2023.10.11

スペインワインを楽しむための基礎知識を紹介!ワインの種類や格付けも解説

 

スペインはワイン造りが盛んな国で、栽培面積とワインの輸出量が世界1位、ワインの生産量も世界3位を誇ります。今回はスペインワインの歴史的背景や気候などの基本知識について詳しく解説していきます。おすすめのスペインワインもセレクトしたのでぜひ参考にしてください。

 

スペインワインの基礎知識

スペインはフランス、ポルトガルの国境と接しており、17の自治州全てでブドウが栽培されています。全体の約半分にあたる54%は「メセタ」と呼ばれるスペイン中央部に広がる広大な乾燥高原、「カステーリャ・ラ・マンチャ」で生産されています。
以下にスペインワインの土地、気候の特徴、格付けについて解説していきます。

スペインワインの特徴

スペインはワイン用ブドウの栽培面積と輸出量、生産量ともに世界でトップクラスの生産地です。紀元前200年頃からワイン造りを行っており、現在では多くの世界的に評価されるワインを生産しています。また、世界で3番目に世界遺産登録数が多いこともあり、世界中から多くの観光客が訪れる国でもあります。そのため、ホテルやレストランといったサービス業が最大の産業で、ワインの消費量も非常に多いのが特徴です。後述しますが、瓶内二次発酵で造られるスパークリングワインのカヴァや、世界3大酒精強化ワインに数えられるシェリーなど、世界的にも有名なワインも造られています。

スペインの気候がワイン造りに与える影響

スペインはヨーロッパの中でスイスに次いで山脈が多く、国土の平均標高は660mに達します。ブドウにとっては太陽光が降り注ぎやすく、生育条件がとても良い環境です。地方によって栽培条件が異なり、海洋性気候、地中海性気候、大陸性気候と気候区分が分かれています。土壌も産地によって異なり、モンティーヤは石灰質土壌、プリオラートはスレート(粘板岩)土壌、中央部のラ・マンチャは赤い粘土質で、カナリア諸島は火山性土壌を持っています。このような多様な気候条件の中で、スペイン固有の品種やヨーロッパの品種など、さまざまなブドウが育てられています。

スペインワインの格付け

1926年にリオハ地方が原産地名保護のために統制委員会を設立しましたが、スペインがワイン法を制定したのは1932年、翌年1933年にはワイン法が発効されました。フランスのAOCは1935年に制定されたので、フランスよりも早くワイン法が制定されたことになります。
スペインのワイン法による格付けは6つに分かれています。地理的表示ができないテーブルワインは「Vino」、IGPワインは「Vino de la Tierra」、D.Oよりも規定がゆるめの地域名がついた高級ワインは「V.C」、「D.O」、最も厳しい規定をクリアしたワインに与えられる「D.O.Ca」、さらに、評価の高い単一エステートのみに適用される「ビノス・デ・パゴ」と格付けされています。ちなみにD.O.Caに認定されているのはリオハとプリオラートの2つの地方だけです。

 また、スペインのワイン法では赤ワインと白ワインの熟成基準も具体的に定められているのが特徴です。総熟成期間と樽(アメリカンオークかフレンチオーク)を使用した期間によって「クリアンサ」、「レゼルヴァ」、「グラン・レゼルヴァ」の3種類に分類されます。

 

スペインワインの種類

スペインワインの主要生産地は北部地方、地中海地方、内陸部地方、大西洋地方、南部地方の5つに分かれていて、地方によって風味や香りなどが大きく異なります。今回は特に有名なスペインワインとして外せないスパークリングワインの「カヴァ」、世界3大酒精強化ワインの一つである「シェリー」、スペインを代表するブドウ品種「テンプラリーニョ」について解説していきます。

カヴァ

カヴァはフランスのシャンパンと同じ製法(瓶内二次発酵)で造られており、きめ細やかな泡と華やかな香りが特徴のスパークリングワインです。カタルーニャ語で「洞窟」という意味を持ち、生産量の95%がペネデスを中心とするカタルーニャ州で、なかでもバルセロナ県のサン・サンドゥルニ・ダノイアで85%が生産されています。マカベオ、チャレッロ、パレリャーダの3品種を主に用いますが、シャルドネや他の品種も使用可能です。近年ではミネラルとフレッシュさを兼ね備えたチャレッロ100%のカヴァがトレンドになっています。日本の市場でも比較的リーズナブルな価格帯で流通しているので、幅広い層から支持を得ているスパークリングワインです。

シェリー

シェリーはイベリア半島の南端、アンダルシア州カディス県のヘレス・デ・ラ・フロンテラで造られる世界3大酒精強化ワインの一つです。5段ほど積み重ねられた樽の中で、「ソレラ・システム」という独特の熟成方法を取り入れて造られています。白ワインにアルコールを添加することで酒精強化し、熟成させて造られます。ブドウは辛口はパロミノ、甘口はペドロ・ヒメネス、モスカテルが主要品種です。辛口から甘口まで、幅広い味わいのワインが生まれます。

テンプラニーリョ

テンプラニーリョはスペインを代表する赤ワイン用のブドウ品種です。スペイン国内全てのブドウのうち、栽培面積の21%を占めています。特に、スペイン北部のリオハで主に栽培されていて、オーク樽での長期熟成を経て、エレガントで深みのある味わいが引き出されるのが特徴です。しっかりとしたタンニンがあり、スペインビーフのビステッカやトマトベースの煮込み料理との相性が抜群です。

 

おすすめのスペインワイン3選

おすすめのスペインワインの3選に絞ってご紹介します。リーズナブルで飲みやすいカヴァ、エレガントなブレンド赤ワイン、長期熟成された奥行き深い赤ワインをそれぞれセレクト。スペインワインでお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

オリオル・ロッセール グラン・レゼルヴァ NV

チャレッロとマカベオの2品種を使ったカヴァで、クリーミーで滑らかな泡と、芳醇な奥行き、そして複雑な味わいが楽しめます。ふくよかな果実味があり、魚介系の前菜はもちろん、グリルした野菜や蒸し料理などとの相性が非常に良いです。2000円代前半と気軽に買えるリーズナブルな価格帯も推しポイントです。


アルバロ・パラシオス カミンス・デル・プリオラート 2021

カシスやローストしたベリー系果実のニュアンスに、スパイシーなアロマも感じられます。一見フルボディかと思いますが、口に含むと上品でキレイな飲み口に驚きます。酸味と渋みのバランスがよく、お肉料理やトマトベースのパスタとよく合います。樽熟成由来のバニラのアロマが優しく香るエレガントな飲み口の赤ワインです。

レメリュリ ラ・グランハ・レメリュリ グラン・レゼルヴァ 2012

レメリュリは1960年代から自然派を貫き、2010年からはオーガニック認証も取得したワイナリーです。フレンチオークとアメリカンオークの両方で27ヶ月樽熟成させたこのワインは、ブラックチェリーやブラックベリーの香りに、クローヴやスターアニスのような甘草系スパイスが印象的な一本です。豊かな果実味としなやかな酸味、きめ細かいタンニンが味わいを引き締めながらも長い余韻へと誘います。大きめのグラスで、デキャンタージュをして飲むのをおすすめします。


 

まとめ

スペインは、古くからのワイン造りの歴史と多様な気候が生み出す、幅広い種類のワインが楽しめる国です。その魅力を深く知るためには、ワインの背景や特性、そして料理とのペアリングを楽しむことが鍵となります。これらの基礎知識をもとに、スペインワインの深い世界を堪能してみてはいかがでしょうか。スペインワインというと、日本ではリーズナブルでカジュアルに楽しめるカヴァのイメージが強いですが、まだまだ知られざる素晴らしいワインがたくさんあります。さらに美味しいスペインワインを知りたい方は、ぜひカーヴドリラックのオンラインサイトをご覧ください。

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この記事を書いた人

吉川 大智

吉川 大智

JSA認定 ソムリエ

バーテンダー、ワインバーのマネージャーを経てワインのPRライターに。過去には40カ国200都市の酒場とワイナリーを訪問した経験あり。