2024.03.01

ピノ・グリとは?味わいの特徴や産地、歴史、合う料理などをわかりやすく解説

 

ピノ・グリという品種をご存知でしょうか?シャルドネやソーヴィニヨン・ブランに比べると知名度は劣るかもしれませんが、近年、世界的に人気が高まっているので、気になる存在ですよね。

ピノ・グリは黒ブドウであるピノ・ノワールが突然変異して生まれた品種で、他の白ワインにはないチャームポイントがあります。こちらの記事では、ピノ・グリの基本知識やおすすめワインをご紹介しますので、ぜひ皆さんのワイン選びにお役立て下さい!

世界中から注目を集める白ワイン ピノ・グリ

ピノ・グリは古くからヨーロッパで栽培されてきましたが、近年は人気に火が付き、世界的に栽培量が増えている品種です。

フランスから広がるピノ・グリの歴史と生産地

フランス・ブルゴーニュ地方が原産と言われており、18-19世紀にはブルゴーニュやシャンパーニュ地方で広く栽培されていました。ブルゴーニュのあのロマネ・コンティに使われていたという逸話まであります。ただ、悲しいことに、収量が少なく安定しなかったことから、これらの地域での栽培は激減しました。

その後、クローンの開発などにより収量が安定するようになり、今ではフランスのアルザス地方、ドイツのバーデン地方、イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州やアルト・アディジェ州などが有名産地として知られています。また、オーストリアやハンガリーといった東ヨーロッパでも栽培が盛んです。

更に、1990年代頃からは、アメリカやニュージーランド、オーストラリア、カナダ、アルゼンチンといった、所謂ニューワールドでの栽培が増え、世界的に人気を博しています。2000年代半ばにはグローバル・マーケットで一番人気の白ワインと評された程で、今ではイタリア やアメリカ で2番目に多く栽培される白ブドウ品種にまで成長した、注目を集める品種なのです。

ピノ・グリの名前の由来

古くからヨーロッパの様々な場所で栽培されてきた品種ということもあり、その呼び方も様々です。「ピノ・グリ」はフランス語ですが、フランスのブルゴーニュ地方では「ピノ・ブーロ」、シャンパーニュ地方では「フロモントー」、ロワール地方やサヴォワ地方、またスイスでは「マルヴォワジー」と呼ばれています。その他にも、イタリアでは「ピノ・グリージョ」、ドイツでは「グラウブルグンダー」や「ルーレンダー」などと呼ばれています。

因みに、フランス語の「グリ」、イタリア語の「グリージョ」、ドイツ語の「グラウ」はすべて灰色という意味で、その名が示す通り、果皮は青や紫がかった灰色や茶ピンク色と形容され、白ワイン品種の中では、トップレベルで果皮の色が濃い品種です。

ボリューム感とフルーティーな果実味に富んだピノ・グリの味わい

黒ブドウのピノ・ノワールが突然変異した品種で、その果皮の色が白ブドウとしては非常に濃いことから、ワインの色も他の白ワインに比べると濃く、鮮やかな黄色から、濃いゴールドやアンバー、カッパー色のものまであります。収穫されたタイミングによって異なりますが、比較的酸味は穏やかでマイルド、果実味も豊かでフルーティーな味わいです。また、糖度が上がりやすい品種でアルコール度数が高く、アタックの強い、フルボディに仕上がることが多いです。

果皮や種子を活かすピノ・グリの醸造法

通常、白ワインは白ブドウから果皮と種子を除いた果汁を発酵させるのですが、ピノ・グリ独特の果皮を活かそうと考える生産者も多くいます。イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州では昔から、ピノ・グリージョの果皮や種子を短時間だけ果汁に漬浸させ、色素や成分を抽出させて造られる「ラマート」と呼ばれるワインが造られてきました。ワインはピンク色で、ロゼのような風貌です。

そして、1990年代からは、赤ワインの製造と同じように果皮と種子を果汁と一緒に醸して発酵させる、オレンジワインの製造も広がりました。白ワインやラマートよりも、色素やタンニンが多く抽出され、ワインの色がオレンジ色がかり、独特の風味があるのが特徴です。尚、ピノ・グリを用いたオレンジワインは、イタリアのみならず、ニュージーランド、アメリカなど、多くの場所に広がっています。

THE CELLAR online storeにて販売中の「ボルゴ・サヴァイアン オレンジワイン アランサット NV」はピノ・グリージョを用いて造られた、イタリア、フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のオレンジワインです。ノンフィルタータイプも販売されているので、旨味をより感じたい方はこちらもオススメです。

ピノ・グリが人気となった理由

2000年代半ば頃は、シャルドネを抜き、世界的に一番人気の白ワインになったと評されるピノ・グリ。イタリアの栽培面積を見ると、1990年から2000年で約2倍に成長したと思ったら、2010年には1990年比で約5倍になっているのだから、その成長っぷりに驚きを隠せません。今では、アメリカ全土でもシャルドネに次いで2番目に多い栽培面積を誇ります。

急拡大の裏に何があったのでしょう。特にアメリカでは、樽香の強いシャルドネの味に飽きた消費者が代替品を探し求めていたところ、ピノ・グリの味わいと気軽に楽しめる価格帯がマッチしたと言われています。また、ピノ・グリと一口にいっても醸造のスタイルは様々で、すっきりタイプから果実味たっぷりのフルボディタイプのものまで幅広くあります。その他にもオレンジワインやスパークリングワイン、辛口から甘口まで。こういったスタイルの幅の広さも人気の一つかもしれません。

生産地域によるピノ・グリ ワインの違い

世界中で栽培されているピノ・グリ。生産地域によって味わいが異なります。凡そ3つのタイプに分けられるかと思いますので、参考になさってください。とは言え、色んなスタイルに仕上げられる品種でもあるので、例外もたくさんあります。慎重に選びたい場合は、お店の方に相談してみて下さいね。

1つ目は、レモンやライムといった柑橘系の香りが主体で、収穫時期を早くすることで酸味を残し、柑橘系の爽やかさとフレッシュ感のある辛口で、気軽に楽しめるタイプです。イタリア北部で造られるピノ・グリージョに多く見られます。またドイツや東欧などの冷涼な地域で造られるものもこのタイプが多いです。

2つ目は、リンゴやネクタリン、桃といった木成り果実のアロマが中心で、濃厚で芳醇なタイプ。暖かい地域で育ったものであればパイナップルといったトロピカルフルーツの香りもあるでしょう。しっかり熟してから収穫されるため、1つ目よりは酸は穏やかな一方、リッチでオイリーな質感を感じつつ辛口に仕上がっているタイプです。フランスのアルザス地方やアメリカ、ニュージーランドなどのものが多く当てはまるでしょう。

3つ目は果実味をしっかり感じつつ甘口に仕上がったもの。レモンや花梨、桃といった香りに蜂蜜やお花の蜜っぽさも感じられるでしょう。甘味にバランスする酸味が心地よい仕上がりです。フランスのアルザス地方で主に造られていますが、ドイツでは「ルーレンダー」と呼ばれる甘口が存在します。因みに「グラウブルグンダー」と表示されるものは辛口タイプが多いです。

ピノ・グリ ワインに合う料理

スタイルによって、合わせる料理も異なります。例えば、前段の1つ目のタイプであれば、サラダやシーフードなどと相性がいいでしょう。2つ目のタイプや、オレンジワインに仕上がっているものであれば、鶏肉や豚肉を使った料理と合わせやすく、お肉料理を食べる時の赤ワイン以外の選択肢としてうってつけ。ローストは勿論、煮込んだものやスパイスを効かせたエスニックな味わいのものも懐深く受け入れてくれます。3つ目のタイプのものであれば、ワイン単体で楽しむもよし、チーズやデザートと共に楽しむもよしです。

ピノ・グリを使用しているおすすめのワイン3選

では、最後にピノ・グリを使用しているおすすめのワインを3本ご紹介します!

ザ・ワインピープル カナーピィ ピノ・グリージョ 2021

イタリアでも南方のシチリア産なので、果実の香りはレモンやライムといった柑橘系に加え、トロピカルフルーツやハーブのニュアンスもあり、果実の熟度を感じると共に、塩味も感じられます。程よい酸味で飲みやすく、ワインを飲みなれていない方でも親しみやすいかと思います。デイリーに楽しめる気軽さもあり、魚との相性も◎です。

ドップ・オ・ムーラン ノエル・アン・アルザス NV

こちらは、アルザス地方で栽培されているリースリングとピノ・グリが半分ずつブレンドされたワインです。リンゴや花梨、洋ナシといった黄色い果実の香りが豊かで、フルーティーな辛口ワインです。リースリングがブレンドされているので、酸味も豊か。生ガキやスモークサーモン、テリーヌなどを食べる時に合わせたいワインです。

アルザスのクリスマスマーケットを連想させる可愛らしいエチケットも特徴的で、クリスマスシーズンは勿論のこと、ちょっとしたホームパーティーに持っていきたくなる一本です。

ノーティラス・エステート ピノ・グリ 2022

こちらはニュージーランドのピノ・グリ。洋ナシや桃といった芳醇な香りを軸にスイカズラといったお花やナツメグや生姜などのスパイス香がほんのり感じられます。豊かな果実味と程よい酸味がバランスよく、ちょうどいい厚みを感じます。一方後口はドライですっきりしていて、飲み疲れしません。天ぷらやしゃぶしゃぶなどと合わせたいですね。
すっきりしたエチケットはプレゼントとしても喜ばれること間違いなしです!

まとめ

黒ブドウであるピノ・ノワールの突然変異で生まれたピノ・グリ。その出自から全般的に白ワインの中では豊かなボディと果実味を持つ品種ではありますが、産地やスタイルによって果実味や酸味、甘辛度などに幅があり、色々と試したくなる品種です。

ぜひ飲み比べをしてみたい!と思われたら、ザ・セラーのサイトを参照してみてください。ピノ・グリを使ったワインを各種揃えています。また、店舗には知識と経験を積んだスタッフが常駐していますので、皆さまのワイン選びのお手伝いをさせて下さい!

THE CELLAR online store

この記事を書いた人

山本 暖子

山本 暖子

WSET認定 Level4 Diploma
JSA認定 ワインエキスパート
学生時代の留学や総合商社勤務時の海外駐在などを通じ、世界各国のワインやその文化に魅了される。
現在は瀬戸内海に浮かぶ大三島で農的暮らしを営みながら、カーヴ・ド・リラックスのECサイト運営やコラム執筆など、ワインに関する情報発信に力を注いでいる。