長野ワインの特徴とは?
長野ワインの特徴とは?

歴史や代表的な産地、ブドウ品種などを解説

歴史や代表的な産地、ブドウ品種などを解説

THE CELLAR JOURNAL --- writer : Haruko Yamamoto

長野県は、山梨県に次ぐ日本ワイン生産量とワイナリー数、そしてワイン用ブドウの収穫量では全国トップを誇る一大ワイン産地です。ワイン造りの歴史は長く、特に2000年以降に飛躍的な拡大を見せています。
長野県のワインがどのようにして発展していったのか?複数ある産地の特徴はどういうものなのか?ブドウ品種の特徴はどういったものなのか?これらが分かるとワイン選びがぐんと楽しくなるはず!本記事では細かく解説していきますので、ぜひお役立て下さい。
長野県は、山梨県に次ぐ日本ワイン生産量とワイナリー数、そしてワイン用ブドウの収穫量では全国トップを誇る一大ワイン産地です。ワイン造りの歴史は長く、特に2000年以降に飛躍的な拡大を見せています。
長野県のワインがどのようにして発展していったのか?複数ある産地の特徴はどういうものなのか?ブドウ品種の特徴はどういったものなのか?これらが分かるとワイン選びがぐんと楽しくなるはず!本記事では細かく解説していきますので、ぜひお役立て下さい。

長野ワインの特徴とは?歴史や代表的な産地、ブドウ品種などを解説

歴史や代表的な産地、ブドウ品種などを解説
2024.07.11

1. 長野ワインの特徴とは?

長野ワインを理解する上で、まず押さえたいのがブドウ栽培環境です。長野県は本州の中央部に位置し、海から離れ、周囲を山脈で囲まれていることから、年間降雨量が少ない、日照時間が長い、昼夜の寒暖差や年間の気温差が大きい、斜面で水はけのよい土壌環境といった盆地特有の環境です。この環境がブドウ栽培に適していて、糖度と酸度の両方が高い位置でバランスし、色付きもよく、果実の凝縮感のある質の高いブドウが栽培されているのです。
また、長野県は全国でも4番目に面積が大きく、南北に長いのが特徴。緯度の差や、山岳地帯ならではの標高差もあり、場所ごとの気候環境が異なるので、様々な品種のブドウが栽培されているのも特色として挙げられるでしょう。個人ワイナリーの数が多いので、ワイナリー毎にスタイルが異なるのも面白い点です。

質の高い、多様なブドウ品種で造られる高品質ワイン。だからこそ、海外の要人が日本を訪れる際の公式行事でも長野ワインが頻繁に供されています。例えば、2016年のG7伊勢志摩サミットや2017年のアメリカ大統領来日時の晩餐会、2019年のフランス大統領夫妻との晩餐会などで長野ワインが多数選ばれ、好評を博したとのこと。直近の2023年G7外相会議は、軽井沢で行われたこともあり、非常に多くの長野ワインが提供されています。ワイン銘醸地の要人達にも胸を張って提供できる品質なのが、長野ワインなのです。

2. 長野ワインの歴史

長野ワインが現在のような高い評価を得ることは、一朝一夕に成しえることではありません。長野県でワイン用ブドウの栽培が始まったのは、今から130年以上前の1890年頃。塩尻市桔梗ヶ原でいくつかの品種が栽培されましたが、寒さに強いアメリカ系品種のコンコードの栽培が多数を占めました。

戦中、戦後は甘味を付けたワインが主流で、質も高いとは言えませんでしたが、1960年代後半から大手メーカーが進出し始め、1970年代頃からは国内のワイン消費量も増え、辛口ワインへシフトしていきます。
桔梗ヶ原でのワイン造りも転換期を迎え、耐寒性のある欧州系ブドウ品種として、メルロの栽培を開始します。そして、1989年に桔梗ヶ原のメルロが国際ワインコンクールで金賞を受賞したことで、メルロの産地として注目され、栽培面積が増えていったのです。

2000年に入ると個人ワイナリーが増えるようになり、2013年には長野県が「信州ワインバレー構想」を策定しワイン産業が大きく推進、現在は山梨と肩を並べる程の規模まで成長を遂げているのです。

3. 長野県の代表的な産地

長野県の代表的な産地

ここからは、「信州ワインバレー構想」で分類されている、代表的な産地5つを順番に解説していきます。

桔梗ヶ原ワインバレー

長野県のほぼ中央に位置し、奈良井川とその支流に挟まれた地域です。長野県でのワイン造り発祥の地である塩尻市が含まれます。老舗ワイナリーが多い場所ですが、近年は小規模ワイナリーも増えつつあります。
ナイアガラやコンコードなどのアメリカ系品種の栽培が多いですが、メルロを長野県に根付かせた場所として有名。近年はメルロ以外にも、シャルドネを始めとする欧州系品種の栽培も盛んです。

千曲川ワインバレー

長野県の北東部に位置し、長さ約100kmに及ぶ千曲川の上流から下流に広がります。上流にある上田平と佐久盆地の周辺には東御市や小諸市、上田市など、下流の長野盆地周辺には長野市や須坂市、高山村など、多くの市町村が含まれるエリアです。
生育期間の雨量が少ない、日照時間が長い、水はけのよい土壌というブドウ栽培に適した条件が揃います。特に上流地域の標高は高く、冷涼ながら太陽の光がよくあたる斜面で栽培され、ブドウが熟すと共に酸味も残るスタイルとなります。
欧州系品種の栽培が盛んで、気候や標高に合わせて様々な品種が栽培されています。最近は個人のワイナリーが増えていて、ワイナリーの個性を楽しみたい方におすすすめの場所です。

日本アルプスワインバレー

松本市から安曇野市に広がるエリアで、北アルプスが望める風光明媚な場所です。長野県のブドウ栽培の発祥の地とも言われるほど果樹栽培の歴史が長く、日照時間が長く水はけがいいといった環境を活かしてワイン用ブドウの畑も点在しています。ナイアガラ、コンコード、デラウェア、巨峰など、生食用ブドウを用いたワイン醸造が多いですが、最近は欧州系品種の栽培も進んでいます。

天竜川ワインバレー

長野県南部に位置し、東は南アルプス、西は中央アルプスに挟まれた盆地の中央を流れる天竜川の流域にあります。水はけのよい土地を利用し、古くから果樹栽培が盛ん。他の地域に比べてワイナリーの数は少ないですが、ワイン用ブドウの栽培が進んでいます。
欧州系ブドウの栽培も進んでいますが、山ブドウやヤマ・ソービニオンといったヤマブドウ系の日本固有品種のブドウを使ったワインが造られていて、個性が光るエリアです。

八ヶ岳西麓ワインバレー

県内でも最も標高の高いワイン用ブドウ栽培場所として、最近産地形成されたエリアです。八ヶ岳と南アルプスに挟まれた標高800〜1000 m 超の、八ヶ岳から伸びる扇状地を中心にワイン用ブドウが栽培されています。 標高が高く非常に冷涼な場所ですが、昨今の温暖化の影響もあり、ピノ・ノワールやピノ・グリといった冷涼な気候に合ったヨ欧州系品種を中心に栽培するワイナリーが増えてきており、注目を集めつつあります。

4. 長野県で栽培されている主なブドウ品種

長野県で栽培されているブドウ品種は50を超えますが、ここでは、主なブドウ品種を順番に解説していきます。

長野県で栽培されている主なブドウ品種

カベルネ・ソーヴィニヨン

世界的にも有名な、赤ワインの代表的な品種。色調は濃く、濃厚な果実味を感じると共に、渋味や酸味も豊かです。また、栽培される産地によって香りに大きな幅が出るのも特徴。日本での総栽培面積は少ないですが、長野県内は増えつつあります。

カベルネ・ソーヴィニヨンについて詳しく知りたいかたはこちら

メルロ

フランスのボルドー地方が原産の赤ワイン用品種で、世界でも広く栽培されています。果実味たっぷりで舌触りが滑らかなのが特徴。近年では日本でも広く栽培されていていますが、長野県の桔梗ヶ原バレーにある塩尻は、メルロを長野県に根付かせた場所として有名で、国際的にも評価が高い名産地です。

メルロについて詳しく知りたいかたはこちら

コンコード

長野県で最も多く栽培されている赤ワイン用品種で、白ブドウ品種のナイアガラに次ぐ栽培量を誇ります。アメリカ系品種で、 軽やかで渋みの穏やかなフルーティーな味わいが特徴です。国内では、ほぼ長野県の桔梗ヶ原ワインバレーで栽培されています。

マスカット・ベーリーA

日本のワインの父と呼ばれる川上善兵衛によって開発された赤ワイン用品種。アメリカ系品種と欧州系品種の交配品種で、ワインの色調は濃く、キャンディのような甘い香りと穏やかな渋みが特徴的です。 生食用にも使用されるので、日本人にとってはなじみ深い品種と言えるでしょう。

シャルドネ

世界的にも特に知名度が高い、白ワインの代表的品種。栽培される場所や醸造手法がワインの味わいに反映されやすいので、土地や作り手毎に異なる味わいが楽しめます。 日本各地で栽培されていますが、特に長野県の千曲川ワインバレーがシャルドネの産地として注目を集めています。

シャルドネについて詳しく知りたいかたはこちら

ソーヴィニヨン・ブラン

世界中で栽培される白ワイン品種で、ハーブや青草のような青っぽさが特徴的。爽やかでフルーティー、すっきりした飲み口のワインです。日本での栽培面積は比較的少ないですが、増加傾向にあります。日本では冷涼な環境で育てられることが多く、長野県で多く栽培されています。

ソーヴィニヨン・ブランについて詳しく知りたいかたはこちら

ナイアガラ

アメリカ系の白ワイン品種で、長野県で最も多く栽培されています。生食用でもあり、独特の甘い華やかな香りがあります。甘さを残したスタイルや、スパークリングワイン、ヌーヴォーといった様々なスタイルで提供されています。

竜眼・善光寺ブドウ

元々欧州系品種だったブドウが中国を渡って、「竜眼」という名前で日本に入ってきたと言われている白ワイン用品種。古くから長野県善光寺周辺で栽培されていたため、「善光寺ブドウ」とも呼ばれています。
甲州種と良く似た爽やかな酸味と穏やかな飲み口が特徴で、和食との相性が良いです。

5. 長野県原産地呼称管理制度(GI長野)とは?

長野県は2002年に「長野県原産地呼称制度(GI)」を創設し、品質の確保、地域ブランドの確立に力を注いでいます。「GI長野」とラベル表記されている長野ワインを手に取ったことがある方もおられるかもしれません。
「GI長野」のワインは「ブドウ品種ごとの本質的な香味の特徴がはっきりと現れたワイン」という特性が規定されていますが、原料や醸造過程などに規定がありますので、代表的な事例をご紹介します。

 原料に関する基準:
✓長野県内産のブドウであること。
✓対象となる品種(50品種)と、品種毎の糖度基準について規定。
 醸造に関する基準:
✓長野県内で製造、貯蔵、瓶詰めが行われていること。
✓アルコール度数は7.5%以上20%未満。
✓補糖、補酸等に一定の制限あり。
✓醸造年の異なるワインのブレンドは不可。
✓使用可能な添加物は所定量の酸化防止剤(亜硫酸塩)のみ。
✓色調、香り、味、バランスの4項目に関する官能審査あり。

「GI長野」と認定されたワインには紺色または赤色のシールが、より厳しい基準を満たしたものは「GI長野プレミアム」という金色のシールが貼っていますので、シールを頼りにワインを選んでみてもいいですね。

長野県原産地呼称管理制度(GI長野)とは?

6. おすすめの長野ワイン3選

ここからは、おすすめの長野ワインを3つ順番に解説していきます。

ドメーヌ・コーセイ プライム・シリーズ 601 信州メルロ 2021

ドメーヌ・コーセイ プライム・シリーズ 601 信州メルロ 2021

大手ワインメーカーのシャトー・メルシャンから独立した味村興成氏が、メルロに特化したワイン造りを行っています。「プライム・シリーズ」は、規則性がなく割り切れない素数のように神秘的で美しいワインを目指したシリーズです。
フレンチオーク由来のエレガントな樽香の余韻を感じるワイン。今すぐでも楽しめますが、瓶熟成を経ることで更に複雑味が増すことが期待できる一本です。
ドメーヌ・コーセイ/味村氏について詳しく知りたいかたはこちら

安曇野ワイナリー カベルネ・ソーヴィニヨン 2022

安曇野ワイナリー カベルネ・ソーヴィニヨン 2022

安曇野市にある自社畑のカベルネ・ソーヴィニヨンのみを用い、7ヶ月間樽熟成して仕上げられた赤ワイン。
黒コショウや杉の香り、黒スグリジャムの様な凝縮した果実感を感じると共に、樽由来のチョコレートっぽさも感じます。果実味と爽やかな酸味、そしてしなやかなタンニンのバランスが◎。飲み応えのある赤ワインで、シンプルに黒コショウを効かせた牛肉のステーキとの相性が抜群です。

楠ワイナリー 日滝原 2022

楠ワイナリー 日滝原 2022

「和食全般に寄り添えるワイン」がコンセプトの白ワインで、「GI長野」の中でもより厳しい基準を満たした「GI長野プレミアム」に選定されています。 ソーヴィニヨン・ブランの爽やかな香りとセミヨンのボディを堪能できます。時間と共に香りや味わいが変化するので、お寿司やお刺身、お鍋など、様々な和食と一緒にゆっくりと楽しみたい一本です。
楠ワイナリー/楠氏について詳しく知りたいかたはこちら

7. まとめ

いかがでしたか?
長野県には5つのワイン産地があり、欧州系品種を始めとして様々な品種を用いたワインを造る個性的なワイナリーが沢山存在します。それぞれの産地や品種の違い、または造り手の個性を比較しながら飲むと、その奥深さに魅了されること間違いなしです!
ザ・セラーのサイトには長野ワインを各種揃えています。店舗にも長野ワインを始めとする日本ワインが揃い、知識と経験を積んだスタッフが常駐していますので、皆さまのワイン選びにご活用ください!

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山本 暖子

WSET認定 Level4 Diploma / JSA認定 ワインエキスパート

学生時代の留学や総合商社勤務時の海外駐在などを通じ、世界各国のワインやその文化に魅了される。
現在は瀬戸内海に浮かぶ大三島で農的暮らしを営みながら、カーヴ・ド・リラックスのECサイト運営やコラム執筆など、ワインに関する情報発信に力を注いでいる。