
1. Gérard Bertrand / Languedoc-Roussillon ジェラール ベルトラン

元ラグビー仏代表という異例のバックグラウンドを持つカリスマであり、ラングドックのパイオニア。
自然に対し敬意と謙虚な姿勢を持ち、サステイナブルな取り組みを実践している。
2. 亡き父の想いを。ラグビーの道からワイン造りの道へ

ラグビーのフランス代表選手だったジェラール・ベルトランだが、一念発起してヴィニュロンになったのには父の死が大きな影響を与えている。
元々ぶどう畑に囲まれて育ったジェラールは、10歳の頃からワイン造りの手伝いを始め、父からワインへの情熱、仕事の仕方、ラングドックでのワイン造りの取り組み方を学んでいた。
ジェラールが22歳の時に、父ジョルジュが交通事故で突然この世を去ってから、人生をかけたジェラールのワイン造りが始まった。
3.自然に対する思慮ある態度の証

ジェラールが特に大切にしていることは、「自然に対し敬意と謙虚な気持ちをもって接すること。」
サステイナブルで、自然と調和すること、テロワールの様々なニュアンスを反映した偉大なワインを造るため実践しているという。
ラングドック・ルーションに所有する16のドメーヌ(800ha以上)はビオディナミ取得済み、あるいは転換中、残りの8ドメーヌも今後、ビオディナミに変換を予定している。 買いブドウでも異例の長期契約で変換推奨&サポートをしており、今後もオーガニック、ビオディナミ認証取得を行う予定。
フラグシップのクロ・デュ・タンプルには「大地・時・超越」という意味を込め、大地、植物、鉱物と、そして更にはいきものが一つになることで生まれていると考えている。
4.関心の高まる「責任ある消費」との調和

自社畑でのビオディナミの実践。有機農法、ヴィーガン、SO2フリー、蜂に配慮した農法等、自然との調和のもとに造られたワインを広めていきたいとの考えが強い。
自分自身が生み出すワインのみならず、地域のパートナー達、さらにはこれらの環境への問題意識を持ったワインを、ワインを飲む方々にもっと知っていただきたいという考えがある。
彼のそんな持続可能な社会への取組みは大きく評価を受けており、2021年ロバート・パーカー・ワイン・アドヴォケイトが新たに導入したロバート・パーカー・グリーンエンブレムで、持続可能な取り組みに尽力するワイナリーとして認定を受けた。
ワイン造りを通したラングドックの地域貢献、自然との付き合い方は世界に広まりつつある。父の遺志は間違いなく、受け継いでいる。

5.造り手のホンネに迫る?|質問状
Gérard Bertrand氏へのインタビュー
よく覚えているのは10歳の時のこと、初めての収穫を体験した時のことです。父は言いました「なぁジェラール、お前は恵まれているぞ。だってお前が50才の時にはすでに40年分のワイン造りの経験があるんだぞ。」まったくもってその通りで、なんと恵まれていたことか! それから46年経ち、今はちょうど47年目のヴィンテージに取り組んでいます。
嬉しいことにこの夢はかないました!
私自身全体に対して良い影響を与えたいと思っていますし、ヴィニュロンとして自然環境や生物多様性に対しての責任というものを強く意識しています。
『クロ デュ タンプル(輸入元注:ベルトランのトップ キュヴェ ロゼ)』はイセエビ、ホタテ、そのほか味わいのしっかりした魚介類にピッタリです。このワインのお披露目をしたのはパリのレストラン、ギィ サヴォワでしたが、その時は胡椒とタイムで風味付けしたオマール海老を用意してくれました。
『シャトー ロスピタレ グランヴァン ルージュ』はハーブをまぶした骨付きラム肉と絶妙な相性です。このハーブの香りはこのワインが持つ南仏ハーブ風の香りと繋がります。
『シャトー ロスピタレ グランヴァン ブラン』はポワレしたホタテや鯛のような白身魚に合わせると見事です。
『ドメーヌ ド レーグル シャルドネ』はじっくり焼いた、あるいは味付けした鳥肉に。例えばYAKITORIと合わせるのはいかがでしょうか? 高標高のテロワール由来の涼しさがあるので鮨や刺身にも合うと思います。
『ドメーヌ ド レーグル ピノノワール』に理想的な組み合わせは赤味肉でほう。口当たりが滑らかでフルーティーなピノ ノワールですので火を入れた魚料理にも良く合います。
特に魅了されたのは築地の魚市場です。世界広しといえどもこれだけの種類の魚が揃う場所は他のどこにもないでしょう。
一方、肉はわずかしか食べないのですが、熟成肉、あるいは家族でバーベキューをする時に子羊のグリルを頂くことがあります。
日本料理の技をとても尊敬しています。鮨は大好きです。お米を炊く技術、そして様々なネタが見せる味わいの違いに魅了されます。
その他にシャンパーニュも好きですし、友人であるミッシェルシャプティエのワインも大好きです。彼もビオディナミですね。
また、VdN(酒精強化ワイン)の長年のファンでもあります。レジェンド ヴィンテージ コレクションとして1875年~1977年の酒精強化ワインを手に入れました。ボトルを開ける度にその長命さとすばらしさに驚かされます!
毎朝瞑想をするのですが、日の出を目にするだけで、神が造った世界の美しさ、そしてその完璧なバランスに自分が調和し繋がっているのだと感じられます。 クロ デュ タンプルには大地・時・超越というメッセージを込めました。大地、植物、鉱物と、そして更にはいきもの(ラバと共に畑仕事を行っています)が一つになることから産まれるワインです。 夢は壮大に、そして仕事はコツコツとということですね!
発芽から収穫までの畑仕事で、重視しているプロセスやこだわりがあればその理由と合わせて教えてください。
発芽に先立つ重要な作業があります。剪定です。これこそがブドウの出来に最も影響を及ぼす作業と言えます。収穫量、ブドウの質、ブドウ樹がどのくらい長生きできるかがこの剪定によって左右されるからです。これらのことから、剪定にはとりわけ注意を払っています。
年間を通して、土の手入れは細心の注意をもって行っています。ブドウ畑の地表を絨毯のように下草で覆っています。これは雨が降った時に土が流れてしまうことを防ぐため、また水はけを良くするため、そしてその根によって空気が自然な形で土中に取り込まれるようにするためです。春にはこの下草は土で覆ってしまいます。ブドウの樹にとって植物由来の肥料となるのです。
ブドウの生育期間中、我々はビオディナミカレンダーに従って仕事をし、ビオディナミで決められた手入れを行っています。
ワイナリーの設備等、こだわりのポイントはありますか。
自社畑の場合は全て手摘み収穫を行っています。 そして基本的には除梗を行います。 カリニャンとシラーの一部は例外的に全房発酵を行います。
我々が追い求めているのは、各キュヴェがそのテロワールの特徴を、品種の個性を、そして地中海性を表現してくれることです。
赤に関してはボリューム感、柔らかく溶け込んだタンニン、果実の力強い香りを、そして熟成の段階ではワインの複雑さと余韻の長さを重視しています。
主に白ですが、これはオリを攪拌するためバトナ―ジュを行います。これによりよりワインの肌理が細かくなりますし、香りがとても複雑になると思います。
これらの環境への問題意識を持ったワインをワインを飲む方々にもっと知っていただき、問題意識を共有できるよう一層の努力をしたいと思います。
また、この5月にフランスで「La Nature au Coeur(輸入元注:自然を胸に抱いて)」という本を出したのですが、その中でヴィニュロン/起業家としての人生を通して培った私の考えと20年以上にわたり行ってきた環境の為の取組にについて書かせていただきました。
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