シェリー酒とはどんなお酒?
シェリー酒とはどんなお酒?

基礎知識やおすすめの飲み方、ワインも紹介!

基礎知識やおすすめの飲み方、ワインも紹介!

THE CELLAR JOURNAL --- writer : Toshiyuki Tsuno

「シェリー酒」と聞いて、どのようなお酒を想像するでしょうか。
シェリー酒は、世界的に評価も高い、スペインを代表するワインの一つです。
しかし日本で口にする機会はそう多くはありません。

本記事では、シェリー酒がどのようなお酒なのかを解説していきます。
シェリー酒の種類や特徴、楽しみ方などご参考になれば幸いです。
「シェリー酒」と聞いて、どのようなお酒を想像するでしょうか。
シェリー酒は、世界的に評価も高い、スペインを代表するワインの一つです。
しかし日本で口にする機会はそう多くはありません。

本記事では、シェリー酒がどのようなお酒なのかを解説していきます。
シェリー酒の種類や特徴、楽しみ方などご参考になれば幸いです。

シェリー酒とはどんなお酒?基礎知識やおすすめの飲み方、ワインも紹介!

基礎知識やおすすめの飲み方、ワインも紹介!
2024.07.19

1. シェリー酒とは?

シェリー酒とは?

「シェリー酒」とは、スペイン南部にあるアンダルシア地方のヘレス周辺で造られる白ワインのこと。
独特の香りや風味があり、ワイン以外のお酒に間違えられることもある個性的なお酒です。

へレスで造られたワインが「シェリー酒」と呼ばれている理由は、農産物や食品などの権利を保護するために「原産地名称保護制度」があり、その制度で規定される「ヘレス(Jerez:西)、ケレス(Xerez:仏)、シェリー(Sherry:英)」という正式名称から来ています。
正式名称は、スペイン語、フランス語、英語でそれぞれ「ヘレス」を意味する地名から取られているのです。

シェリー酒は、製造過程でアルコールを添加し、アルコール度数を高めて造る「酒精強化ワイン」に分類されます。
そのため、通常のワインのアルコール度数は12~15%度前後であるのに対して、シェリー酒は15度以上あります。
酒精強化によりアルコール度数を高めることで、よりコクのある味わいが楽しめるだけでなく、保存性も高めることができます。
ポートワイン、マデイラワイン、マルサラワインと合わせて「世界四大酒精強化ワイン」と呼ばれています。

2. シェリー酒の産地

シェリー酒の産地

シェリー酒は、スペイン南部の地中海に面したアンダルシア地方で造られています。

シェリーの原料となるブドウの生産地域は、そのほとんどが北はグアダルキビール川、南はグアダレーテ川に挟まれたへレスを中心にした一帯にあり、ブドウ畑の中でも特に条件の良い畑がある地域は【ヘレス・スペリオール】と呼ばれます。

それ以外の生産地域は【ヘレス・ソーナ】と総称されます。
ヘレス・スペリオーレは主に以下の3つの都市を中心に分布しており、「シェリー・トライアングル」と呼ばれるシェリー酒の一大産地として知られています。

 □ヘレス・デ・ラ・フロンテラ
 □サンルカール・デ・バラメーダ
 □エル・プエルト・デ・サンタ・マリア

3. シェリー酒の種類

シェリー酒と一言にいってもその種類はバラエティに富んでいます。
その種類の多さゆえに、食中酒としてだけでなく食前酒やデザートワインとしても楽しめることも大きな魅力です。

以下でシェリー酒の種類を紹介していきます。

フィノ

フィノ(Fino)は英語のFineに相当する言葉で、その名の通りシェリーの中では最も繊細なタイプです。
まずは通常酵母を使用してアルコール度数を15度まで高め、ワインの表面に膜を張る産膜酵母”フロール”とともに熟成してから出荷されます。
Alc.15%はフロールがもっとも活動しやすい環境といわれています。

フロールはワインの香りに、やや刺激を感じる独特なイーストのニュアンスなど個性を与えます。
一般的にワインの色は薄く、辛口でライトな口当たりのものが多いのですが、熟成年数によって骨太なものも存在します。
アルコール度数の規定は15%~18%。ただ、最近では世界的な低アルコール志向もあり15%のものが多い印象です。
熟成年数は一般的には3~4年ですが、長く熟成したもの(5~6年)になると味わいの骨格がしっかりしてきます。

フィノはシェリー酒のなかでも幅広い料理に合わせやすく、魚介や野菜を使ったタパス(※)や、意外なところだと中華料理店のクラゲなど軽めの前菜ととても良く合います。
※スペインのバルでよく見かけるタパス。「タパ」はもともと蓋の意味でタパスはその複数形。グラスの中のワインにハエなどが入らないように
 パンで蓋をしたのが始まりで、その後サービスとして生ハムなどをのせて提供するようになり、現在のように独立した小皿料理になった。

マンサニーリャ

フィノと同じ作り方なのですが、サンルカール・デ・バラメダで製造されるものはマンサニーリャ(Manzanilla)と呼ばれます。

サンルカールの町は、湿った涼しい海風を直接受ける特別な場所にあるため、温度と湿度が安定しています。
へレスのフロールが夏と冬に薄くなりますが、気候の安定しているサンルカールのフロールは年中その厚さを保ちやすいのです。
ワインは空気と完全に隔絶された状態で熟成するため、色はフィノよりさらに淡く、大抵の場合フィノより軽やかで繊細に仕上がり、海風の影響か潮のニュアンスが香りにあると言われています。

繊細でフレッシュな印象から、カニや貝などデリケートな旨味があるシーフード料理との相性が大変良いと思います。
フィノと同様、熟成年数などによりボディにはバリエーションが存在します。

オロロソ

オロロソ(Oloroso)とはスペイン語で「におい」を意味する”オロール”からきた言葉。
その名の通り、香り豊かなワインです。

アルコール度数を17度まで高めて酸化熟成させることが特徴。
これによりフロールの発生を抑えることができ、酸化熟成をすることができます。
味わいとしてはフィノと同じく辛口ですが、酸化熟成により色合いも深く、よりコクと力強さのある奥行きのある味わいが楽しめます。

酸味の質もまろやかで、その口当たりから時に甘みのようなものを感じることもあります。
甘く感じる秘密はグリセリンという成分。
その味わいの特徴から、さっぱりとした前菜というよりは赤身肉を香ばしく焼いたり、時間をかけて煮込んだ料理などと相性が良でしょう。黒酢の酢豚などの中国料理もとてもよく合います。

アモンティリャード

フィノを寝かせる段階でフロールを失い、そのまま酸化熟成を経て出来上がるものがアモンティリャード(Amontillado)です。
マンサニーリャが同様に途中でフロールを失い熟成したものは、マンサニーリャ・パサダと呼ばれます。

本来は何らかの理由でフロールを失い出来ていたものですが、最近では人為的にアルコール度数を上げることでフロールの発生を抑えて造られることが多いです。
ワインは琥珀色。酸化熟成によるナッツ様の香りとともに複雑味があり、どこか上品で仄かにフィノで感じるイースト香が潜んでいるようです。そういう意味でフィノとオロロソの中間的なキャラクターであると言えるかもしれません。

地鶏のローストや赤身魚のお造り、ジャーキーのように軽く燻製した商品とも相性が良いです。

4. シェリー酒に使われるブドウの品種

シェリー酒に使われるブドウの品種

シェリー酒に使用が認められている主なブドウ品種は3つです。
使用されるブドウの品種には、それぞれ違いがあり、造られるシェリー酒の味わいにも影響を与えています。
ここではそれぞれの品種にスポットを当ててみたいと思います。

パロミノ

シェリー酒で使用されるブドウ品種のうち、生産量の実に95%以上がパロミノ(Palomino)です。
これはアルフォンソ10世時代の騎士、フェルナン・イバニェス・パロミノにちなんで命名されたとされています。

香りや酸味が穏やかで糖度が上がりにくいというニュートラルな性質をもち、ブドウによる特徴よりも後の熟成による特徴に重きを置いたシェリー酒には適していると云われます。

パロミノには「パロミノ・フィノ」と「パロミノ・デ・ヘレス」の2品種が育成の主流です。
特にパロミノ・フィノは現地のアルバリサ土壌により適しているとされ、生産量も増えています。

ペドロ・ヒメネス

ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez, Pedro Jiménez)は、その多くが極甘口タイプのシェリー酒に用いられるブドウ品種です。

皮が薄く酸味が優しいこのブドウは、生産量が限られますが、フィノやオロロソのスタイル、また個性の少ない辛口のテーブルワインになることもあります。
極甘口タイプのシェリーに仕立てる場合、伝統的には収穫後、天日干し(ソレオ)にして水分をとばし、糖度を高めて使用することで、極甘口の原酒を製造し、酒精強化を行なってからソレラ・システムで熟成させます。

実はシェリーの産地アンダルシア州の北側に位置するモンティーリャ・モリレスが主な産地で、ここのブドウを使用することは法的にも認められています。

モスカテル

正式名称は、モスカテル・デ・アレハンドリア(Moscatel de Alejandria = マスカット・オブ・アレキサンドリア)。
柑橘類や紅茶など芳醇な香りが特徴的で、フレッシュな酸があるため、極甘口に仕立てても、ペドロ・ヒメネスより軽やかなワインに仕上がりやすいようです。
サンルーカルから近い大西洋岸の小さな港町チピオナと、チクラナ・デ・ラ・フロンテラの二つの町が主要産地です。

また、モスカテルはワインだけでなく、生食用や干しブドウとしても親しまれている品種。
チピオナなど品種の産地でシェリーのモスカテルを注文すると、時期によっては生のモスカテルを一緒に出してくれることもあり、「あぁこれって、芋焼酎に黄金千貫の薩摩揚げが添えられるのに似ているな」とやけに親しみを覚えることもあります。

5. シェリー酒の歴史

シェリー酒の歴史

紀元前1100年頃、シェリー酒の産地であるへレスに、フェニキア人によってブドウとワイン造りがもたらされます。
フェニキア人はそのワインを地中海全域と交易を行なうことで知名度を得ていきます。

紀元前138年頃からローマ帝国の支配が始まります。
これにより彼らとの交易はそれまで以上に太いパイプで結ばれることとなり、ローマをはじめ帝国内で評価を高めることに。

西暦711年からスペインがイスラム帝国の配下となる頃にヘレスは「シェリシュ」と呼ばれるようになり、このシェリシュという地名が、現在のシェリーの由来となったとされています。
イスラム支配下の時代はアルコール飲料の規制が次々に行われますが、へレスでは「食料として栄養価の高い干しブドウを生産する」「医療用のアルコールを提供する」ことを名目に、この地にブドウの樹を残すことに成功します。

1264年アルフォンソ10世がへレスを奪還。ワイン造りが再び公に認められることになります。
ワインは経済を立て直す重要な品目とされ、外貨獲得、英国とは引き換えに羊毛も輸入するなど国の発展に寄与します。
アメリカ大陸の発見とともに交易の範囲はさらに拡大するも、海路でのイギリスの海賊行為に悩まされ、輸出は停滞。
驚くべきことに、海賊に掠奪された積み荷の多くはロンドンで販売され、さらに皮肉なことにイギリスの宮廷でシェリーのワインが流行。
(※当時はボトルの生産技術・品質が現在とは違い、まだ低かったために、品質保持の観点からワインの貯蔵は禁じられていました。)
よってワインは現在とは異なるスタイルのワインが生産されています。

1775年、出荷業者は交易や生産の不安定性に異議を申し立て、ここから当時の状況に合わせた改革が多く取り上げられることで、現在のシェリー酒につながる前向きな変化が進むことになります。
変革の甲斐あって19世紀を通して出荷数は増加の一途をたどり、1933年には原産地呼称統制委員会が発足し、シェリー酒としての保存性、高い品質、他にない個性を維持するための基盤が出来上がり現在に至ります。

6. おすすめしたいシェリー酒の飲み方

ここからはシェリー酒の飲み方をいくつか紹介いたします。
シェリー酒はタイプによって味わいのバリエーションがとても豊かです。
それぞれの特徴にあった飲み方を一緒に見つけていきましょう。

タイプ別に温度に気をつけてストレートで飲む

シェリー酒のスタンダードな楽しみ方。
まずはそのままで楽しむのをお勧めします。美味しく飲むために温度に気をつけましょう。

■すっきりとした辛口タイプ(フィノやマンサニーリャ)
 ⇒7~10℃で酸味を爽やかに感じられるように。

■コクのあるタイプ(アモンティリャードやオロロソ)
 ⇒もう少し高めの12℃くらいで香りと味わいのふくらみを楽しんでいただくのがおすすめ。

■ペドロ・ヒメネスなどしっかり甘みを感じるタイプ
 ⇒辛口タイプ同様、少し冷やしてあげると甘みと酸味のバランスが取れて飲みやすいと思います。

カクテルにして飲む

シェリー酒をベースにしたカクテルも飲みやすいものが多くお勧めです。 カクテルにする場合、シェリー酒はフィノやマンサニーリャなど辛口タイプが使われることが多いです。

カクテル名 作り方
Adonis
アドニス
・ドライシェリー2/3
・スイート・ベルモット1/3
・オレンジ・ビターズ1ダッシュ
材料をステアしてカクテルグラスに注ぐ。ベルモットをドライタイプにするとバンブーというカクテルに。
Rebjito
レブヒート
・ドライシェリー(マンサニーリャ)
・7アップ(お好みの炭酸飲料でも)
本来の材料は上記の通りだが、シェリーをフィノにしたり炭酸飲料をアレンジしたり自由に楽しまれている。氷を入れたタンブラーに材料を入れて軽くステアする。好みでカットレモンを入れても。
Sherry Twist
シェリー・ツイスト
・ドライシェリー5/6
・アプリコット・リキュール(無ければ杏露酒でも)1/6
氷を入れた好みのグラスに材料を入れて軽くステアする。レモンピールで香りづけをする。
Sevillian Breeze
セビリアン・ブリーズ
・ドライシェリー30ml
・オレンジジュース30ml
・トニックウォーター適量
材料を氷を入れたタンブラーに入れて軽くステアする。

※ステア:かき混ぜること
※ベルモット:ワインをベースにハーブやスパイスで香りづけをしたお酒
※タンブラー:飲み口が広い筒状の容器。一般的なコップの形状
※オレンジビターズ:19世紀、イギリスの軍医が開発した薬用種。ラムをベースにハーブやスパイスを配合して造られており、その名の通りビターな味わい。

スイーツなどと合わせて飲む

ペドロ・ヒメネスとモスカテルは、甘口のシェリー酒としてデザートワインとしても楽しめます。
アイスクリームにかけて楽しんだり、イチジクのコンポートとペドロヒメネスなどデザートと組み合わせるのもオススメです。

7. おすすめのシェリー2選

シェリー酒はスペインを代表するワインのひとつですが、シェリー酒以外にも良質なワインが豊富にあります。
ぜひご覧になってみてください。

スペイン産ワインについて詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

ボデガス・ヒメネス・スピノラ シェリー ペドロ・ヒメネス ソレラ 1918 NV

ボデガス・ヒメネス・スピノラ シェリー ペドロ・ヒメネス ソレラ 1918 NV

100%手摘み、100%天日干しという非常に手間のかかる昔ながらの製法で造られています。今では100%天日干しというのはこの蔵元だけになりました。
天然の糖分とフレッシュな酸が印象的で極甘口でありながらも上品かつ複雑な余韻が口の中を満たしてくれます。

ベリーズ・オウン・セレクション アモンティリャード

ベリーズ・オウン・セレクション アモンティリャード

ベリー・ブラザーズ&ラッドという英国王室御用達の酒商が蔵元に依頼してオリジナルで造ってもらっているのがこの「ベリーズ・オウン・セレクション」シリーズです。
ソレラ・システムで7年もの熟成を経ることで口当たりの豊潤さや奥行きのある味わいへと仕上がっています。
製造元のエミリオ・ルスタウはシェリー屈指の名門ワイナリーですのでまずはこのワイナリーから、という入り方もおすすめです。

8. まとめ

シェリー酒は、スペインのアンダルシア地方を原産地とする「酒精強化ワイン」の一種です。
産膜酵母「フロール」の有無によって味わいの個性には大きな違いが生まれます。

味わいには辛口から極甘口まで非常に幅広いバリエーションがあり、それゆえに楽しみ方も自在です。
最近では世界的な低アルコール志向もあり、以前よりもアルコールを低めに仕上げる生産者が増えています。
スペインや日本など暑さや湿度がある国では辛口が圧倒的に人気ですが、イギリスなど寒さが厳しい国では甘口もよく飲まれています。

シェリー酒をはじめとした魅力的なスペインワインのご紹介でした。THE CELLAR online storeでお好みのスペインワインを探してみてください。