2024.04.22

ボルドーワインとは?基礎知識やブドウの品種、格付け、合う料理、選び方などを解説

 

ワイン産地の中でも、群を抜いて有名なボルドーワイン。ボルドーと聞くと、格付けや五大シャトーが連想され、超高級ワインというイメージもありますが、格付けされているものは全体の5%程度。大半は、手ごろに楽しめるものです。

本記事では、ボルドーワインの特徴や代表的なブドウ品種を解説した上で、オススメのワイン3本をご紹介していきます。

ボルドーワインの基礎知識

まずは、ボルドー地方の概要やボルドーワインの特徴など、基礎知識をおさらいします。

ボルドー地方とは

ボルドー地方は、フランス南西部にある、大西洋に面する港町です。ガロンヌ川とドルドーニュ川が合流しジロンド川になり、大西洋に流れ着く場所に位置します。この川と海の位置がボルドーを語る上で重要になります。

ボルドーのブドウ栽培面積は広大で、場所によってワインの特徴も異なるため、大きく5つに分けることができます。まずは、ざっくりとした位置関係を頭に入れましょう。

  • 左岸(メドック&グラーヴ地区):ガロンヌ川とジロンド川の左岸(西側)に広がる地域。北側にメドック地区、南側にグラーヴ地区があります。
  • 右岸(サンテミリオン・ポムロール・フロンサック地区):ドルドーニュ川の右岸に広がる地域。
  • コート地区:ガロンヌ川、ドルドーニュ川、ジロンド川の3本の川の右岸に点在する地域。
  • アントル・ドゥ・メール地区:「アントル・ドゥ・メール(2つの海の間)」という名が示す通り、ガロンヌ川とドルドーニュ川の間に挟まれた地域。
  • ソーテルヌ&バルサック地区:ガロンヌ川とその支流のシロン川近郊にある地域。

ボルドーワインの歴史

ボルドーワインの歴史は古く、4世紀の書籍にワイン造りについて記されているほどです。
そんなボルドーワインが飛躍する契機となったのは、1152年に一帯を支配していたアキテーヌ公国の娘アリエノールが、後の英国王と結婚し、ボルドーが英国領となったことです。ボルドーは大西洋に面する港町で、交通の要衝。この地の利を生かして、ボルドー及び近郊で造られたワインがボルドーを経由してイギリスに運ばれるようになります。当時、イギリスではワインが造られておらず、ボルドーワインが王侯貴族に歓迎されたことに加え、ボルドーワインには税制を含めた優遇制度が付されたこともあり、ワイン産業が栄えることになりました。

ボルドーワインの名声を高めることに寄与したもう一つの重要な出来事があります。17世紀当時、ボルドーのワインを買いに来ていたオランダ人によって、広大な湿地だった海沿いの土地が干拓され、ブドウ栽培が可能な土地になっていったことです。尚、現在名声を集めるメドック地区は、この開拓によって生まれた場所となります。

ボルドーワインの特徴

ボルドーはワイン産地としては高い緯度に位置しますが、大西洋沿岸を流れる暖流の影響から温暖な海洋性気候で、緯度の割に冬は穏やかで、夏は暑い環境にあります。

左岸は、大西洋から吹く強い海風や嵐の影響を受けやすい地域ですが、松林のおかげでブドウ畑への影響が抑えられています。また、ガロンヌ川上流から岩が流れ着き、砂利質土壌の場所が多い地区です。年間を通じて降雨量が多いですが、砂利質土壌は水はけがよく、保温性もあることから、ブドウが完熟します。この恵まれた環境から、晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたワインが造られており、力強く、長期熟成型のワインが生まれています。

一方、右岸の多くは粘土質土壌です。粘土質土壌は、砂利質土壌に比べ保水性がよく、温度が低くなることから、早熟で涼しい環境でもしっかり熟すメルロを主体に栽培されています。そのため、造られるワインは、左岸に比べてフルーティーでまろやかなスタイルとなります。

ソーテルヌ&バルサック地域は、暖かいガロンヌ川とその支流の冷たいシロン川が合流する場所にあり、朝に霧が発生し、午後は太陽の光で暖かくなります。この特殊な気候条件によりブドウに貴腐菌がつき、貴腐ワインと呼ばれる極上の甘口ワインが造られます。
コート地区とアントル・ドゥ・メール地区は、コスパのよいバリューワインが多く造られる場所なので、デイリーワイン向けです。コート地区は赤白両方のワインを製造していますが、アントル・ドゥ・メールは辛口白ワインの生産地です。

ボルドーワインの製法

ボルドーは昔から、複数のブドウ品種をブレンドする「アッサンブラージュ」という手法を維持しています。
例えば、左岸の多くはカベルネ・ソーヴィニヨン主体に他の補助品種を、右岸ではメルロ主体に他の補助品種をブレンドするといった具体です。

なぜブレンドするのでしょう?

まずは、味わいのバランスの観点です。ボルドーは雨が多い地域なので、長雨やブドウの病気により、特に晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンを毎年安定した質・量で収穫することが困難です。そこで、メルロやカベルネ・フランのような早熟品種をブレンドし、天候による不作リスクを回避しつつ、品質を維持しているのです。未熟なカベルネ・ソーヴィニヨンはタンニンが鋭く、渋みが前面に出がちですが、メルロをブレンドすることで、ふくよかさやフルーティーさが加わり、ワインの味わいがバランスするといった具合です。

また、単純ですが、複数の品種の香りや味わいが追加されるため、複雑味アップの観点でもブレンドされます。

更に、生産者が求めるスタイルを実現するという観点でもブレンドは重要な役割を担います。例えば、重厚なスタイルを目指すのか、まろやかさを残したいのか、長期熟成型にするのか、早飲みタイプにするのか、等々。そのスタイルを目指し、毎年、ブレンドの比率を変えるのです。

ブルゴーニュワインとの違い

ボルドーとブルゴーニュは、同じフランスの銘醸地であっても、ワインのスタイルが大きく異なります。赤ワインを例にとって、ワインの見た目や味わいの観点で比較してみましょう。

ボルドーの赤ワインはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロを主体に補助品種をブレンドして造られるブレンドワインです。一方、ブルゴーニュの赤ワインはピノ・ノワールまたはガメイで造られる単一品種のワインです。このブドウ品種の違いが見た目や味わいに大きく影響しています。

まずは見た目。ボルドーのワインボトルはいかり肩、ブルゴーニュのワインはなで肩です。ボルドーの赤ワインは、タンニンを多く含みます。タンニンの強いワインは、熟成過程で澱が生じやすいのですが、いかり肩形状であれば、舌触りや味わいに悪影響を及ぼす澱をいかり肩部分で止め、グラスに入れずに済むのです。

ワインの色調は、ボルドーワインは濃く、ブルゴーニュワインは淡いです。
味わいは、ボルドーはミディアム~フルボディで、渋みをしっかりと感じ、力強く重厚なスタイルです。一方のブルゴーニュは、ライト~ミディアムボディで、ボルドーに比べると渋みは穏やかで酸味を感じるエレガントなスタイルです。

ボルドーワインの代表的なブドウ品種

ここからは、ボルドーで生産されるワインの代表的な品種を、赤ワイン用と白ワイン用の品種に分けて紹介していきます。

赤ワイン用のブドウ品種

まずは、赤ワイン用の代表的なブドウ品種を順番に解説していきます。

カベルネ・ソーヴィニヨン

左岸の代表的な品種です。
温暖な気候を好む品種で、晩熟タイプ。小粒で皮が厚いので、ワインの色調は濃く、皮や種由来のタンニンが豊富で、渋みが強く出る品種です。長期熟成タイプでもあります。
特徴は、熟したブルーベリーやカシス、ブラックベリーといった果実の香りとともに、ミントや杉のようなスーッとする爽やかな香りがあることです。樽と相性が良く、使用される場合にはヴァニラやナツメグ、トーストのような風味もあります。熟成が進むと、腐葉土やなめし皮といった複雑味が加わります。
果実味、酸味、タンニンともに豊かで、アルコールによるヴォリュームもあり、力強く、リッチな印象を持つでしょう。詳しくはこちらをご参照下さい。

メルロ

右岸の代表的な品種です。
カベルネ・ソーヴィニヨンに比べ、湿度が高く冷涼な環境で育つ他、カベルネ・ソーヴィニヨンよりも早熟です。果実は大きく、果皮は薄めなので、果実味豊かでタンニンの柔らかいワインですが、糖度が上がりやすいので、アルコールの豊かな仕上がりになります。
アルコール由来のヴォリューム感はありますが、イチゴ、プラム、プルーンのような果実味が強く、酸味が穏やか、タンニンも柔らかなので、舌触りも滑らかで若いうちから飲みやすいです。
詳しくはこちらをご参照下さい。

カベルネ・フラン

カベルネ・ソーヴィニヨンよりも早熟で、涼しい環境でも熟すことが可能な品種です。
色調は淡く、赤スグリやラズベリーといった赤系果実の香りやスミレのようなお花の香りがあります。アスパラガスやピーマンといったグリーンな香りがあることや酸味が豊かなことも特徴的です。
ブレンドされることで、赤系果実のチャーミングさ、スミレの可憐さ、グリーン・ノートのフレッシュが足され、豊かな酸味で上品な印象も与えます。タンニンも穏やかなので、カベルネ・ソーヴィニヨンよりも熟成が早く進み、飲み頃を調整することも可能です。

白ワイン用のブドウ品種

次に、白ワイン用のブドウ品種を順番に解説します。

セミヨン

耳にしたことがない方もいるかもしれませんが、ボルドーを代表する白ワイン品種です。
香りは穏やかで、リンゴやレモンに加え、草っぽいグリーン・ノートもあります。樽との相性もよく、樽発酵・熟成を経たものは、ヴァニラやスパイス香も。また、熟成を経るとナッツや蜂蜜といった香りが加わります。酸味は穏やかで、少しオイリーな質感を伴う厚みを感じられます。
ボルドーでは主に3つのスタイルに仕上げられます。
まずは、フレッシュで軽やかな辛口白。ソーヴィニヨン・ブランとブレンドして造られることが多く、ソーヴィニヨン・ブランの高い酸味や強めのアロマを若干穏やかにすると共に、ワインに厚みを加え、全体に纏まりのある仕上がりになります。
同じ辛口タイプでも、主にグラーヴ地区で見られるタイプは重厚感のある仕上がりになります。こちらもソーヴィニヨン・ブランとブレンドされることが多いですが、樽発酵・熟成されることで、レモン、グレープフルーツ、リンゴや草っぽさに加え、クリーミーさやヴァニラ、スパイスといった複雑味があります。また、このタイプの白ワインは長期熟成も可能なものが多いです。
最後はソーテルヌやバルサック地区で造られる甘口です。セミヨンは果皮が薄く、特定の環境が揃うと貴腐菌が付きやすいという特徴があります。この特徴を活かし、貴腐ブドウによる甘口ワインが造られます。ソーヴィニヨン・ブランとブレンドされることもありますが、セミヨンが主体で、ハチミツやドライフルーツのような甘い香りとワックスのような粘性のあるワインに仕上がり、長期熟成も可能なものが多いです。

ソーヴィニヨン・ブラン

ボルドーの白ワイン用品種で、もう一つ忘れてはいけないのがソーヴィニヨン・ブランです。
冷涼な気候から比較的温暖な気候まで、幅広い場所で栽培されている品種です。育つ環境によって香りに幅があり、冷涼な場所ではレモンやライム、グレープフルーツといった柑橘や青リンゴといった爽やかな香り、温暖な場所であればメロンやパッションフルーツ、マンゴーと言ったトロピカルフルーツの香りがあるでしょう。いずれのケースも、ハーブや草っぽさ、アスパラガスやピーマンといった野菜を思わせるグリーン・ノートが特徴的です。酸味も高く、フレッシュで清涼感に溢れたワインになります。
ボルドーではセミヨンとブレンドされることが多く、辛口でも甘口でもブレンドに豊かな酸味やフレッシュ感のあるアロマを与える重要な役割を果たしています。近年は、世界的な需要もあり、ボルドーでもソーヴィヨン・ブラン単体で仕上げられる辛口白も増えています。
詳しくはこちらをご参照下さい。

ミュスカデル

ボルドーでは、白ワインのブレンドの補助的な役割で使われる品種です。ソーテルヌなどの甘口のブレンドに用いられることが多いですが、辛口のブレンドに用いられることも。お花やフレッシュなブドウといった特徴的な香りがあります。ミュスカやミュスカデなどの似た名前の品種もありますが、異なる品種です。

ボルドーワインの格付け

フランスを代表する2大ワイン産地である、ブルゴーニュとボルドーにはそれぞれ格付けシステムが存在しますが、根本的な考え方に違いがあります。ブルゴーニュでは「畑」が格付けの対象になる一方、ボルドーでは「生産者」が格付けの対象になっているのです。また、ボルドーでは、地域網羅的ではなく、地区それぞれに独自の格付けが存在しています。
ここからは順番にその格付けを解説していきます。

メドック格付け

まずはボルドーの中でも最も多くの高級ワインを造る地区として有名なメドックの格付けです。五大シャトーもこの格付けで定義されており、ボルドーの格付けと聞いて真っ先に頭に浮かぶものですね。メドック格付けは1855年のパリ万博博覧会開催の際に、ナポレオン3世の要請を受けて制定されたもので、赤ワインが対象です。以降、1973年に一度だけ改定され、シャトー・ムートン・ロートシルトが2級から1級に昇格しましたが、これ以外の見直しは一切行われていません。
この格付けは第1級から第5級までの5つの等級に分けられ、メドックから60シャトー、グラーヴから1シャトーの合計61シャトーが名を連ねています。

グラーヴ格付け

グラーヴは、ガロンヌ川左岸に広がる地区に位置し、圧倒的に赤ワインの生産量が多いボルドーの中で、赤、白、甘口と様々なスタイルのワインを産出している特徴のある地域です。
グラーヴ格付けは、メドック格付けから約100年後の1953年に発表されたもので、階級分けはなく、赤ワインで7シャトー、白ワインで3シャトー、赤・白両方で6シャトーの計16シャトーがリストされています。
なお、メドック格付けで第1級に選定されたシャトー・オー・ブリオンもこの格付けに入っています。

ソーテルヌ格付け

1855年の格付けでは、白ワインも格付けされています。
ガロンヌ川左岸と支流のシロン川に挟まれたソーテルヌとバルサック地区の格付けで、対象は甘口白ワインです。
別格扱いで最高クラスの「プルミエ・クリュ・シュペリュール」にシャトー・ディケムが選ばれた他、第1級に11シャトー、第2級に15シャトーの合計27シャトーが格付けされています。

サン・テミリオン格付け

1855年のメドック格付けの100年後の1955年に制定された、右岸にあるサン・テミリオン地区の赤ワインを対象とした格付けです。格付けは3階級に分かれていて、上からプルミエ・グラン・クリュ・クラッセA、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセB、グラン・クリュ・クラッセと続きます。
メドック格付けとは対照的に、凡そ10年毎に見直しが行われて、直近では2022年に見直され、85のシャトーが格付けを取得しています。定期的に見直されているので信ぴょう性が高いと言える一方、格付けの審査基準を疑問視する生産者が格付けから脱退するなど、公平な審査の難しさが浮き彫りになっているという側面もあります。

ボルドーワインに合う料理

ボルドーでは、赤ワインの生産量が多く、AOCワイン生産量の約85%を占めますが、赤ワイン以外にも白ワイン、ロゼワイン、甘口の貴腐ワイン、スパークリングワインと様々なスタイルのワインが製造されています。
ワインの種類によって合う料理は異なりますが、ここでは生産量の多い赤ワインと白ワインに絞って順番に解説してきます。

ボルドーの赤ワインに合う料理

ボルドーの赤ワインは基本的には異なる品種をブレンドして造られていますが、主要ブドウ品種によって合わせる料理が異なってきます。
例えば、左岸で多くみられるカベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤ワインの場合、タンニンが豊富で渋みがあるので、お肉の旨味や脂身との相性が抜群です。牛肉のステーキやローストビーフ、ビーフシチューの他、ラムチョップなどの少し癖のあるお肉とも合わせやすいです。ワインそのもののボディがしっかりしているので、お料理の味付けも濃いものと相性がよいかと思います。

一方の右岸で多く生産されているメルロ主体の赤ワインは、プラムやチェリーといった可愛らしいアロマと共に程よい渋みがあり、全体的に丸みを感じます。ですので、同じお肉料理でも、少し甘みやマイルド感があるもの、例えばハンバーグやハヤシライス、オムライスなどの日本の洋食屋さんで出てきそうなメニューや、肉じゃがや牛肉のオイスターソース炒めのような家庭料理に合わせても美味しいかと思います。

ボルドーの白ワインに合う料理

ボルドー・ブランと称される辛口と、ソーテルヌに代表される甘口があります。
まずはボルドー・ブランから。ソーヴィニヨン・ブラン主体でフレッシュなスタイルであれば、華やかなアロマやきりっとした酸味、ソーヴィニヨン・ブランのハーブのニュアンスと相性がいいサラダやカルパッチョなどと合わせたいですね。和食との相性もいいので、酢で〆た魚や貝の酒蒸し、天ぷらなどとも合うでしょう。
同じボルドー・ブランでも、セミヨンの比率が多く、また樽発酵・樽熟成されているようなものであれば、もう少しコクのある料理と合わせたいところです。クリーム系ソースがかかった鶏肉や魚とマッチするでしょう。

そして世界3大貴腐ワインに数えられるソーテルヌは、蜂蜜やマーマレード、アプリコットジャムのような芳醇なアロマがあり、味わいは強い甘味とそれにバランスする酸味が心地よい魅惑的な飲み物です。ソーテルヌとのマリアージュでまず思い浮かぶのがフォアグラ。鉄板な組み合わせとして有名ですが、日々の生活でフォアグラはなかなか出てこないですよね…。ブルーチーズとの相性も非常に良いのでぜひ試してください。デザートとの相性もよく、アイスクリームやチーズケーキと合わせるのも贅沢でいいですね。

ボルドーワインの選び方

フランスの中でラングドック・ルーシオン地方に次いでワイン生産量が多いボルドー。7,000を超えるシャトーが存在するとも言われています。また、様々なスタイルのワインが造られているので、数多くあるワインの中から何を選んでいいのか悩んでしまいますよね。そこで、ここからは選ぶ時のポイントとして、格付けと土地ごとの特徴を解説していきます。

格付けで選ぶ

まずは、格付けを活用する方法です。上段で説明した通り、ボルドーには地区毎に大きく4つの格付けがあり、格付け毎に等級が分かれています。例えばメドック格付けでは、第1級から第5級までの5つの等級に分けられ、合計61シャトーが名を連ねています。格付けに選ばれるだけでも凄いことですが、最高級を求めたいと思われる場合には、等級の上位シャトーからワインを選ぶという選択肢があります。

最高級ワインと称される五大シャトーは気になるけど、値段が高過ぎて手が出せないこともありますよね。そんな時に検討したいのが、セカンド・ワイン(セカンド・ラベル)やサード・ワイン(サード・ラベル)と呼ばれるワインです。例えば樹齢が若いブドウを使っていたり、天候不良の年でベストなブドウではなかったり、トップ・キュヴェの畑に比べると見劣りする区画のブドウを使っていたり…そのシャトーのファースト・ラベルと称することはできないものの、ファースト・ラベルと同様の基準で造られているワインでもあり、他のワイナリーのファースト・ラベルよりも高品質なケースも多々あります。ファースト・ラベルに比べるとお値段もだいぶ抑えられていますし、より気軽に楽しめるラインナップとなります。

また、スーパー・セカンドと呼ばれるワインもあります。明確な定義があるわけではなく、愛好家や専門家による評価によって伝えられているものですが、メドック格付け2級以下ではあるものの、五大シャトーに匹敵する味わいだと称されているものです。この中から選んでみるというオプションもありますよね。

いやいやいや…高級格付けワインじゃなくていいので、外したくない!という方もおられますよね。そういう方には、1855年の格付けには選ばれなかったものの品質が高いと称されるメドック地区のシャトーを格付けした「クリュ・ブルジョワ」や、家族経営シャトーの中で品質が高いと称される「クリュ・アルティザン」の格付けワインから選ばれると安心かと思います。

土地ごとの味わいで選ぶ

上段の「ボルドーワインの特徴」で説明した通り、ボルドーワインは大きく5つの地区に分類されます。造られるワインの種類や味わいに違いがあるので、どの場所で造られたワインかを軸に選ぶという選択肢もあります。

  • 左岸(メドック&グラーヴ地区):メドック地区はカベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤ワイン、グラーヴ地区は赤ワインの他、樽発酵・樽熟成を加えた辛口白ワインも有名。力強く長期熟成型のワインを多く輩出。
  • 右岸(サンテミリオン・ポムロール・フロンサック地区):メルロ主体の赤ワインで有名。フルーティーでまろやかな味わいのワインが特徴的。
  • コート地区:赤ワイン、白ワイン共に製造。特に価格が抑えられた赤ワインが多く、赤のデイリーワイン向け。
  • アントル・ドゥ・メール地区:ソーヴィニヨン・ブラン主体のフレッシュな辛口白ワインの産地で、コスパもよく、白のデイリーワインを探すときにうってつけ。

ソーテルヌ&バルサック地区:世界三大貴腐ワインと称される極甘口ワインの名産地。

おすすめのボルドーワイン3選

それでは最後に、おすすめのボルドーワインを3本紹介していきます。

ムーラン・ド・デュアール 2019

左岸メドック地区の格付け4級、デュアール・ミロンのセカンドラベルです。
例年、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロをそれぞれ55-60%、40-45%の割合でブレンドして造られるワインは、正統派ボルドーといった仕上がり。色調は濃く、チェリーやカシスなどの熟した果実香とリコリス(甘草)やキャラメルを思わせるニュアンスもあります。アタックはしっかりとありますが、繊細でシルキーなタンニンと口当たりの柔らかさが秀逸で、特別な日に、美味しい赤身のお肉と合わせたい一本です。

クロ・フロリデーヌ 2021

現代ボルドーの白ワインに革命を起こしたと称される、故デュブルデュー教授が所有していたシャトーによる白ワインで、ボルドー・ブランのお手本のような一本です。
ソーヴィニヨン・ブランのみずみずしいフレッシュな果実味とセミヨンのボディがうまく融合され、レモンやグレープフルーツ、白桃の熟した果実香に、クリーミーなバターのニュアンスや樽熟成によるまろやかな口当たりが加わり、密度と骨格を感じます。
ワイン単体で楽しむこともできますし、様々な食事にも寄り添ってくれるので、汎用性の高いワインです。

シャトー・ボーモン 2020

最後は左岸のオー・メドック地区のものです。ブレンド比率は、カベルネ・ソーヴィニヨン51%、メルロ41%、プティ・ヴェルド8%。カベルネ・ソーヴィニヨンの力強さと優美なタンニン、メルロの熟した果実香、プティ・ヴェルドの黒系果実とスパイシーさがうまくワインに溶け込んでいます。色調は深みのあるレッドで、力強さとエレガントさの両方が表現された、メドック・ワインの良さを堪能できる一本です。

まとめ

ボルドーワインは、全体的には力強い印象のものが多いですが、左岸と右岸で大きく雰囲気が異なるのも魅力ですし、その他の地区でも魅力的なワインが沢山作られています。
ザ・セラーでは、今回ご紹介したワイン以外に多数のボルドーワインを取り揃えています。オンラインストアも店舗も両方ありますので、皆さまのご都合のよい媒体で、ワイン選びのサポートをさせて下さい!

THE CELLAR online store

この記事を書いた人

山本 暖子

山本 暖子

WSET認定 Level4 Diploma
JSA認定 ワインエキスパート
学生時代の留学や総合商社勤務時の海外駐在などを通じ、世界各国のワインやその文化に魅了される。
現在は瀬戸内海に浮かぶ大三島で農的暮らしを営みながら、カーヴ・ド・リラックスのECサイト運営やコラム執筆など、ワインに関する情報発信に力を注いでいる。