ商品3選も紹介!

 

デザートワインは世界各国で生産されています。極甘口から程よい甘口もあり、様々な表情を見せる多種多様なワインはこの数年で日本でも需要の高まりを見せています。
通常の赤ワイン・白ワインと比べ、甘口ワインというと、どれくらい甘いのか?どんな製法で造っているのか?ラベルを見ただけでは分かり辛い部分のあるので手が出しにくいかも知れませんが、デザートワインを知る事でワインの幅も広がってくることは間違いありません!
デザートワインと一口に言っても、様々な製法で造られ、ワイン単体で楽しむだけではなく、お料理との相性が良いものもたくさんあります。本記事ではデザートワインの特徴や味わいを解説に加え、おすすめのデザートワインもご紹介します。

デザートワインとは?

デザートワインに関して、世界的な定義はありませんが、一般的に甘いワインは全て「デザートワイン」と表現する事が出来ます。従って、優しい甘さのものから、一口飲むと思わず声が出てしまいそうな極甘口のタイプも存在します。
そもそもデザートワインは、ブドウが持つ甘みのポテンシャルのみを用いて造るワインもあれば、特殊な醸造法を用いてブドウの凝縮度や糖度を高めて造るワインもあります。更に低アルコールの甘口もあれば、酒精強化して作る高アルコールも存在するため、一概に甘口ワインといっても本当にたくさんの種類が世界中にはあるのです。

デザートワインはどうやって造られる?

デザートワインの造り方としては大きく2つあります。
1つ目は糖度の高いブドウを使う(ブドウそのものの甘みを利用)という製法で、
2つ目はブドウのアルコール発酵を途中で止めるという製法です。
1つ目の製法では、 一般的に赤ワイン・白ワイン用で使うブドウを使用します。ワインのブドウに含まれる糖分が酵母の働きで発酵し、アルコールと二酸化炭素に変わる事で生まれるお酒で、ブドウ果汁(マスト)の糖分が全て消化されるか、容量パーセントで15度前後になると発酵が停止します。一般的に、糖度25度でアルコール15度前後のワインとなるため、糖度が25度以上のブドウでワインを造れば糖分が残る、甘口ワインが出来上がります。
2つ目のブドウのアルコール発酵を途中で止める製法というのは、本来ブドウの糖分をアルコール発酵によって全て消化しきることで辛口ワインに仕上がるのを、途中で発酵を停止させることで糖分を残した甘口ワインに仕上がるのです。
次の項で2つの製法を詳しく見ていきましょう。

糖度が高いブドウを使う

根底に糖度が低く、酸味を持ったブドウで甘口ワインを造ることは出来ないため、糖度が高いブドウを用いる必要がありますが、甘口ワインとなるブドウは自然の産物のため、生産地域がどこでも良いわけではなく、ワインと同じように「テロワール」が大切になります。
糖度を上げる手法として、代表的なものが凍結させる(アイスワイン)、貴腐菌を付着させる(貴腐ワイン)、陰干しにする(パッシートなど)、収穫時期を遅らせる(ヴァンダンジュ・タルディヴなど)があります。
アルコール発酵ではブドウの糖分をアルコールに変えますが、消化しきれないだけの糖分が果汁に含まれていれば、発酵後のワインの糖度を上げる事が可能でワインはアルコール度数が容量のパーセントで15度前後になると発酵が停止します。
糖度25度でアルコール度数が15度前後になるため、25度よりも高い糖度を保つようにすることで、甘口ワインを造ることが出来るようになります。また、ブドウの水分を蒸発させることによって、ブドウの成分が凝縮されて糖度の高い果汁を搾汁出来るようになります。

ブドウのアルコール発酵を途中で止める

アルコール発酵で、ブドウに含まれる糖分をアルコールに変えるという事はお伝えしましたが、その発酵を途中でやめればワインの残る糖分を増やすことが可能になります。この、「発酵を止める」ということが、甘口ワインを造るための2つ目の手法になります。
発酵を途中で止める方法は、
①冷却する
②二酸化硫黄を添加する
③ブランデーなどアルコール度数の高いお酒を添加する
という3つの方法があります。

ちなみにドイツで造られる低アルコールの中甘口ワインの多くはアルコール発酵を途中で止める製法を用いています。

デザートワイン6種類を紹介

デザートワインは様々なタイプがあるとお伝えしましたが、ここでは代表的な6種類をご紹介します。
デザートワインというカテゴリーでよく耳にする、貴腐ワインやアイスワインを筆頭に特殊な技法で造られる甘口ワインを理解すれば、より楽しいワインライフが広がります。

貴腐ワイン

貴腐ワインは貴腐菌というカビ菌がブドウの果皮に付着することによって造ることができるワインです。貴腐とはその名の通り、「高貴なる腐敗」を意味し、カビまみれのブドウからは想像し難い極上の甘口ワインとなるのです。
貴腐ブドウは特殊な菌によって生まれますが、非常に凝縮したリッチな甘みが特徴的な味わいとなり、貴腐ワインを飲んだことで甘口ワインに目覚めたという愛好家も多いのではないでしょうか。貴腐ワインは人を虜にしてしまう、そんな魅力があります。
原料となる貴腐ブドウは一般的な白ワイン品種(辛口)と同じですが、そのブドウにボトリティス・シネリアと呼ばれる菌に感染し貴腐ブドウを誕生させるのですが、どの産地でも栽培できるわけではなく、昼は乾燥し、夜は湿度が高く、そして朝は霧に覆われるなど・・・特殊な気候条件が必要になります。
貴腐ブドウを造り出すのは容易ではなく、限られた環境でしか生み出せないのですが、どんな環境が適しているかというと、成熟期にブドウが完熟する事、そして朝晩の湿度が高い事、日中の気温が高い産地・・・この気候条件が揃う事で神様のいたずらによって、ブドウがボトリティス・シネリア菌に感染するのです。

貴腐ワインは食後のデザートワインとして飲まれるのが一般的ですが、糖度が低く、酸味が快適な貴腐ワインは食前酒向きですし、今でこそシャンパーニュを食前酒に愉しむの主流になりましたが、1900年代後半は、貴腐ワインを食前酒として愉しまれる愛好家も多かったのです。
そして、誰しもが聞いたことがある世界3大貴腐ワインという単語があり、フランス・ボルドーのソーテルヌ、ハンガリーのトカイ、ドイツのトロッケンベーレン・アウセレーゼがありますが、極上の貴腐ワインはブドウの樹1本から1杯分しか造れないものもあり、高価な貴腐ワインも存在します。

アイスワイン

アイスワインはその名の通り、ブドウが樹上で凍結した状態の時に収穫し、凍ったまま圧搾して造る甘口ワインです。アイスワインも貴腐ワイン同様に、凝縮された甘みがあるのですが、酸味が心地よく貴腐ワインに比べるとアルコール度数が低いワインが多く、ワイン初心者の方も入りやすい味わいです。
ワイン産地の中でも冷涼な産地でなければアイスワインは生み出せませんが、最も有名なのがドイツとカナダです。ドイツは18世紀末、収穫前に寒波が襲い、ブドウの全てが凍ってしまい、破棄するはずのブドウからワインを造ったところ、美味しい甘口が出来たことがきっかけです。カナダは世界で最もアイスワインを生産している国となり、500以上のワイナリーがある中、アイスワインを生産しているワイナリーはなんと100軒以上で、カナダに存在する1/5がアイスワインを生産しています。
気温が0度を下回るとブドウが凍るのですが、アイスワインを名乗るためにはドイツではマイナス7度以下、カナダではマイナス8度以下で収穫しなければならない厳しい規定があり、希少価値も高いのですが最近は地球温暖化の影響を受けて生産することが年々難しくなってきています。

ストローワイン

ストローワインは収穫したブドウを風通しの良いところで乾燥させ、ブドウの凝縮度を高めて造るデザートワインです。
収穫後に上手く乾燥させるには、温暖な環境が必要ですし、腐った粒から腐敗病が広がらないように、粒をしっかりと選果する必要があります。ストローの意味は、英語で「藁」の意味があり、藁の上で乾燥させることがこのワインの由来になっています。
藁の上でブドウを保管する事で、ブドウ内の水分が蒸発し、凝縮した糖度だけが残り、いわゆる干しブドウになるのですが、レーズンを集めて搾汁するのがイメージしやすいかも知れませんね。コクがあって優美な甘さが味わえるのもストローワインの特徴です。

ストローワインは貴腐ワインやアイスワインに比べて糖度とアルコール度数が高いため、長期熟成に向いているといわれており、そのまま飲んでも良し、冬場のお菓子(シュトーレン)などの隠し味に使うのもお勧めです。
フランスだとジュラ地方やローヌ地方で造られれる、ヴァン・ド・パイユが有名ですがフランス以外だとイタリアのヴェネト州のレチョート、トスカーナ州のヴィンサントが有名ですね。

遅摘みワイン(レイトハーヴェスト)

遅摘みワインは完熟したブドウの収穫を遅らせ、水分が蒸発し糖度が上がった遅摘みのブドウから造る甘口ワインです。貴腐ワインほどの糖度は得られませんが、収穫のタイミングを遅らせるだけでも十分糖度の高いブドウを収穫することが可能で、レイトハーヴェストと呼ばれています。
フランスだと、南西地方のジュランソン、アルザス地方ではヴァンダンジュ・タルディヴ(遅摘み)という名称になりますが、この他にもイタリアやニュージーランドでも生産がされています。
実は日本国内でも造られており、北海道のケルナー種で造られたものが有名です。世界的に高い評価を得ているので是非飲んで頂きたい1本です。

モスカート・ダスティ

モスカートは元々、ギリシャ原産の品種ですが、現在はイタリアやフランスでも栽培をされており、主にイタリアで主要品種として使われていますが、フランスではミュスカという名前で親しまれています。
モスカート・ダスティはイタリアのピエモンテ州・アスティ地域が生産地のワインで、モスカートのビアンコ種と呼ばれるブドウで造ったワインを指します。ワインの区分ではスパークリングワインに当たり、微発泡の爽やかで繊細な甘みがある事から食前酒はもちろん、スイーツとの相性も抜群です。
ブドウに含まれる糖分の多くがアルコール分解されてしまう前に発酵を止めるため、アルコール度数が低い甘口のワインになり、更にアルコール度5%なので、お酒があまり強くない人にもお勧めです。

酒精強化ワイン

酒精強化ワインはフォーティファイドワインとも呼ばれ、その名の通り、アルコールを添加させることで独特な風味を醸し出すのですが、甘口だけではなく辛口も存在します。果汁の発酵途中にアルコールを添加した場合は糖度が残った状態で発酵が止まるため甘口となるのですが、フランスだとヴァン・ドゥー・ナチュレルやローヌ地方のミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ、南仏ルーション地方のモーリィーやバニュルスが有名です。一方で、未発酵のブドウにアルコールを添加して造られるワインをフランスではヴァン・ド・リキュールと呼び、コニャック地方でコニャックを添加して造るピノー・デ・シャラントなどが有名です。
世界三大貴腐ワインがあるように、世界三大酒精強化ワインがありますが、シェリー、ポート、マデイラは辛口から甘口まであり、ヨーロッパでは古くから嗜まれており食前酒から食後酒まで楽しめる、幅広いラインナップがあります。

デザートワインを楽しむためのポイント

デザートワインは、どのタイミングで飲むべきワインなのか?と疑問が湧くと思いますが、正解はなく様々なシーンで楽しむことが出来るワインなのです。

食後酒だけでなく、食前酒としても楽しめる

一般的にデザートワインは、食後酒のイメージが強いと思いますが食前にもお勧めで、ヨーロッパでは食前に甘口ワインを飲んでから食事を始める文化が根付いていますし、18世紀に辛口よりも甘口シャンパーニュが主流になっていたのも、こういった背景があるからです。
食前にアルコール度の低いフレッシュな甘口を飲めば心身共にリラックスしますし、キャラメルのような心地よい苦みがある甘口のシェリーやポートワインは胃を刺激して食欲を増進させます。
もちろん、食後のデザートと一緒にデザートワインを楽しむことは極上のマリアージュになりますので、レストランやご自宅でも試して頂きたいと思います。

よく冷やすことで味が引き締まる

糖度が高い甘口ワインは冷やすことで甘みが快適に抑えられ、酸味が程よく表現させるので、甘ったるい印象が緩和されます。
ご自宅だと、飲む1日か半日前に冷蔵庫に入れて温度を下げておくと良いですね。もし、ワインクーラーがあればボトルネックまで氷水につけて15分ほど置けば4度くらいに冷えるので、快適な味わいがお愉しみ頂けます。

抜栓後も数週間は保存できる

糖度が高いワインは一般的な赤ワイン・白ワインよりも長期熟成が可能です。ソーテルヌの最高峰の貴腐ワインは100年以上持つといわれていますし、抜栓後も乾燥と酸化を防ぐためにコルクを栓にして更にラップを巻いて保存すると長期保存も可能ですので、ご自宅でもゆっくりと楽しむことが出来ます。

小さなグラスでゆっくり楽しむ

デザートワインは食前でも食後でもそんなに量を飲むお酒ではないので、レストランに行くと小ぶりのグラスで提供させることが多いです。香りや余韻を感じながら1杯につき30~60mml程度を少しずつゆっくり飲むのが良いでしょう。

デザートワインに合うおつまみと一緒に楽しむ

デザートワインはそのままストレートで飲んでも美味しいのですが、お料理とのマリアージュにも適しています。中でも甘口ワインとフォアグラ(出来ればテリーヌ)、は間違いのない定番の組み合わせですし、チーズと合わせるなら塩味の強い青カビタイプのチーズが蜂蜜代わりになってよく合います。フルーツなら、甘みが強いパイナップルやマンゴーなどのトロピカル系が合わせやすいので、フルートタルトなどがお勧めです。

おすすめのデザートワイン3選

最後におすすめのデザートワインをご紹介します。

ラ・スピネッタ モスカート・ダスティ ブリッコクワリア 2022

食前でも食後でも快適に愉しむことが出来る万能型のワインです。快適な酸味と心地より甘みが口中に広がり、繊細さを感じますが全体的に長い余韻に包まれる上質な味わいです。

フリードリッヒ・ベッカー ピノ・ノワール アイスワイン 2018(ハーフ)

ドイツのアイスワインの中でも、珍しいピノ・ノワールから造る甘口ワインでフリードリッヒ・ベッカーはアイスワインを造る生産者の中で最高峰に君臨します。快適な甘みと酸味が心地よく、アルコール度数も低いため、食後に軽く甘口を飲みたいときにお勧めです。

カルム・ド・リューセック 2021

ソーテルヌ村、グラン・クリュ 1級格付け シャトー リューセックのセカンドワインで、樹齢が若いブドウから生産が行われています。畑の立地条件も申し分なく、ヴィンテージによってはシャトー ディケムに引けを取らない、紛れもなく、ソーテルヌ村の最高峰のワインです。甘みは中程度で柑橘系のドレッシングを使った冷前菜ともピッタリと合います。

まとめ

デザートワインには明確な定義はありませんが、一般的に甘口のワインをさし、その昔、砂糖が今のように流通しておらず甘い食べ物が作れない時代からデザートワインは貴重な存在で、生産者は様々な工夫をして甘口ワインを醸造してきました。シャンパーニュも今でこそ、辛口が主流ですが18世紀頃は糖度が高い甘口タイプが多く、王族・貴族も食前に甘いシャンパーニュを飲んでいた歴史も残されています。
楽しみ方はそれぞれですが、デザートワインはしっかり冷やすと、甘みが引き締まってより快適な味わいになり、大きなブルゴーニュグラスではなく、繊細な甘みを感じれるように小さめのグラスに注いで、余韻を楽しみながらゆっくり味わうのがおすすめです。
デザートワインには、貴腐ワインやアイスワインなど製法の違いによる様々な種類があるため、ハーフボトルを少しずつ買って飲み比べてみると楽しさも広がると思いますし、タイプによって食前向きもあれば、食後向きもあり様々なシーンでデザートワインは豊かさを与えてくれるのと同時にワインの世界観を広げてくれるのです。
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この記事を書いた人

高丸智天

高丸智天

ガストロノミー “ジョエル・ロブション”
シェフソムリエ 高丸智天 (Tomohiro TAKAMARU)

【経歴】
1977年 広島県生まれ。
ホテル・レストラン専門学校卒業後、千葉県のホテル内フレンチレストランで10間年勤務したのち
2008年 ガストロノミー “ジョエル・ロブション” 入社
2012年 同店 プルミエソムリエ就任
2016年 同店 シェフソムリエ就任
2023年 テタンジェ社よりシャンパーニュ騎士団 シュヴァリエ 叙任
現在に至る

ミシュランガイド17年連続三ツ星「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」シェフソムリエ。シャトーレストランにストックする3,000種類 25,000本のワインを熟知し、お客様に最適な1本を提案している。また、料理とワインのマリアージュには定評があり、多くの人から高い支持を得ている。