オーパス・ワンってどんなワイン?

産地の特徴や価格・評判も徹底解説

THE CELLAR JOURNAL Mar.2023 --- writer : Daichi Yoshikawa

世界的にも認知度が高い高級ワイン、「OPUS ONE(オーパス・ワン)」。ワイン好きなら一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。奥行きのある味わい深さと豊かなアロマで世界中に熱烈なファンを持つアメリカを代表するワインです。ただ気軽に手が出せる価格帯ではないので、実際に飲んだことがある人はそう多くはないかもしれません。 この記事では名実ともに偉大なワインであるオーパス・ワンが造られる産地の特徴や歴史、当たり年、醸造過程に至るまでをソムリエが分かりやすく解説していきます。

オーパス・ワンってどんなワイン?産地の特徴や価格・評判も徹底解説

産地の特徴や価格・評判も徹底解説
赤ワイン2024.05.08

1. オーパス・ワンとは?

最高級カリフォルニアワインとして圧倒的な存在感を誇る「OPUS ONE(オーパス・ワン)」について「産地」「価格」「評価」の3つの観点から解説していきます。

産地はカリフォルニア州のオークヴィル

オーパス・ワン・ワイナリーはアメリカのカリフォルニア州にあるナパヴァレー オークヴィルにあります。ナパヴァレーはカリフォルニアの中でも高品質なワインが造られる銘醸地として知られています。なかでもオークヴィルはナパヴァレーの中央部に位置し、夜間から朝方にかけて濃霧が現れ、夏は最高気温が30度を超え、昼夜の気温差が大きいこともあり、ぶどうの栽培条件として素晴らしいポテンシャルを持っている場所です。
オークヴィルで栽培されるぶどうは大半がカベルネ・ソーヴィニヨンです。豊かな果実味と複雑さを備えているオークヴィルのカベルネ・ソーヴィ二ヨンは、世界でも有数の高品質ぶどうとして知られています。

高級な価格帯で取引されている

オーパス・ワンの価格はヴィンテージによって変動があり、なかでも古いヴィンテージは品薄になることが多く、価格が高騰しています。2023年現在、オーパス・ワンの最新ヴィンテージは2019年で8万円台、2015年のヴィンテージだと9万円台の価格帯で取引されています。オーパス・ワンが高価格なのはワインの味への評価はもちろんのこと、ブランド力が非常に高く、世界中に熱烈なファンを持っているからと言えます。
ワインの価格を決定する要素としては、畑の土地代や造り手、市場価値、生産本数の希少性など多岐にわたります。高級ワインの明確な定義はありませんが、一般的におおむね3万円以上のワインは高級ワインと位置付けられています。

特徴と評価

オーパス・ワンはアメリカを代表する高級ワインとして、フランス・ボルドー地方の5大シャトーやブルゴーニュ地方の名だたる高級ワインと並んで世界から高評価を得ています。詳しくは後述しますが、オーパス・ワンは複数のぶどう品種をブレンドしたボルドータイプのワインで、カベルネ・ソーヴィニヨン主体の重厚な味わいと豊かな果実味が感じられ、飲み込んだ後の余韻が長いのが特徴です。
アルコール度数はヴィンテージによって変わりますが、14〜14.5%程になり、かつタンニンがしっかりしているため、瓶内での長期熟成にも向いています。

2. オーパス・ワンの歴史

オーパス・ワンはアメリカとフランスの2人の巨匠が生み出した世界を代表するプレミアムワインとして広く知られています。そしてオーパス・ワンの歴史を語るうえで外せない人物が「ロバート・モンダヴィ」と「フィリップ・ド・ロスチャイルド」です。
ロバート・モンダヴィは「カリフォルニアの巨人」、「カリフォルニアワインの父」などと形容される世界的にも有名な醸造家です。カリフォルニアのナパヴァレーを代表する「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」のオーナーでもあり、アメリカワインの地位を向上させた立役者としても知られています。

また、フィリップ・ド・ロスチャイルドはフランスの5大シャトーの中でもひときわ豪勢で華やかなワイン造りに定評がある「シャトー・ムートン・ロートシルト」のオーナーです。20年にも及ぶイメージ改革でメドック格付け2級から1級に押し上げたワイン界では伝説と言われる人で、「われ一級になりぬ、かつて2級なりき、されどムートンは昔も今も変わらず」という名言を残しています。

そんな2人が「妥協を許さず品質を追求した、他に類を見ない1本のワイン」を求めて着手したプロジェクトがオーパス・ワンです。1978年にワイナリーが創設され、6年後の1984年にファーストリリースしました。ワインボトルには、東を向いたモンタヴィと、西を向いたフィリップの横顔とサインがデザインされ、その下の稲妻のような形はアイデアを表していると言われています。

名前の由来

オーパス・ワンは音楽用語で「作品番号1番」という意味を持ち、「1本のワインは交響曲、1杯のグラスはメロディのようなもの」という思いが込められています。また、英語圏でもフランス語圏でも読めるようにラテン語にしたと言われており、後述するオーパス・ワンのセカンドラベル「(Overture)オーヴァチャー」も「序曲、前奏」を意味するラテン語です。

3.オーパス・ワンに使用されるぶどう品種

葡萄の画像

オーパス・ワンは単一品種ではなく、複数の品種をブレンドして作っています。ぶどう品種はカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、カベルネ・フラン、メルロ、プティ・ヴェルド、マルベックが使われています。使う品種の比率(セパージュ)は収穫の出来によって毎年変わり、カベルネ・ソーヴィニヨンは70%~90%前後、その他は10%未満で構成されています。主体として使われるカベルネ・ソーヴィニヨンはワインの骨格と深みを生み出し、その他の品種が味わいの複雑性を作ります。以下にオーパス・ワンに使われる各ぶどう品種の特徴を簡潔に解説していきます。

・カベルネ・ソーヴィニヨン

フランス、ボルドー地方原産の黒ぶどう。カベルネフランとソーヴィニヨン・ブランの自然交配で生まれた品種です。世界で最も多く栽培されているぶどう品種で、しっかりとしたタンニンで渋みが強いことが特徴です。味わいにコクがあり、飲みごたえのあるワインになります。

・メルロー

カベルネ・ソーヴィニヨンと同じく、ボルドー地方原産の黒ぶどう。タンニンが滑らかで、まろやかな口当たりに仕上がるのが特徴です。ナパヴァレーで作られるメルローはブラックベリーやバニラ、プラムのようなアロマが感じられます。

・カベルネ・フラン

カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローの親品種にあたり、主に風味の引き立て役としてブレンドタイプに使われることが多い品種です。ミディアムボディで、赤ピーマンやなめし革のニュアンスが特徴ですが、カリフォルニア州で作られるカベルネフランはストロベリージャムのような果実の香りが感じられます。

・プティ・ヴェルド

力強いタンニンと花のようなアロマがあり、ブレンド用に使われることが多い品種です。スペインやフランス・ボルドー地方で多く栽培されており、黒果実やプラムのようなニュアンスを生み出します。

・マルベック

フランスの南西地方カオール地区が原産地ですが、現在では世界のマルベックの栽培面積の75%をアルゼンチンが占めています。色調が濃く、濃厚な味わいとしっかりしたタンニンが特徴です。カオール地区ではその色調の濃さから「黒ワイン」と呼ばれています。

4. オーパス・ワンの醸造過程での徹底したこだわり

オーパス・ワンはぶどうの栽培、収穫から熟成まで徹底したこだわりがあります。収穫から熟成までのフローを以下に解説していきます。

手摘みでの収穫

オーパス・ワンでは、ぶどうの収穫は機械を使わず、すべて手摘みで行われています。少量ずつ箱に入れることで、繊細なぶどうを潰さないよう丁寧に運んでいきます。徹底した温度管理下のなか、最新の機械を用いて未熟や過熟のぶどうを取り除き、ロットごとに専用のタンクを使用し、高品質な味わいを守り続けています。ぶどうを全て丁寧な手摘みで収穫することで、ぶどうが傷みづらく、酸化や腐敗したぶどうを丁寧に除去できるのが特徴です。

グラヴィティ・フロー

グラヴィティ・フローは自然の重力のみでぶどうを移動させる方法で、ポンプによる移動に比べてぶどうへの衝撃が少ないため、ストレスをかけることなく取り扱える特徴があります。収穫されたぶどうは一粒ずつスキャンして、一定の基準を満たしたぶどうのみを選出します。そのぶどうはそのままタンクへいき、自然の重力のみを使用して移動させます。これにより無理な負荷を与えることなく、ぶどうの繊細な個性を損なわずに、エレガントで特色のあるワイン造りを可能にしています。

ガスクロマトグラフィー

オーパス・ワンは「ガスクロマトグラフィー(GC)」という液体に含まれる成分の性質や量(濃度)を測定する分析装置を用いています。ワインに含まれる各成分がどのくらいの量・濃度なのかを正確に数値化できるので、この装置を使うことによって※ブショネを防いでいます。
(※ブショネ=劣化したコルクに起因するワインの品質劣化のこと。汚染されたコルクがワインに悪影響を及ぼし、不快な臭いを発する原因となる)

フレンチオーク新樽での熟成

オーパス・ワンは新樽比率100%のフレンチオークで約17〜19ヶ月間熟成させています。フレンチオークの新樽自体はトーストやバニラのような甘い香りを持ちますが、ワインへの香りの作用は控えめです。樽で熟成させることで味わいの骨格がしっかりとしたワインができるため、19ヶ月の熟成の過程でぶどう果汁の角が次第に取れていき、一体感と複雑性が増していきます。

5. セカンドラベル「オーヴァチャー」とは

「オーヴァチャー(overture)」はオーパス・ワンのセカンドラベルのワインです。 セカンドラベルはファーストラベルでは使用されないぶどう(一般的にはファーストワインよりも樹齢の若いぶどう)を使って造られるワインですが、ファーストラベルと同じ造り手、同じ醸造スタイルでありながらも価格帯が安くなることが多いので、ファーストラベルよりも手に取りやすいのが特徴です。一般的にセカンドラベルはファーストラベルよりも生産量が少ないため、世界的に稀少価値のあるセカンドラベルも多く存在します。
オーヴァチャーは音楽用語で「序曲、前奏」を意味し、マルチヴィンテージ(複数のヴィンテージをブレンド)で造られているため、購入後に瓶内で熟成させなくてもリリース直後から楽しめます。価格は2023年現在、2.7〜3万円前後で入手できます。

6. オーパス・ワンの当たり年

ワインの当たり年とは、ぶどうの生産に適した天候だった年でとりわけ高品質のワインができた年を指します。当たり年は生産される地域によって異なり、さまざまな評論家が独自の視点により採点をしています。オーパス・ワンはパーカーポイントで高得点を獲得している2016年と2018年が当たり年と言われています。
パーカーポイントとは、世界的に有名なワイン評論家である「ロバート・パーカーJr.」が考案したワインの評価方法における得点のことで、世界で最も有名なワインの品質の指標です。パーカーは「神の舌を持つ男」という異名を持っていましたが、2019年の5月にワイン評論家を引退しています。現在のパーカーポイントの評価は、複数のワイン評論家の意見を集約してポイントを決める合議制に移行しています。

7. オーパス・ワンはどこで買える?

世界中のワイン愛好家から人気を集めるオーパス・ワンは近年品薄状態が続いていますが、一部専門店では入手が可能です。ワインは保管状態が大切なので、ネットショップやオークションサイトよりも、安心できるワイン専門店での購入をおすすめします。

8. オーパス・ワン 2019

オーパスワン2019

「オーパス・ワン 2019」は2023年3月現在、最新のヴィンテージです。ワインアドヴォケイトでは過去最高評価を記録し、当たり年と言われる2019年ヴィンテージは、ダークチョコレートやエスプレッソのアロマがあり、熟したブルーベリーやカシス、リコリスのニュアンスも感じられます。きめ細かいタンニンで長期熟成できるポテンシャルを秘めています。

赤ワイン
オーパス・ワン・ワイナリー オーパス・ワン 2019

原産国 アメリカ/カリフォルニア州 ナパヴァレー
品種 カベルネソーヴィニヨン78%、メルロー8%、プティヴェルド6%、カベルネフラン6%、マルベック2%
度数 14.5%

9. まとめ

今回はカリフォルニアの高級ワイン「オーパス・ワン」の産地の特徴や価格、歴史、醸造フローなどを解説しました。ヴィンテージや在庫状況など、気になることがありましたらカジュアルワインから高級ワインまで豊富に取り扱っているカーヴ・ド・リラックスにぜひご相談ください。

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吉川 大智

JSA認定 ソムリエ

バーテンダー、ワインバーのマネージャーを経てワインのPRライターに。過去には40カ国200都市の酒場とワイナリーを訪問した経験あり。