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契約農家の葡萄畑。「なんもないでしょ。」と言われたらそうなのですが、勝沼の砂っぽい土壌を識別いただけるだろうか。
山梨県甲州市勝沼、果樹栽培のみならず、国内産ワインの発祥の地として知られる土地で、ダイヤモンド酒造はワイン造りを行なっている。
元々は、近隣の農家がそれぞれの葡萄を持ち寄ってワインをつくる自家醸造施設であったが、生産量が増えたことによって金銭のやりとりが発生すようになると、税務署指導もあって、雨宮家が酒造の権利を農家から買い取り、有限会社化。のちに株式会社化を果たし、現在にいたる。
現当主の雨宮吉男さんは、勝沼や穂坂の契約農家からの葡萄を使って、ワイン造りを行なっている。
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「ゴルフではスコアメイクはしません。バーディーが一つ取れればいいと思っています。」と雨宮さん。すみません、聞いてません。
買い葡萄のみを使用する、無理やりフランス風に言えば、ネゴシアン的なスタイルのダイヤモンド酒造。自身の理想のスタイルに近づくため、マスカット・ベーリーAの究極を目指すため、多くの注文をつけるのではなかろうか、とも思ったが、実のところはそうではない。
「時間をかけて、丁寧に」という美辞麗句を並べないところが、極めて雨宮さんらしい。
さて、「ちんたら」という醸造スタイルを支えるのは、雨宮さんがマスカット・ベーリーAの栽培地として、
信頼を置く穂坂という土地。「マスカット・ベーリーAは100%穂坂(の原料)です。」というその明確な線引きは、雨宮さんが「ちんたらやる」醸造過程における「穂坂の葡萄」の明らかな優位性によるものだ。
▲ 日本ワインコンクールの輝かしい受賞歴は、放任主義的に展示されている。
醸造家であるだけに、多くの銘柄を試飲させてくれた雨宮さん。その中でもやはり強く印象に残ったのは、
「シャンテY,Aますかっと・べーりーA Ycaree cuvee K 2018」と、「シャンテ Y.A Huit 結ひ2018」。
契約栽培先である横内清昭氏の畑の葡萄のみを使用したマスカット・ベーリーAには、他のキュヴェから一つステップアップしたような、締まりのある、ワインとして一貫性が伝わる味わいに仕上がっている。
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フォクシーフレーバーが抑制され、エレガントかつ芯のあるワイン。もちろんベーリーAなんですが、ブルゴーニュなんだよな。と、感嘆する味わい。
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「道に落ちていて邪魔だったので」拾われてきた愛猫のチャド。「茶トラ」→「チャンドラー(ドラマ:Friendsより)」→「チャド」が由来だそうだが、立派なキジトラである。
「ここの農家さんのは良い年悪い年の変化が少ない。他の農家さんは、家族だったり、規模が小さかったりするのですが、ここは土建屋さんなので、ここというタイミングで「わーっと」作業ができるんです。それもあるんじゃないですかね。
あとは、ここの畑の隣の隣が林なんですが、夕方そこから冷えた空気が流れ込むので夜温が下がりやすくて、そういう点もあるのかもしれないですね。」
ダイヤモンド酒造のある種トップキュヴェにあたる、「Ycarre cuvee K」の遅摘みの葡萄のみから作られる限定醸造品の「シャンテ Y.A Huit 結い」は強い凝縮感、しっかりとした骨格が更に加わって、マスカット・ベーリーAの力強さと妖艶さが発揮された一本だ。限定的でこだわりのキュヴェであるだけに、その価格は5,000円(税別)。日本全土を見渡してもマスカット・ベーリーAにおいては、数少ない高額なワインだ。